2021年02月22日更新

地震に強い家の構造や注意点は?

地震に強い家とは?

地震 に 強い 家

地震の多い日本で安心して暮らすために、耐震性の高い家に注目が集まっています。

地震に強い家ならば、自分自身だけでなく家族も守ることができます。では、地震に強い家とはどのような家なのでしょうか。

耐震性の高い住宅の条件や耐震等級など、住宅の耐震性に関わる専門用語も併せて解説します。

新築の家は最低限の耐震基準をクリアしている

日本で建てられるすべての住宅は、建築基準法で定められた基準をクリアしなくてはなりませんが、中でも1981年6月以降に確認申請を取得した住宅なら一定の耐震基準はクリアしています。

1981年に施行された新耐震基準において定められている耐震基準とは、震度6~7程度の大地震で倒壊しない耐震性です。

1995年に大きな被害を与えた阪神・淡路大震災では、新耐震基準前に建てられている住宅を含めた建造物の約19%が倒壊しましたが、新耐震基準制定後に建てられている建造物で倒壊したのは約8%と、半分以下でした。

つまり、新耐震基準が実施された1981年以降に建てられた建造物は、従来のものに比べて高い耐震性を備えていると言えるでしょう。

新耐震基準の耐震目標とは

1981年6月から実施されている新耐震基準は、震度6~7程度の地震で倒壊しない建築構造であることが定められています。

それ以前の耐震基準は、震度5程度の地震に耐えられる建築構造が求められていましたから、新耐震基準によって耐震性の基準は高められました。

1981年以降も耐震基準の改正が繰り返され、その内容は新築住宅に対してだけでなく、既存住宅を増築する際にも適用されます。

2000年の改正では、木造住宅の耐震性について見直され、基礎工事で地盤の強度に合わせた基礎形状を設計しなくてはならず、地盤調査が必須となります。

また、柱などの接合部分の部材を指定するなど、細かな改正となりました。

2006年には住宅の耐震診断や耐震性を高めるための改修基準も定められました。

住宅などのすべての建築物で耐震性が高められるように、耐震基準の改正は繰り返されています。

耐震等級とは

「耐震等級」とは住宅の地震に耐える強さを1~3の数値で表しています。

耐震等級は国が定める基準をもとに整えられた住宅性能表示制度によって、客観的に判断されます。

新耐震基準を満たしていれば、耐震等級は1です。震度6~7程度の地震なら倒壊する恐れはない耐震性があります。

耐震等級1の住宅よりも耐震性が1.25倍強まった住宅の耐震等級が2です。これは、避難所や学校と同レベルの耐震性です。

最も耐震等級が高いのが耐震等級3で、耐震等級1の住宅よりも1.5倍の耐震性があります。病院や警察署、消防署などはこの耐震等級3にあたります。

耐震等級1の耐震性とは、震度5程度の地震に耐えうるものです。震度6~7程度の地震なら、一部壊れてしまうことがあっても人命が損なわれるほどには崩壊しない耐震性です。

震度6~7程度の地震は100年に一度、起こるかもしれないとされる大地震であり、もしもそのような大地震が起こった場合、倒壊するほどではない耐震等級1の住宅でも耐震性は高いと言えるでしょう。

2019年現在、主要なハウスメーカーの新築住宅では、標準仕様として耐震等級3としている物件が多く見られることから、消費者の耐震性への関心度の高さがうかがえます。

耐震構造の仕組み「耐震」「免震」「制震」の違い

住宅の耐震対策として「耐震」「免震」「制震」の3つの構造があります。

「耐震」とは構造部分の強化

「耐震」は耐震性を高めるため住宅の骨組みなどの構造部分を強化する方法です。

柱や耐力壁などの地震に耐えるための強い部材を使用し、柱と柱の間に斜め材を渡した筋合いを用いることで耐震強度を高めます。

「免震」とは建物を地面から離して揺れを伝えない仕組み

「免震」とは、建物と地面の間に積層ゴムやダンパーなどの免震装置を設置して、建物を地面から離して、地震の揺れを建物に伝えないようにする仕組みです。

「免震」は「制震」よりも自身の振動を伝えにくくする効果が高いのですが、制震に比べると設置にコストがかかるというデメリットがあります。

「制震」とは建物内部に振動軽減装置を設置

「制震」は建物内部の要所にオイルダンパーなどを設置して地震の揺れを吸収させて、地震による建物の揺れを抑える仕組みです。

地震または地震による振動を制するという意味で「制震」と呼ばれます。

免震に比べると地震による振動を抑える効果は少ないものの、地震対策だけでなく大型トラックや新幹線などの通過時の揺れを防ぐためにも使えます。

コスト面では免震よりも安いことから、幅広く活用されている方法です。

地震に強い家の特徴とは?

