2024年02月27日更新
屋根や瓦の葺き替え工事のリフォーム費用・価格の相場は?
既存の屋根材を全て撤去し、新しく屋根材を張替える屋根リフォームの事を、屋根葺き替えと呼びます。スレートや日本瓦など、屋根材の種類によって費用は異なります。屋根葺き替えリフォームで発生する工事の内容と、屋根材の平均価格から、リフォーム費用の相場を見てみましょう。
目次
屋根の葺き替えとは?
屋根の葺き替えは、瓦などの屋根材を新しいものに取り替えるリフォームの一種です。
屋根は家を守る最も重要な部分であり、常に風雨にさらされるため、適切なメンテナンスが欠かせません。この記事では、葺き替えを中心に様々な屋根リフォーム工法の費用や工期、注意点などを詳しく解説します。
屋根リフォームの目的とメリット
葺き替えなどの適切な屋根リフォームによって、家を美しく保ちながら耐震性や断熱性を改善し、住宅の価値を向上させ、快適な居住環境を確保することができます。
以下に屋根リフォームの目的とメリットを解説します。
雨漏りを解決する
大雨や強風、積雪などの影響によって屋根が雨漏りを起こした時は、すぐに修理しなければなりません。雨漏りを放置すると生活に支障が出るだけでなく、天井裏や壁の中の見えない部分が腐ったりカビが生えたりして家の寿命を著しく低下させることにもつながります。
部分的な補修で一時的に雨漏りがおさまっても、屋根を構成する材料が経年劣化している場合は何度も雨漏りを繰り返す可能性が高くなります。屋根全体を最新の材料でリフォームすることで、現在の新築住宅同様の防水性能を取り戻すことができます。
耐震性を向上させる
屋根リフォームの大きな目的のひとつが耐震性の向上です。古い家の多くは重い瓦を載せていますが、屋根は建物の最も上部に位置しており、地震時には大きな力が加わります。屋根の材料を軽くすることで揺れを小さくすることができます。
現在の建築基準法では「重い屋根」と「軽い屋根」で耐震設計上の壁量計算基準が異なっており、「重い屋根」の方が多くの壁量が必要になります。つまり壁量がそのままでも、リフォームによって屋根を軽くすることで耐震改修の効果が得られることになります。
耐久性を向上させる
屋根は家を構成する材料の中でも特に経年によって劣化しやすい部分です。
スレートの表面塗装が剥がれたり、鋼板や釘が錆びたり、瓦がひび割れたり、見えない部分でもルーフィングという防水材が風化してぼろぼろになったり、野地板が腐ったりしていきます。
これらは雨漏りの原因になるだけでなく、強風で脱落し飛んでしまうこともありますし、耐震性や美観も損なわれてしまいます。耐久性の高い最新の屋根材にリフォームすることによって、こうした問題が起こることを防ぎ、家全体の寿命を大きく伸ばすことができます。
断熱・遮熱性を向上させる
屋根のリフォームによって断熱・遮熱性を向上させることもできます。
最新の屋根材には、遮熱性能の高い塗装が施されていたり、裏面に断熱材が貼られているものがあります。こうした材料を選択することで、夏の暑さや冬の寒さを改善することができ、省エネルギー化とランニングコスト低減につながります。
外観を美しく改善する
屋根は外壁と同じくらい、家の外観デザインに大きな影響があります。和風・洋風・モダン・クラシックといったイメージの多くが、屋根の形や素材によってつくられています。
新たな屋根材に葺き替えることで外観をリフレッシュするだけでなく、異なるタイプの屋根材に変更することで、例えば和風を洋風にするなど、ガラリと雰囲気を変えることもできます。
屋根リフォームの種類
屋根のリフォームには「葺き替え」「カバー工法(重ね葺き)」「塗り替え」という3つの方法があります。
以下にそれぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
葺き替え
「葺き替え」とは、下記の例のように既存の屋根材を撤去して新たな屋根材に取り替えることです。
- 古い瓦を撤去して新しい同型の瓦に取り替える
