2023年10月31日更新
暮らしが変わる!高気密住宅の基準を満たすこと
高気密住宅の基準!『次世代省エネルギー基準』
高気密住宅とは、1999年に従来の制度から改正された住宅の省エネルギーに関わる基準です。
2013年に改正が行われ、従来の制度では建物の外壁や屋根などの外装部分に関する断熱性能が基準として用いられていましたが、改正後は設備も含めた家全体のエネルギー消費量が追加されました。
ただし、2013年の改正を含めた高気密住宅の基準については2019年現在法的な強制力が無いため、新築住宅を建てる際に基準を守らなくても罰則はありません。
しかし、2020年頃を目処にこの制度を義務化することが予定されているため、将来的な物件価格の下落を防ぐためにも、現時点で基準を守っておくと良いとされています。
(2018年12月に国交省の部会で、2020年から義務化が予定されていた省エネ住宅の義務化を白紙撤回する方針案が了承されました)
次世代省エネルギー基準で求められる気密性とは
次世代省エネルギー基準は2013年に改正され、さまざまな基準が追加で導入されていますが、気密性については現在の基準では削除されています。
そのため、現在建築されている次世代省エネルギー基準に則った住宅については、高気密住宅かどうかは重要視されておらず、断熱性や設備の省エネルギー性が重視されています。
しかし、住宅の気密性が低いと空調によって変化した室内の温度が外気の影響を受けやすくなってしまうため、実際の居住を考えた場合、気密性を一定以上確保することが重要と考えられます。
気密性を表す数値は、家全体の隙間の合計を建物の延床面積で割ったものである「C値」と言い、これは建物の床面積1平方メートルあたりどれだけの隙間面積があるのかを表しているものです。
C値が小さいほど気密性が高くなります。
C値は、高気密住宅なら約2平方センチメートル以下、通常の次世代省エネルギー基準適合住宅の場合は約10平方センチメートルのものもあります。
C値については、最初に触れたように法的な基準はありませんが、空調に与える影響が大きいため、高気密住宅を建築して光熱費を抑えるためには、必ず知っておきたい数値です。
よく似た住居として建物の断熱性を高めた「高断熱住宅」というものもありますが、実際には気密性が低く、隙間風によって思っていたより温度変化が激しかったという事例もあります。
高気密住宅の仕様について
次世代省エネルギー基準からは気密性を表すC値が削除されましたが、以前の基準ではどのような数値が設定されていたのでしょうか?
日本は南北に長い国土のため、同じ日本国内だったとしても、沖縄と北海道では気候が大きく違います。
沖縄と北海道以外でも、九州と東北でも気候は違いますし、都内と東北でも気候は全く別と言えるでしょう。
そのため、旧基準では気密性についても地域によって基準が違い、沖縄から宮城県までの範囲ではC値は5.0、岩手県、秋田県、青森県の東北3県と北海道が2.0とされていました。
高気密住宅ではどのような施工が行われているのか
高気密住宅とは、建物の隙間を減らし、室内の空気が屋外に漏れにくい、外気が室内に入りにくい住宅のため、大前提として隙間の少ない構造が採られています。
壁には断熱材だけでなく、隙間風を防ぐペーパーバリアーを貼り付けますし、壁材の隙間などについてはパッキンやテープ、充填剤などを用いて気密を高めているのです。
とは言え、気密性を高めるだけで十分な効果を発揮できるというわけではありません。
人間が暮らす家は、水回りなどから常に水分が空気中へと放出されているため、気密性が高い建物では、この湿気が屋内に残り続けてしまい、結露によって建物が傷みやすくなってしまうのです。
実際に以前の基準下で建築された気密性の高い住宅では、断熱材が高気密向けのものが用いられておらず、結露によって短期間で建物の構造部材が腐食するという事例が多発しました。
高気密住宅の建築では、まず断熱材を結露が起こりにくいものにし、さらに壁内部へ湿気が溜まりにくい構造を用います。
ただし、床下や天井裏部分については、高気密にすると地面や雨による湿気が抜けず、構造部材の腐食が起こるため、通気パッキンなどを用いてある程度の通気性を確保しなければなりません。
その他の部分、室内部分の施工については、室内の温度を変化させずに空気の入れ換えを行う熱交換器式の空調システムが導入されています。
熱交換器式の空調システムなら、室内の温度を変化させずに湿気や汚れた空気を排出できるため、高気密住宅で起こりやすい結露の問題が予防され、長期間安全で快適な暮らしの実現が可能です。
高気密住宅にすると、暮らしは変わる?
自宅を高気密住宅にすると、暮らしはどのように変わるのでしょうか?