地震に強い家というのは、見た目でわかるのでしょうか。

実は、地震に強い家とは外観からしても特徴があるのです。

そこで、地震の振動に耐える家、耐えやすい家というのはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

ベタ基礎である

地震に強い家の見えない部分の特徴として、「ベタ基礎」が挙げられます。

「ベタ基礎」とは、家の土台となる基礎の部分全体が鉄筋コンクリートで固められている基礎のことです。家を面で支えることで、軟弱な地盤であっても地震の振動が伝わりにくくします。

住宅の基礎にはベタ基礎以外に布基礎がありますが、布基礎は住宅の外周を鉄筋コンクリートの低い壁で取り囲むようにして作られる基礎です。

布基礎はコストを抑えた施工法ですが、家を線で支えるような形になり家の荷重を支えやすくなるものの、ベタ基礎ほどの強固ではないため、地震の振動は伝わりやすくなります。

床に強度がある

床に強度があると、地震だけでなく台風などの災害にも強い家になります。

地震や強風によって家にかかってくる負担は、家の骨組みや外壁だけでなく水平面である床材にも加わります。

やわらかい素材の床ではそうした負荷によって変形したり壊れたりしてしまいますが、強度の高い床ならば簡単に変形しないのでダメージを受けにくくなります。

バランスよく耐力壁を設置している

家の強度を高める材料として使われる耐力壁は、家の重さを支えるだけでなく、特に横からかかる圧力に対してその威力を発揮します。

外から吹き付けてくる強風に耐えるだけでなく地震の揺れにも強いため、家の耐震性が高まります。

間仕切り壁のような壁には耐力はありませんが、耐力壁は耐力があるため家を支える部材の1つとして考えられます。

耐力壁の耐力の高さは認められているため、柱や梁を増やすよりも耐力壁を増やし、家の負荷がかかる部分に効果的に使うことによって、より地震に強い家になります。

家全体の重量が軽い

地震の振動は、建物の重量が重くなればなるほど伝わりやすくなります。

そのため家全体の重量が軽いと、家に与える影響も少ないのです。

地震で横に揺れたときの大きさを測定する地震力は、地震の揺れに対して建物の重量に比例します。

つまり重い家は軽い家よりも地震力が強く、地震によって揺れやすいことが分かっています。

ただし、ただ軽くしただけでは家の耐震性は強まりません。

家の耐震性を高めるには、耐震性の高い構造であると同時に、軽くするためのポイントとして、重くなりやすい屋根や外壁などに軽い素材を使うことが必要です。

家の高さが低い

地震時は、家の下層階よりも上層階の方が揺れが大きいため、家の高さが低い方が地震に強いと言われています。

たとえば平屋は、上層階の重さを支える必要がないため、耐震性も優れていると考えられています。

単純に低ければ地震に強い家になるのかというと、そうではありません。家が低い上に構造的にも耐震性を考えた造りにすることで家の耐震性は高まります。

形状がシンプル

家の形状がすっきりとした形をしている家は地震に強い家です。

家の平面図を見たときに、凹凸の多い家というのは地震のような横からの負荷がかかった時にねじれが生じてそこから家が崩れ始める可能性があります。

一方、平面図にすると凹凸が少なく、ほぼ長方形または正方形のようにシンプルだとねじれが生じにくくなります。

また、1階と2階の平面形状が同じになるような設計だと、さらに家の耐震性が高まります。

1階部分に駐車スペースを設けるため家が欠けたようなデザインのオーバーハンギングを施した設計の家は、2階部分の重さを面で支えていないため耐震性が弱まるのです。

地震に強い家の構造とは?