- 古い瓦を撤去して金属瓦に変更する
- 古いスレートを撤去して金属屋根に変更する
メリットは、すべての種類の屋根について工事が可能で、選べる屋根材の種類も多いこと、既存屋根を撤去した際に野地板などの下地の状態を確認して確実に修繕できることです。
デメリットは、既存屋根を撤去するために処分や補修などが発生し、費用と工期が多くかかることです。
葺き替えする場合におすすめの屋根・不可能な屋根などを以下に解説します。
金属屋根を葺き替えする場合
→金属屋根 | ◎ おすすめ! |
→金属瓦 | △ 条件付き可 |
→アスファルトシングル・スレート・陶器瓦 | × 原則不可 |
金属屋根の葺き替えには同じように軽量な金属屋根を使用します。勾配が対応していれば金属瓦によって雰囲気を変えることもできます。
アスファルトシングル屋根を葺き替えする場合
→金属屋根 | ◎ おすすめ! |
→アスファルトシングル・金属瓦 | ◯ 可 |
→スレート・陶器瓦 | × 原則不可 |
既存と同等のアスファルトシングルへの葺き替えも問題ありませんが、軽量で耐久性の高い金属屋根への葺き替えがおすすめです。
スレート屋根を葺き替えする場合
→金属屋根 | ◎ おすすめ! |
→アスファルトシングル・スレート | △ 条件付き可 |
→金属瓦 | ◯ 可 |
→陶器瓦 | × 原則不可 |
既存と同等のスレートへの葺き替えも可能ですが、リフォームでスレートの施工は保証が出ない場合があります。軽量で耐久性の高い金属屋根への葺き替えがおすすめです。
陶器瓦・セメント瓦を葺き替えする場合
→金属屋根・アスファルトシングル・スレート | ◯ 可 |
→金属瓦 | ◎ おすすめ! |
→陶器瓦 | ◯ 可 |
既存と同等の瓦へ葺き替えることが一般的ですが、金属瓦へ葺き替えるのが最もおすすめです。瓦に近いデザインを持ちながら1/8以下に軽量化されるため、耐震性を高めることができます。
カバー工法(重ね葺き)
「カバー工法(重ね葺き)」とは、既存の屋根材や下地材をそのまま残して、その上に新たな屋根を重ねて葺くことです。
メリットは、既存屋根を撤去しないため費用と工期を抑えられ、施工時の天候も選ばないことです。
デメリットは、瓦屋根などの凹凸の大きな屋根材には対応できないこと、重ねることで重量が増すために選べる屋根材が限られることです。
また下地の状態を確認できないため、築年数が比較的浅い、劣化の少ない屋根のリフォームに向いています。
カバー工法でリフォームする場合におすすめの屋根・不可能な屋根などを以下に解説します。
金属屋根をカバー工法でリフォームする場合
→金属屋根 | ◎ おすすめ! |
→金属瓦 | △ 条件付き可 |
→アスファルトシングル・スレート・陶器瓦 | × 原則不可 |
古いトタンなどは金属屋根へのカバー工法が安価でおすすめです。軽量なため耐震性の影響もありません。
アスファルトシングル屋根をカバー工法でリフォームする場合
→金属屋根 | ◯ 可 |
→アスファルトシングル・金属瓦 | △ 条件付き可 |
→スレート・陶器瓦 | × 原則不可 |
耐久性の高い金属屋根へのリフォームがおすすめですが、アスファルトシングルによるカバー工法も多くの実績があります。
スレート屋根をカバー工法でリフォームする場合
→金属屋根・金属瓦 | △ 条件付き可 |
→アスファルトシングル・スレート・陶器瓦 | × 原則不可 |
スレートは建築基準法の「軽い屋根」としてぎりぎりの重量のため、カバー工法を行う場合は構造上の検討が必要になり、原則として既存を撤去する葺き替えがおすすめです。
塗り替え
スレート、セメント瓦、古いトタン屋根などは表面の塗装仕上げによって耐久性を保っているため、定期的な塗り替えによって美観を改善したり、寿命を伸ばすことができます。
葺き替えやカバー工法に比べて費用は安価で済み、工期も短くなりますが、劣化した屋根の機能を回復させることはできず、ひび割れや雨漏りが起こっているような状態では塗替えの効果はありません。
