リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける石岡市長・リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける石岡市長・谷島洋司市長

茨城の北部と南部のいいとこ取りだから住みやすい

住宅やリフォームについての支援制度、移住を含めた理想の暮らしについて考え、自治体の取り組みを取材するインタビュー企画『リーダーズインタビュー』。第2回は、雄大な霞ヶ浦と筑波山麓を有し、果物の産地としても有名な茨城県石岡市。谷島市長に、石岡市の魅力と住まい政策について詳しく聞いた。

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”茨城県石岡市”谷島洋司市長にインタビュー!

―石岡市はどんなまちですか?

石岡市は、かつては常陸国の国府が置かれた中心地で、茨城県内で唯一〝歴史の里〟に指定された歴史資源が豊かなまちです。

都心から1時間圏内というアクセスの良さに加えて、筑波山、恋瀬川、霞ケ浦と豊かな自然環境にも恵まれているところでもあります。

霞ケ浦の水運も相まって人と物流の拠点として栄え、明治から昭和にかけては県内有数の商都として賑わったまちでもありました。

石岡市は石岡地区(旧石岡市)と八郷地区(旧八郷町)に分かれます。商都としての顔は石岡地区で、個性的な洋風デザインの装飾が施された看板建築の建物が現在も残り、往時の商都の面影を伝えています。

筑波山ろくの東方になだらかに広がる八郷地区には「にほんの里100選」にも選ばれた、昔から変わらない田園風景を残した里山が点在しています。筑波山系の豊かな水と温暖な気候が育んだ多種多様なフルーツ、有機野菜は市の特産物になっています。

良質な地下水のおかげで酒造りも盛んで、石岡市には3つの蔵元がこだわりの酒造りを継承しています。近年は国産ウイスキーの八郷蒸留所もでき、ビジターセンターも開業したばかりです。

観光面では50万人が訪れる「石岡のおまつり」、あるいは〝花を愛で、自然を感じ、五感を取り戻す〟をコンセプトにした「いばらきフラワーパーク」や自然を生かした里山体験、スカイスポーツも盛んですので、観光資源にも恵まれたまちでもあります。

茨城北部と南部のいいとこ取りなのが石岡

―フルーツなどの農作物の種類の多さには驚きますね。

たとえば、ミカンの北限とリンゴの南限の両方がちょうど石岡市のあたりにあるんです。

カキ、リンゴ、ミカン、ナシ、イチゴ、ブルーベリーにプラムにブドウと、何でも採れるのは、筑波山系の山々の緩斜面や盆地には、北向きから西向きまでさまざまな斜面があるうえに、地質も粘土質だったり砂地だったりと、いろんなフルーツや農作物に最適な環境があるためです。

農業をしたいと県外から移住される方も多いのですが、皆さん土の良さにびっくりされますね。

私は専門外なのでよくわかりませんが、土の質が全然違うそうですよ。私は八郷地区出身ですが、たしかに山によって沢の色が違います。

瓦会地区の鳴滝は黒い沢ですが、筑波山の方に行くと砂岩の白い砂地が広がっていて、同じ滝でも沢でも土の様子がまったく違うんですね。広い関東平野の中にあって、石岡市には多種多彩な農作物を育む独特の自然環境があるんです。

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暮らしているからこそ、見落としてしまう『良さ』がある

―あまり知られていないのはなぜでしょう?

中山間地が多いので少量多品種なんですね。たとえば東京市場では茨城県産が割合として半分以上を占めていても全国的にはあまり知られていないんです。

それに、やはり農作物は暖かい地方から市場に並ぶので、ブランド産地には敵いませんし、石岡産が市場に並ぶのはどうしても旬の終わり頃になってしまいます。

ただ品質はとてもいいので、わかっている消費者の方はしっかりと購入されています。

加えて、これは茨城県民にも通じる話かもしれませんが、石岡市は災害も少なく、あまり雪も降りませんし、気温も温暖で住みやすく、東京にも近くて何も不自由を感じていないので、地域の魅力を発信することに慣れていないように思えます。

全国都道府県の魅力度ランキングがあると、茨城県は大体第47位、最下位が定位置だったりすることが多いですよね。

というのも地元にTVメディアがないことが象徴していますが、どうしても東京圏内の茨城という感覚があるんですね。ですから、自分から発信する必要をあまり感じないんです。