家の構造によって、家の耐震性は変わってきます。

家の構造にはいろいろありますが、耐震性はあるものの大きな地震には強いが小さな地震だと揺れを感じやすいなど、それぞれ構造別に特徴があります。

そこで、主に一般住宅で使われる構造を取り上げて、それぞれの特徴と耐震性を解説します。

在来工法で建てる木造の家の耐震性

在来工法とは、木造住宅において柱と梁で家を支える工法です。日本の伝統的な工法の1つに数えられます。

木造住宅であり柱と梁で支える家と聞くと、耐震性は低いと思われる方もいるかもしれません。ところが、在来工法の木造住宅も建築基準法で定められた耐震基準を満たしている地震に強い家です。

建築基準法では、100年に一度はあるだろうと想定される震度6以上の地震でも倒壊しない強度の家を基準としています。

在来工法で建てられる木造住宅ももちろんこの基準を満たしており、耐力壁を使うなどして地震に強い家になっています。

特に小さな地震による揺れを感じにくくするという特徴があり、小さな地震が多い日本には適した工法と言えます。

ツーバイフォー工法で建てる木造の家の耐震性

在来工法以上に採用されることの多くなったツーバイフォー工法は、木造住宅を健てるための工法の1つです。

ツーバイフォー工法とはアメリカから伝わった工法で、2インチ×4インチの角材と合板を使ってパネルを作り、そのパネルを組み合わせて建てていく工法です。

在来工法では柱と梁で家を支えていますが、ツーバイフォー工法は壁で家を支えるため、家の強度は在来工法よりも高いとされています。

さらにツーバイフォー工法は職人の技量に左右されないため、安定した品質の家を供給することができます。

ツーバイフォー工法の木造住宅も、建築基準法の耐震性基準を満たしていますから、地震に強い家と言えるでしょう。

耐震の特徴として、ツーバイフォー住宅は大きな地震には強いものの、小さな地震の揺れは伝わりやすいことが挙げられます。

鉄筋コンクリート造の家の耐震性

鉄筋コンクリート造の住宅は、耐震性だけでなく耐火性や耐久性にも優れている頑丈な家です。

鉄筋で柱や梁などの基本構造を組み、合板で囲んだところにコンクリートを流し込むという工法は、間取りの自由度も高くなります。

耐震性は、在来工法やツーバイフォー工法で造られた木造住宅よりも高いと言われています。

地震の横揺れには、柱となる鉄筋の引っ張る力に対する強い耐性が生かされて、揺れによる住宅にかかる縦の負荷を軽減します。

縦揺れに対しては、揺れにより伸び縮みする住宅をコンクリートによって支えます。

耐震性が高い鉄筋コンクリート造の家ですが、木造住宅に比べると重量が増えるので土台となる地盤を強くするための地盤改良の工事が必要となるケースも多く、工期も長くなるでしょう。

軽量鉄骨造の家の耐震性

木造建築よりも耐久性が高いことから、人気がある軽量鉄骨造の住宅です。

軽量鉄骨とは鉄骨の厚さが6ミリ以下の鋼材で、軽量鉄骨造の家では柱や梁にこの軽量鉄骨が使用されます。

軽量鉄鋼は鋼材ですから木材と比べると家の強度が上がり、比例して耐震性も高くなります。しかし鉄筋コンクリート造の家ほどの耐震性はありません。

また軽量鉄骨の家は大きな地震には強いものの、小さな地震では揺れを感じやすいという特徴があります。

軽量鉄骨造の建築は鉄筋コンクリート造の家と比べると強度が低くなるものの地震に耐えるためには十分な耐震性があり、コストが抑えられる点がメリットです。

重量鉄骨造の家の耐震性

重量鉄骨造の家は強度も耐震性も高く、柱と柱の間隔も広く取れるため間取りの自由度が高まります。鉄骨の厚さは6ミリ以上あるのが特徴です。

特に耐震性が高いと言われる工法はラーメン工法です。

太い柱と梁を剛接合と呼ばれる強力な接合法を用いた工法で、接合点が強力なため筋交いもいりません。

このラーメン工法は部材が大きくなるため、他の工法よりもコストがかかりますが、耐震性は高くなります。

重量鉄骨造の家とほぼ同程度の耐震性が認められるのが、鉄筋コンクリート造の家です。

どちらも地震には強いのですが、重量鉄骨造の家は鉄筋コンクリート造の家よりも大きく揺れを感じるという違いがあります。

また重量鉄骨造りは重量が重いため、家が建つ土地の地盤が固くなくてはいけません。

もしも地盤が緩ければ、地盤を強化するための地盤補強工事を行います。

地震に強い家を維持する方法

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長年住んでいれば、地震に強い家も不具合が生じてきて、いつの間にか地震に弱い家に変わっているかもしれません。