屋根材の種類
リフォームで使用する屋根材には多くの種類があり、以下のようなポイントに注意して選択します。
- 重量:耐震性を確保するため、原則として既存の屋根材より重くならない製品を選択します。
- 勾配:製品によって対応する勾配が異なり、既存と同等以下の勾配に対応できる屋根材を選択します。
- 耐用年数:同じ素材でも新しい製品ほど塗装やめっきなどの耐久性が高くなっています。
- 防水性:金属屋根は隙間が少なく単体での水密性に優れています。
- 耐風性:裏面に空間がなく密着する工法が優れていますが、現在の製品はいずれもほぼ問題ありません。
- 防音性:重量にほぼ比例し、軽量な材料ほど雨音が響きやすくなりますが、吸音材を貼って改善した製品も出ています。
- 価格:概して耐用年数の長い製品ほど価格が高くなります。
以下に屋根材ごとの性能や特徴、メリット・デメリットなどをまとめます。
金属屋根
本体価格 /㎡ | 6,000円~ |
耐用年数 | 25~40年 |
重量 /㎡ | 約5~6kg |
勾配 | 縦葺き:0.5/10~ 横葺き:2.5/10~ |
防水性 | ◎ |
耐震性 | ◎ |
耐風性 | ◎ |
防音性 | △ |
屋根リフォームで最も多く使われているのが金属屋根です。金属板を成形した製品で、屋根材の中で最も軽量で、施工性・加工性がよく、変形に強く、防水性が高く緩めの勾配にも対応することができます。
以前は「トタン」と呼ばれて安普請な屋根材というイメージもありましたが、現在の製品は防水性・耐久性・美観ともに高い性能を有しています。風雨の強い地域や積雪地域で多く使用されていることからも、高い耐久性がわかります。
金属屋根の形状
金属屋根の形状には縦葺きと横葺きの2種類があります。
- 縦葺き:瓦棒葺き、縦はぜ葺きなどがあり、最小で0.5/10という特に緩い勾配に対応することができます。
- 横葺き:平葺き、段葺き、一文字葺きなどがあり、瓦やスレートに似た外観にすることができます。
以下に金属屋根に使われている主な材料を解説します。
ガルバリウム鋼板
金属屋根材料の代名詞ともいえるガルバリウム鋼板は、正式には溶融55%アルミニウム-亜鉛めっき鋼板といいます。
古くからあるいわゆる「トタン」(亜鉛めっき鋼板)に比べてはるかに高い耐食性があり、20〜30年はメンテナンスフリーとされ、住宅や一般建築の屋根材に多く採用されています。
エスジーエル鋼板
ガルバリウム鋼板をベースにマグネシウムの防錆効果をプラスして耐食性を3倍に向上させた次世代の材料です。塩害にも強く海の近くでも使用できるようになりました。最近の金属屋根製品の多くがエスジーエル鋼板に置き換えられています。
メーカーにより様々な形状デザインや塗膜のグレードがあり、豊富なカラーを選ぶこともできます。
アスファルトシングル
本体価格 /㎡ | 5,000円~ |
耐用年数 | 20~30年 |
重量 /㎡ | 約12kg |
勾配 | 2.5/10~ |
防水性 | ◯ |
耐震性 | ◯ |
耐風性 | ◎ |
防音性 | ◯ |
アスファルトシングルは、ガラス繊維基材にアスファルトを含浸・コーティングし、スレート砂や彩色焼成砂を圧着して製造した屋根材です。北米で開発されて100年以上の歴史があります。
柔軟性があり複雑な形状に対応でき、金属屋根に次いで軽量なため、リフォームでも使いやすい屋根材です。既存アスファルトシングル屋根のカバー工法にも対応できます。
防水性については下地のルーフィングに頼る部分が大きく、性能のよい専用品を使用します。
スレート(コロニアル・カラーベスト)
本体価格 /㎡ | 5,000円~ |
耐用年数 | 15~30年 |
重量 /㎡ | 約20kg |
勾配 | 3/10~ |
防水性 | ◯ |
耐震性 | △ |
耐風性 | ◯ |
防音性 | ◯ |
スレートはセメントを主成分として5mm程度の厚さに成形した屋根材で、コロニアルやカラーベストとった商品名で広く知られており、戸建て住宅の屋根材としては最もポピュラーなものといえます。