温度変化が少なく光熱費が削減できる
高気密住宅の最大のメリットは、外気の侵入を防ぐことによる室温変化の少なさです。
もちろん、屋根や床、壁などから発生する熱伝導による変化も室温に影響を及ぼしますが、より直接的な変化は隙間風の影響が大きいため、高気密住宅にすることで温度変化を緩やかにでき、光熱費の削減に繋がります。
一般的に、高気密住宅では気密性と同時に断熱性についても考慮して設計が行われるため、外装部の断熱と気密性の両面から、室温の変化を抑えることができるでしょう。
また、室温の変化が少ないということは屋内部分の室温差が少なくなるということでもあります。
つまり、家全体が高気密住宅だった場合、部屋と廊下の温度差が少なくなりますし、トイレや風呂など、冬場の温度差によって体に負担がかかるヒートショックも少なくなるのです。
高気密住宅は騒音に強い?
高気密住宅は防音性も高いと言われていますが、何故高気密住宅は騒音が伝わりにくいのでしょうか?
音というものは空気の振動のため、屋外と繋がっている部分、つまり住宅の隙間から屋内へと伝わってきます。
もちろん、音の振動が建物の外壁や窓ガラスを振動させて伝わる部分もあるため、高気密住宅だからと言って防音工事を施した住宅ほど防音性が高いというわけではありません。
ですが、壁から伝わる音は全面に施された断熱材がある程度吸収しますし、窓についても断熱性を考慮してペアガラスなどの遮音性に優れた窓ガラスや、断熱サッシが用いられているので、音の伝達が抑えられます。
これらによって高気密住宅は通常の住宅に比べて屋外の音が屋内に伝わりにくくなり、防音性が高くなる理由です。
住宅寿命が長い傾向がある
高気密住宅では、壁内部に結露が発生しないよう、断熱材の種類や壁内部の防湿、気密を考慮した設計が採られています。
壁内部に発生する結露は、断熱材や構造部材の劣化原因です。
つまり、壁内部に結露が発生しにくい構造の高気密住宅は、断熱材や構造部材が傷みにくく、建物の性能を長期間新築当時のまま、リフォーム当時のまま維持できる可能性が高いと考えられます。
高気密住宅は通常の注文住宅に比べ、細かな部分まで手を加える必要があり、専用の空調システムの導入も必要となるため、建設費用がやや割高です。
しかし、長期的な視点で見た場合、建物そのものが劣化しにくいと言えるため、メンテナンスの頻度が抑えられ、ランニングコストの低下に繋がります。
高気密住宅の工事はどんな業者に依頼する?
高気密住宅はただ気密性が高ければ良いというものではなく、床下や屋根裏などの見えにくい部分まで事細かに手を加える必要があります。
また、各部位ごとに湿気対策を施さなければならず、不十分な対策で建築した場合、通常の注文住宅より早い段階で建物が傷んでしまうかもしれません。
高気密住宅の建築を依頼する業者を選ぶ際には、まず高気密住宅のノウハウを持っていること、そして高気密住宅の建築経験が豊富な業者を探すことが重要なポイントと言えるでしょう。
特に近年では、次世代省エネルギー基準の内容から気密性の項目が削除されていることから、気密性がそれほど高くない高断熱住宅を手掛けている業者が多いため、高気密住宅の経験やノウハウがある業者は少ないのが現状です。
ただし、宣伝や広告を出していないとしても、会社によっては高気密住宅のノウハウや施工経験を持っている場合もあります。建築を依頼する業者を選ぶ際には、複数の業者に連絡して相談すると良いでしょう。
ある程度高気密住宅に対応できる業者が見つかったら、それぞれの業者に同じ条件で見積もりを依頼し、内容を比較してより良い条件、工法、対応の業者を選びます。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
注文住宅の設計プランや費用は、施工店によって大きく異なることがあります。
そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!
実際に注文住宅を建てるには時間がかかるので、この記事で大体の予想がついた方は早めに次のステップへ進みましょう!
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」
「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」
そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。
一生のうちに注文住宅を建てる機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール

タクトホームコンサルティングサービス
亀田融一級建築施工管理技士、宅地建物取引士。東証1部上場企業グループの住宅部門に33年間勤務。13年間の現場監督経験を経て、住宅リフォーム部門の責任者として部分リフォームから大規模リノベーションまで2,000件以上のリフォームに関わる。2015年に退職して現在は、タクトホームコンサルティングサービス代表として、住宅診断を行う傍ら、住宅・リフォーム会社へのコンサルティング活動を行っている。
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