2023年11月06日更新

監修記事

後期高齢者が不動産を売却する際の注意点を解説!

後期高齢者が不動産を売却する際の年金への影響について

不動産売却 後期高齢者

75歳以上の後期高齢者が住宅やマンションなどの不動産を売却した際、受給している年金の減額などの影響はあるのでしょうか?

不動産売却で得た利益が年金額に影響することはない

後期高齢者である75歳以降に不動産を売却した時に気になるのが、売却した時に利益があったら、年金が減額されてしまうのではないかということです。不動産を売却した時、利益があっても、基本的に年金の受給額が減ることはありません。

60歳以上の年金受給者で、厚生年金被保険者が保険料を支払いながら給与を受けていると、年金額が減額されるケースがあります。「不動産を売却する=年金が減額される」と思われますが、給与と不動産売却益は違います。

不動産の売却で利益があっても、年金の受給額は減額されません。

不動産売却で得た利益と給与は異なる概念になる

不動産を売却して得た利益は、「譲渡所得」として所得税の対象となりますが、給与とは異なります。譲渡所得は申告分離課税となっているため、給与所得とは分けて確定申告を行います。

申告分離課税とは?

不動産を売却して得た利益は、自分で確定申告を行う必要があります。確定申告は、前年の所得を申告し、所得税を納税する手続きで、毎年2月15日から3月15日(その年により前後する)に各税務署管内で行われます。

確定申告では、所得の種類により所得の申告方式が違いますので理解しておきましょう。
所得には、総合課税と分離課税があります。会社員の給与所得や個人事業主の事業所得・アパート経営者の不動産所得は、総合課税で所得を合計して課税します。

不動産を売却した利益である譲渡所得や銀行の利息などの利子所得は、分離課税で、それぞれの単独で課税します。(これを申告分離課税といいます。)

不動産を売却した利益である譲渡所得は青色申告できるのか

青色申告は節税ができる申告方式ですが、青色申告ができる所得の種類が決まっています。

青色申告ができる所得は不動産所得と事業所得、山林所得です。不動産所得とはアパートや住宅の貸付による所得ですので、不動産の売却で得た利益(=譲渡所得)は青色申告できません。

後期高齢者が不動産を売却した際の税金について

75歳以上の後期高齢者が住宅やマンションなどの不動産を売却した際、年金の受給額には影響ありませんでしたが、税金はどのようになるのでしょうか?

不動産売却で得た利益に対する税金の原則

住宅やマンションなどの不動産を売却して得た利益は「譲渡所得」となり、所得税がかかります。譲渡所得に対する所得税がどのような制度になっているか見てみましょう。

譲渡所得とは

マンションや土地・住宅などを売却した時に利益がでると、利益が所得となり(譲渡所得)、所得税と住民税が課税され、支払いする義務が発生します。

売却した際、利益がなく損失となれば、譲渡所得はマイナスとなり課税されることはありません。

譲渡所得は、「譲渡所得=譲渡収入金額―(取得費+譲渡費用)」で計算されます。

譲渡収入金額とは

譲渡収入金額は、マンションや土地・建物の譲渡代金(売却代金)・固定資産税や都市計画税の精算金の合計金額です。

取得費とは

取得費は不動産を取得した金額で、実額法と概算法で算出し、大きい金額が適用されます。
実額法は、不動産の購入代金と取得した時の費用を合計した金額から、建物の減価償却費を差し引いた金額が取得費になります。

取得した時の費用には、購入時の不動産仲介手数料や売買契約書の収入印紙代・登録免許税・不動産所得税・固定資産税精算金などが該当します。概算法は、譲渡収入金額の5%です。

譲渡費用とは

不動産を売却する時にかかった費用で、不動産仲介手数料や売買契約書の収入印紙代・登録、登録費用・測量費用などが該当します。

課税譲渡所得の特別控除とは

自分が住んでいる住宅や土地などの不動産を売却した際、不動産の所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例等があります。