落ち着いた洋風の外観が得られ、色や質感などを幅広い製品から選択することができます。
製品によって耐久性に違いがあり、定期的な塗り替えなどのメンテナンスも必要とされています。また製造年代によってはアスベストが使用されている場合があり、処分の際には注意が必要です。
瓦
瓦(かわら)は日本で最も幅広く使われている屋根材です。歴史が古く、各地に独自の製法・工法があり、地域特有の風景をつくってきました。ここでは、リフォームに関係する瓦について解説します。
金属瓦
本体価格 /㎡ | 8,000円~ |
耐用年数 | 20~40年 |
重量 /㎡ | 約6~8kg |
勾配 | 2.5/10~ |
防水性 | ◯ |
耐震性 | ◎ |
耐風性 | ◯ |
防音性 | △ |
金属瓦は比較的新しい屋根材で、名称と見た目は「瓦」ですが、性能的には金属屋根の一種でもあります。
外観デザインは陶器瓦に似ていますが重量は1/8以下と軽量なため、瓦の葺き替えリフォームには特におすすめできる屋根材です。各社から様々な形状・デザインの製品が販売されています。
陶器瓦・素焼き瓦・いぶし瓦
本体価格 /㎡ | 10,000円~ |
耐用年数 | 40~60年 |
重量 /㎡ | 約42~60kg |
勾配 | 4/10~ |
防水性 | △ |
耐震性 | × |
耐風性 | △ |
防音性 | ◎ |
伝統的な焼き物による屋根材で、一般的に「瓦」はこれに該当します。日本瓦(和瓦)、洋瓦など様々な形状があります。
耐久性と防音性が高く、独特の高級感や風格のある外観が得られます。重量が大きく、緩い勾配に対応できないため、瓦から瓦への葺き替えが基本となります。
凹凸が大きいためカバー工法では対応できず、必ず葺き替え工法となります。処分費が多くかかることと、近年は瓦職人が減ってきていることも問題になっています。
セメント瓦
陶器瓦より安価なため戦後日本で多く使われ、現在では製造されておらずリフォームの屋根材として使用することはありません。
しかし老朽化した既存のセメント瓦はまだ多く存在し、これを金属瓦などの軽量で耐久性の高い屋根材に葺き替えることは大きなメリットがあります。
防水屋根
防水屋根はビルの屋上のようなフラットな形状で、金属防水屋根、シート防水、FRP防水、アスファルト防水などがあります。
防水屋根のリフォームでは必ず防水屋根を施工し、カバー工法が一般的です。
屋根リフォームに関連する材料
屋根のリフォームでは、屋根材本体のほかにも重要な材料があります。
ルーフィング材
ルーフィング材は、屋根の直下に敷いてセットで防水性を発揮し、絶縁や結露防止の機能もある重要な部材です。
葺き替え・カバー工法のどちらの場合でも、新たにルーフィング材を施工します。屋根の種類や勾配に応じて様々な製品があり、よいグレードのものを選びたいところです。
雨どい
屋根のリフォームと同時に、劣化した雨どい(軒どい・たてどい)を交換することをおすすめします。
最近の雨どいはデザイン性・耐久性が向上しており、外観や機能性が大きく改善されます。
換気材
棟(屋根の頂部)に取り付けて通気施工をすることで、小屋裏の空気が効率的に換気されて暑さを和らげることができ、省エネルギーにもつながります。
効果をはっきりと体感できる部材ですので、屋根リフォームの際に検討することをおすすめします。
野地板
屋根・ルーフィング材は野地板という板状の木材で支えられています。
雨漏りや結露などで経年劣化が大きかったり、葺き替え工事で傷めてしまう場合などは、これを取り替える必要があります。
古い家の野地板を新しい「構造用合板」に取り替えることで、屋根の剛性が上がり耐震性の向上にもつながります。
屋根リフォームの費用の目安
屋根リフォームの費用は、既存の状態や屋根材の選択、建物の形状などによって大きく変わります。
付属部材や足場などの割合は意外に大きく、全体から見れば屋根材本体のグレードを変えても価格はそれほど大きく変わらないことがわかります。