そうならないためには、定期的なメンテナンスが大切です。

定期的なメンテナンスで修理費用も削減

定期的なメンテナンスを行うことで、住宅の劣化を未然に防ぎ、その分修理費用も抑えられます。

目視できるメンテナンスは、外壁ならサイディングの継ぎ目のシーリングの劣化、木造住宅ならシロアリの被害の有無、室内なら雨漏りや水回りの水漏れです。

水漏れやシロアリ被害は住宅の構造部分にダメージを与えるので、放っておくと住宅の耐震性にも影響します。

目視によるメンテナンスは定期的に行いましょう。

住宅の劣化が目立ちやすい5年をめどにメンテナンスの専門業者にメンテナンスをお願いすることで住宅の寿命を伸ばせます。

地震に強い家を建てる際の注意点

地震に強い家を建てたとしても、家の土台となる地盤が緩くては家の強度は弱まってしまいます。

地震に強い家を建てる上で大切なことは、耐震性の高い家に加えて土台となる地盤の固さです。

耐震性には地盤も関係する

地震による被害の大きさは、地震の大きさや深さに加えて地盤の固さとも関係しています。

地盤が固ければ同じ深さの地震でも被害は少なく、地盤が緩ければ被害は大きくなります。

土台となる地盤が固く家に地震が伝わりにくければ、家の耐震性も維持されるでしょう。

地盤を補強する方法

地盤の固さを診断するには専門業者に依頼するか、行政が提供するハザードマップで確認することも可能です。

地盤が弱いとわかれば、地盤を固くするための補強工事を行います。地盤の補強工事には3つあり、地盤の軟弱さによって工法を使い分けます。

地盤2メートルまでの補強ならば「表層改良工法」です。土にセメント系の固化材を混ぜ合わせて地盤を強化。

地盤8メートルまでの補強は「柱状改良杭工法」で、地盤3メートル~29メートルまでの深い地盤の補強なら「鋼管杭工法」を行います。

それぞれ特殊な杭を打ち付けて地盤を補強します。

地震に強い家づくりのポイント

地震に強い家づくりをするには、どのようなポイントを押さえておくと良いのでしょうか。

ここでは、地震に強い家をつくるための3つのポイントについて説明します。

耐震等級を高いものに

地震によって倒壊や損壊しない家をつくるには、耐震等級が3となるような構造にしなければなりません。

そのためには、基礎や接合部分を強化したり、壁の配置などを検討する必要があります。コスト面も考慮しながら、「耐震」「免震」「制震」のいずれかの耐震対策も検討してください。

耐震性に優れた工法を選ぶ

耐震性を高めるためには、地震に強い工法を選ぶ必要があります。

ツーバイフォー工法は、これまでの大地震でも倒壊を免れたという多くの実績があることから、おすすめする1つです。

重量鉄骨造のラーメン工法や鉄筋コンクリート造も耐震性に優れています。家のデザインや間取りなどさまざまな部分も検討しながら、ぴったりの工法を選んでみてください。

地盤や基礎の確認を

耐震性に優れた家づくりをしても、地盤や基礎に問題があれば、その性能を十分に発揮することはできません。

家を建てる前に、しっかりとした地盤調査をした上で、必要があれば地盤改良をしてください。家の土台となる基礎についても、「ベタ基礎」といった耐震性に優れたものにすると良いでしょう。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】タクトホームコンサルティングサービス

タクトホームコンサルティングサービス

亀田融

一級建築施工管理技士、宅地建物取引士。東証1部上場企業グループの住宅部門に33年間勤務。13年間の現場監督経験を経て、住宅リフォーム部門の責任者として部分リフォームから大規模リノベーションまで2,000件以上のリフォームに関わる。2015年に退職して現在は、タクトホームコンサルティングサービス代表として、住宅診断を行う傍ら、住宅・リフォーム会社へのコンサルティング活動を行っている。

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