これは「課税譲渡所得=譲渡所得―(特別控除)」です。

特例を受ける要件や特例の内容は、確定申告の年度により違いがありますので、税務署や税理士に相談して、内容を確認しましょう。

長期譲渡所得と短期譲渡所得について

譲渡所得の所得税の税率は、不動産の所有期間の長さにより異なります。

不動産の所有期間が5年以下は、「短期譲渡所得」、5年を超える場合は、「長期譲渡所得」となります。

短期譲渡所得の場合、所得税税率30.63%・住民税税率9%、合計39.63%です。
長期譲渡所得の場合、所得税税率15.315%・住民税税率5%、合計20.315%です。
(上記の他、復興特別所得税(基準所得税額×2.1%)が課されます)
所有期間は、売却した年の1月1日現在の所有期間で判断されますので、注意しましょう。

居住用の不動産には所得税の特例がある

自分が住んでいる住宅や土地などの不動産を売却した際、不動産の所有期間に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるなどの特別控除の特例があります。

居住用不動産売却で得た所得金額に対する3000万円控除とは

自分が住んできた住宅やマンションなどの所有期間に関係なく、譲渡所得から3,000万円が控除することができます。

これは、「課税譲渡所得=譲渡所得―(特別控除3,000万円)」です。

特例を受けるには、居住しなくなってから3年以内であること、3年以内に特例を受けていないことなどの要件があります。適用する際には、要件を確認しておきましょう。

所有期間が10年以上の場合の特例とは

自分が住んできた住宅やマンションなどの所有期間が、売却した年の1月1日時点で10年以上の場合は、3000万円控除後の金額にかかる税率も減額されます。

課税譲渡所得が6,000万円以下の場合、所得税10.21%・住民税4%・合計14.21%です。
課税所得が6,000万円を超える場合、6,000万円以下の部分は、所得税10.21%・住民税4%・合計14.21%で、6,000万円を超える部分は、所得税15.315%・住民税5%・合計20.315%です。

居住用不動産の買い替え特例とは

譲渡する年の1月1日に、所有期間10年超えの居住用不動産を売却して、新たに居住用住宅を取得する買い替えに適用される特例に「買い替え特例」があります。

買い替え特例は、買い替える不動産の方が売却した不動産の売却価格より高い場合に適用できます。税金は、買い替えた不動産を売却した時に支払います。

譲渡所得の所得税で買い替え特例を適用すると、売却時点では売却益があっても売却がなかったとされるため、税金がかからないのです。

3,000万円の特別控除と併用はできませんので、どちらの特例を使うのが節税となるのかは、ケースによりますので専門家に相談するのがよいでしょう。

不動産売却により利益が出なかった場合の特例について

居住用の不動産を売却しても利益が得られず損失となった場合、損益通算と繰越控除ができます。

損益通算及び繰越控除の特例は、居住用不動産の買換えの場合と特定居住用不動産の売却(譲渡)の場合があります。

買い替えの場合は、損失の全額が他の所得と相殺でき、3年間の繰越控除の対象となります。

売却(譲渡)の場合は、損失の金額のうち、ローン残高より譲渡金額を差し引いた金額が他の所得と通算でき、3年間の繰越控除の対象となります。
それぞれ、適用を受けられる要件がありますので、専門家に相談するのがよいでしょう。

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後期高齢者が不動産を売却する際に注意したい保険料について

75歳以上の後期高齢者が不動産を売却する時に注意したいのは、保険料です。後期高齢者の保険料について、理解しておきましょう。

不動産を売却した翌年の保険料に注意

年金を受給するようになると、「国民健康保険」に加入し、75歳以上になると、後期高齢者医療制度の「後期高齢者健康保険」に移ります。年金受給者も後期高齢者も健康保険料の支払いがあります。

保険の額は、前年度の所得により決まりますので、不動産を売却して利益がある場合、健康保険料の支払い金額が高くなります。また、扶養されている人が不動産売却により一定の収入を得た場合でも健康保険に加入する必要があり、この場合も保険の額は前年度の所得により決まります。