屋根材の選定にあたっては、リフォーム業者の見積もり内訳を確認し、いくつか比較検討してみることもおすすめです。
以下に代表的な費用の例を示します。
葺き替えの費用例
屋根材本体 | 8,000円/㎡ |
瓦撤去処分 | 4,000円/㎡ |
野地板など | 3,000円/㎡ |
ルーフィング | 1,000円/㎡ |
雨樋など付属部材 | 3,000円/㎡ |
足場・養生 | 2,000円/㎡ |
屋根リフォーム費用の合計 | 約210万円 (約21,000円/㎡) |
既存屋根材の撤去処分費がかかり、劣化した野地板を貼り替える場合も多いことから費用は多めになりますが、屋根全体を抜本的に改修できるメリットも大きいといえます。
カバー工法の費用例
屋根材本体 | 8,000円/㎡ |
下地木材 | 1,000円/㎡ |
ルーフィング | 1,000円/㎡ |
雨樋など付属部材 | 3,000円/㎡ |
足場・養生 | 2,000円/㎡ |
屋根リフォーム費用の合計 | 約150万円 (約15,000円/㎡) |
選べる屋根材の種類や重量などの制約が大きいカバー工法ですが、劣化した部材の撤去処分費や下地施工費がかからない分、工事費用を抑えることができます。
屋根リフォームのタイミングの目安
屋根リフォームのタイミングについて、一般的な目安は以下のようになります。
既存屋根材の種類 | 耐用年数 | リフォームの目安 | 劣化症状の目安 |
金属屋根 ※ガルバリウム鋼板 | 25〜40年 | 30年 | 錆び、変色 |
金属屋根 ※トタン(カラー鋼板) | 10〜20年 | 15年 | 錆び、変色 |
アスファルトシングル | 20〜30年 | 20年 | 割れ、浮き、変色、苔 |
スレート | 20〜30年 | 20年 | 割れ、浮き、変色、苔 |
陶器瓦 | 40〜60年 | 40年 | 割れ、ズレ |
セメント瓦 | 30〜40年 | 30年 | 割れ、ズレ |
もちろん雨漏りなどの被害があるときはこの目安に関わらず、すぐにリフォームする必要がありますが、雨漏りがなくても、このような劣化症状があれば耐用年数の限界が近づいていると考えられます。
また屋根材本体は問題なくても、ルーフィング材や野地板、棟や谷の板金の経年劣化によって葺き替えのタイミングが早まることもあります。この表の目安を過ぎていたら、一度業者に見てもらうことをおすすめします。
屋根リフォームの工期
屋根リフォームの工期は一般的に以下のようになります。
工程 | 葺き替え | カバー工法 |
足場設置 | 1日 | 1日 |
既存屋根材の撤去・下地補修 | 2〜7日 | 0〜1日 |
ルーフィング材・屋根材の設置 | 2〜4日 | 2〜4日 |
雨どいなど付属部材 | 1日 | 1日 |
清掃・足場解体 | 1日 | 1日 |
合計 | 7〜14日 | 5〜8日 |
古民家などのように屋根の形状が複雑な場合はより多くかかります。また葺き替えの場合は既存の屋根材や下地材の状態によって補修にかかる工期が大きく変わります。
屋根リフォームの施工事例
ここからは、実際の屋根リフォーム施工事例を紹介します。
瓦屋根から金属屋根「横段ルーフ」に葺き替え
リフォーム費用 | 約150万円 |
工期 | 2週間 |
リフォーム内容 | 屋根葺き替え |
屋根材メーカー・シリーズ | ニチハ 金属断熱屋根平葺き 横暖ルーフS |
施工地 | 静岡県 |
築年数 | 20~30年未満 |
瓦屋根が劣化して雨漏りも発生していたため、軽量な金属屋根に葺き替え、耐震性も向上させています。
「ケイミューカラーベスト」への葺き替え
リフォーム費用 | 約180万円 |
工期 | 2週間 |
リフォーム内容 | 屋根葺き替え |
面積 | 164㎡ |
屋根材メーカー・シリーズ | ケイミュー カラーベスト |
施工場所 | 静岡県 |
築年数 | 20~30年未満 |
劣化したスレートをケイミューカラーベストに葺き替えています。
モニエル瓦から石付金属瓦「ミラノ」へ葺き替え
リフォーム費用 | 約200万円 |
工期 | 2週間 |
リフォーム内容 | 屋根葺き替え |
屋根材メーカー・シリーズ | ルーフタイルグループジャパン 石付き金属瓦 デクラ ミラノ |
施工場所 | 宮城県 |
築年数 | 20~30年未満 |
地震でダメージを受けたモニエル瓦屋根を、軽量でデザイン性の高い輸入品の石付き金属瓦に葺き替えています。
金属屋根「ヒランビー」のカバー工法
リフォーム費用 | 約198万円 |
工期 | 3週間 |
リフォーム内容 | 屋根カバー、外壁・外壁塗装他 |
面積 | 40㎡ |
屋根材メーカー・シリーズ | 稲垣商事 金属屋根平葺き ヒランビー220 |
施工場所 | 千葉県 |
築年数 | 20~30年未満 |
中古住宅の劣化したスレート屋根を、軽量な金属屋根平葺きのカバー工法でリフォームしています。
瓦屋根から「スーパーガルテクト」に葺き替え、同時に外壁塗装も
リフォーム費用 | 約380万円 |
工期 | 3週間 |
リフォーム内容 | 屋根葺き替え、ベランダ、外壁・外壁塗装他 |
面積 | 107㎡ |
屋根材メーカー・シリーズ | アイジー工業 断熱金属屋根平葺き スーパーガルテクト |
施工場所 | 東京都 |
築年数 | 30~40年未満 |
雨漏りを起こしていた瓦屋根を、エスジーエル鋼板の断熱金属屋根に葺き替え、外壁やベランダも同時にリフォームしています。
屋根リフォームで注意するポイント
屋根リフォームで注意すべきポイントを解説します。
屋根の形状によって費用や工期が変わる!
切妻・寄棟などの屋根形状に応じて勾配が取り合う部分に棟や谷ができます。また屋根の先端部分には、破風・鼻隠し、雨どいなどの部材が取り付きます。
屋根の形状が複雑な場合、このような部分が多くなるため、同じ屋根面積でも費用と工期がかさみます。必ず現地調査の上で見積もりをしてもらい、正確な金額を確認しましょう。
見えない所の劣化に注意!
葺き替えの場合、既存の屋根材を撤去してみて初めてわかることがあります。野地板や垂木といった木材が傷んでいる場合は大工工事も発生し、多くの費用が追加でかかることがあります。
築年数の古い家の屋根をリフォームする場合は、こうした劣化もある程度想定して予算を組んでおく方がよいでしょう。
アスベスト含有の有無に注意!
2006年にアスベスト(石綿)を含有する建材が全面禁止されましたが、それ以前に製造されたスレート屋根にはアスベストが含有されている可能性があります。
アスベストを含有する屋根の葺き替えは高額な費用がかかるため、カバー工法によってリフォームすることが一般的ですが、カバー工法にも重量や下地の状態などの制約があります。
アスベストを含有するかどうかは築年数だけではわからず、専門的な知識と調査が必要になりますので、リフォーム業者によく確認しましょう。
建築確認申請は必要?
屋根のリフォームでは、建物の規模や構造によっては「大規模な修繕・模様替え」とされ建築確認申請が必要な場合がありました。これらの解釈は各行政庁によっても変わり、判断が難しいことがありましたが、令和5年に国土交通省から以下のような指針が出ています。
「屋根ふき材のみの改修を行う行為は(中略)大規模の模様替には該当しないものと取り扱って差支えない。 また、既存の屋根の上に新しい屋根をかぶせるようないわゆるカバー工法による改修は(中略)大規模の模様替には該当しないものと取り扱って差支えない。」
引用:国土交通省:屋根及び外壁の改修に関する建築基準法上の取扱いについて
したがって、一般的な屋根材の葺き替えやカバー工法のようなリフォーム工事では、建築確認申請は不要と考えて良いでしょう。
ただし建築確認申請が不要であっても、法令に違反するようなリフォームはできません。構造計算で規定された重量を超えたり、屋根の高さが斜線制限などをオーバーすることがないよう、注意する必要があります。
屋根リフォームに使用できる補助金はある?