後期高齢者健康保険は所得総額に対してかかる為、不動産売却による利益の譲渡所得も対象となります。不動産を売却して利益を得た場合、値上がりする保険料を確保し、引っ越し費用なども含め、資金計画をたてましょう。

後期高齢者が不動産を売却する際に知っておきたいポイント

不動産売却 後期高齢者

75歳以上の後期高齢者がマンションや住宅・土地などの不動産を売却する時には、知っておくと売却費用を抑えられるポイントや売却時のリスクを知っておけば、リスクを回避できるポイントがあります。

不動産売却費用を抑えるためのポイント

不動産売却で費用が増えるのが、税金と健康保険料(市町村によっては保険税)です。
税金は、不動産が高く売却でき利益がでると、譲渡所得が発生し、所得税・住民税を支払うことになります。健康保険料(保険税)も住民税をベースに試算される所得割が増えますので、支払い額が増えます。

所得税と住民税・健康保険料(保険税)の金額を抑えるためには、子などの扶養に入る方法があります。扶養にはいることで、税金や健康保険料(保険税)の控除額が大きくなり、費用をおさえることができます。

しかし、ここで注意したいのが、後期高齢者保険です。後期高齢者保険は、家族の健康保険とは別の制度となっているため、75歳になると家族の健康保険の扶養には入れなくなります。

そのため、税金や保険料(保険税)の費用を抑えるためには、70~75歳の間に扶養に入ると良いでしょう。

また、子供が主体となり不動産を売却する場合は、75歳前に取引をしておきましょう。扶養家族の人数が変更になる際は、その都度健康保険の届出が必要になるので、忘れずに届出を行いましょう。

高齢者が不動産を売却する際のリスクとリスク回避のポイント

高齢者が不動産を売却する際、起こりやすいリスクがあります。事前にリスクを知っておき、必要のないリスクは回避できるようにしておきましょう。

子供に不動産を売却する場合の住宅ローントラブル

高齢者が自分の子供や孫に不動産を売却する場合、子供や孫が借りる住宅ローンも審査が通りにくくなるトラブルあります。それは、子供や孫への不動産売却が相続税・贈与税対策とみなされるからです。

また、子供や孫がすでに別の住宅ローンを組んでいる場合も住宅ローン審査が通らなくなります。

それと、一度でも金融機関に親子間売買の住宅ローンの審査をすると、審査履歴が保証会社に残り、半年間は審査がさらに通りにくくなります。

親子間売買を行いたい場合は、まずは親子間売買を行った実績のある専門家(不動産会社)に相談しましょう。子供の現在のローン状況や安定した収入・売却価格の妥当性(市場価格との妥当性)を判断しながら、親子間売却が可能か判断してくれます。

不動産取引中に認知症になった場合のトラブル

高齢者が不動産売却の取引中に認知症になるトラブルもあります。不動産取引中に認知症を発症・進行し、不動産取引がむずかしくなると、その取引自体が中止となる可能性があります。その際は、成年後見人制度を利用して売却する方法があります。

高齢者の不動産の相続人同士の費用などトラブル

父母が子供や孫に相続させるために残した不動産が、相続トラブルになるケースがあります。
不動産は、所有していると固定資産税や管理費がかかり、また相続する時にも登録免許税・登記費用がかかります。

そのため、相続人が多数の場合、その費用負担・不動産の処分方法をめぐり相続人同士でトラブルが起こります。費用や処分方法のリスクを回避するには、まず不動産をなるべく高く売却することです。

不動産を売却する費用がかかっても、売却後に残る利益が高ければ、費用を補填でき、相続人それぞれへの配当金も高くなるからです。

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不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?

ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。

正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。

そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!

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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!

この記事の監修者プロフィール

【監修者】株式会社worth style home 濵田昭平

株式会社worth style home

濵田昭平

2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。

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