屋根のリフォーム工事が以下に該当する場合、助成金(補助金)やローン減税が受けられる場合があります。
- 省エネ改修(屋根の断熱・遮熱)
- 耐震改修(屋根の軽量化)
- 耐風改修
- アスベスト対策(屋根に含有されるアスベストの除去)
- 災害復旧事業
これらの制度は自治体や年度によって異なるため、お住まいの自治体に確認してみましょう。以下のサイトなども参考にしてください。
>>地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト
悪質な業者の訪問に注意!
「近くの工事現場で施工をしている者ですが、お宅の屋根が傷んでいるようです」と近隣の施工会社に成りすました訪問営業が問題になっています。
きちんとしたリフォーム業者であれば、依頼なく飛び込みで訪問して、家の問題点を指摘するようなことはありません。
Q&A よくある質問
最後に、屋根リフォームについてよくある質問をまとめます。
葺き替えとカバー工法ではどっちがおすすめ?
品質や寿命を考えれば、葺き替えがおすすめです。
すべての屋根材のリフォームに対応しており、不要な部材を撤去することで軽量化され、下地の状態を点検して確実に修繕でき、より寿命を伸ばすことができるからです。特に築年数の古い住宅のリフォームでは葺き替えがベターです。
ただしカバー工法も様々な条件が十分満たされる場合には、工期と費用の点でメリットはあります。
最もおすすめの屋根材はなに?
性能や価格を重視するなら、エスジーエル鋼板製の金属屋根が最もおすすめです。
軽量なためすべての屋根材のリフォームに対応し、葺き替え・カバー工法ともに可能で、耐久性や耐震性、防水性などのバランスが取れています。
美観についても、形状デザインやカラーの選択肢が増えており、多くの方の好みに合わせることができるでしょう。
リフォーム後の屋根に保証はある?
屋根材を製造するメーカーはそれぞれ品質保証をしています。例えばエスジーエル鋼板は穴あき25年保証・塗膜15年保証があります。スレートの保証は新築のみとなっているので注意が必要です。
ただしこれらはあくまで材料についてのメーカー保証であり、漏水や破損などについては施工条件も絡みます。リフォーム会社や屋根の施工店が独自の保証を行っていることが多いので、必ず保証内容を確認しましょう。
屋根と同時に外壁をリフォームするメリットはある?
屋根リフォームと同時に外壁リフォームを行うメリットはかなり大きいといえます。
屋根と外壁を別々に工事する場合に比べて、足場代や諸経費が軽減できるほか、屋根と外壁の取り合い部分の納まりがよくなり、無駄な工事が減り、トータルで品質が向上するからです。
よい業者の選び方はある?
リフォーム業者の質にはかなりのばらつきがあります。まずは類似の実績や評判をよく確認して、既存の状態について現地調査と見積もりを依頼します。この時に複数の業者に調査・見積もりを依頼して比較検討することもおすすめです。
調査や見積もりの結果について、不安を煽ったり決断を急がせるようなことなく、客観的にわかりやすく伝えてくれたり、いくつかの工法や材料の選択肢を提示してくれることで安心感と満足度が高まります。
施工側の都合ではなくこちら側の立場に寄り添ってくれる、誠実な対応を感じることができる業者を選ぶことが何より大切です。
屋根リフォームで、優良な会社を見つけるには?
本記事の屋根リフォームは一例で、「費用・工事方法」は物件やリフォーム会社によって「大きく異なり」ます。複数社の見積もりを「比較」をすることが重要です!
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この記事の監修者プロフィール
IEMUS
岩納 年成
大手ゼネコン会社にて、官公庁工事やスタジアム、免震ビル等の工事管理業務を約4年経験。
その後、大手ハウスメーカーにて注文住宅の商談・プランニング・資金計画などの経験を経て、木造の高級注文住宅を主とするビルダーを設立。
土地の目利きや打ち合わせ、プランニング、資金計画、詳細設計、工事統括監理など完成まで一貫した品質管理を遂行し、多数のオーダー住宅を手掛け、住まいづくりの経験は20年以上。
法人の技術顧問アドバイザーとしても活動しながら、これまでの経験を生かし個人の住まいコンサルテイングサービスも行っている。
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