たとえば北海道や九州など全国の美味しいものについての情報はよく知っていても、地元の魅力を茨城県民自身が気付いていない。

だから日頃から情報を全国に発信できていないのではないでしょうか。

市民参画型のシティプロモーション

―とても恵まれた環境にあるのに、それは非常にもったいないですね。

令和4年策定の「石岡市総合計画」では政策目標の一丁目一番地に〝情報発信〟を掲げています。

具体的には、市の魅力発信のために「わがまち発信室」というものを作りまして、市職員と公募委員が中心となり、紙媒体やSNSなどを用いて地域の魅力を発信していくという試みです。

石岡市に愛着を感じる市民の割合を増やすことを目指し、学校の中でも〝ふるさと学習〟の充実も進めていますが、同時に市民参画型のシティプロモーションを進めています。

まずは地域の魅力を磨き上げながら、それを市としても、市民からも一緒になって発信していく、そういう政策に取り組んでいるところです。

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地域で地域を支え合う「持続可能なまちづくり」

―谷島市長の目指すまちづくりを教えてください。

石岡市には、潜在的なものも含めてたくさんの魅力があります。先述のように、災害の少ない安全安心な地域でもあります。そして地産地消ができるまちなんです。

それは農作物に限らず、人手のかかるものに関しても、介護や教育に関しても、地元の人たちで互いに協力しながら一緒に前に進めることができるまちだと思います。

人口減少は全国的な問題ではありますが、石岡市としては7万人という人口の中で、地域で地域を支え合う持続可能なまちづくりを進めていきたいですね。

筑波山系の豊かな自然溢れるまち、茨城県石岡市

茨城県のほぼ中央に位置する石岡市。南東には雄大な霞ケ浦、西方には名峰・筑波山がそびえ、古くから茨城県有数の商都として知られた石岡地区(旧石岡市)と、筑波山系の山々に三方を囲まれた八郷地区(旧八郷町)の、二つの異なる表情と歴史を持ったまちだ。

また八郷地区には、世界に4つしかない磁気嵐に関連があるデータを観測する観測所(気象庁地磁気観測所)が大正元年から設置されていることからもわかるように、古くから災害が少ない場所なのだ。

筑波山麓に守られた比較的温暖な四季があり、豊かな自然がもたらす山の恵みに加えて、霞ケ浦では古くから漁業も盛んに行われていた。

奈良時代には常陸国の国府が置かれ、江戸時代の石岡は人と物流の一大拠点となった。

52万人が訪れる「常陸國總社宮例大祭」も石岡市の名物

往時の賑わいを今に伝えるのが、毎年9月に3日間にわたって開催される「石岡のおまつり」だ。正式には常陸國總社宮例大祭といい、常陸国府における最も重要な神事の1つだったが、次第に地域の伝統文化が融合し、市民がこぞって参加する大規模な祭礼となった。

神輿渡御にあわせて、移動式の小屋を胴体とする巨大な「幌獅子」や山車が40台以上も集結し、街中を練り歩くと、祭りのボルテージは最高潮に。

「正月やお盆には帰省しなくても、おまつりには帰る」と言われるほど、石岡で生まれ育った人たちには特別な3日間で、ここ数年はコロナウィルス禍で神事のみとなったり、規模を縮小しての開催を強いられていたが、令和5年度はようやく通常のかたちで開催され、待ち兼ねた過去最多の52万3000人が押し寄せる盛況ぶりとなった。

有機農業を目的に県外から移住者も

石岡市の観光資源となっているのが八郷地区の里山だ。

筑波山ろくの東側に、山々に抱かれるように広がる八郷地区は、1年を通して四季折々のフルーツやさまざまな農産物の恵みをもたらす、関東平野でも稀有な場所だ。

複雑な地形ごとに異なるフルーツが美味しく育つ最適の環境があり、筑波山から吹き下ろす風が昼夜の寒暖差を生み出して果物を甘くする。

八郷地区で採れる有機野菜も石岡市の特産品のひとつで、JAやさと有機栽培部会は、有機野菜の生産だけでなく、担い手の育成などに取り組んでいることが評価され、令和5年10月、農林水産祭園芸部門で内閣総理大臣賞に選ばれている。

同部会は平成9年に設立され、32組の農家が有機栽培による野菜作りに取り組んでいる。

今回の受賞では、独自の研修制度「ゆめファームやさと」による、有機栽培農家の独立支援事業が高く評価された。これまでに研修を受けたおよそ25組の中には県外から石岡市へ移住して農業を始めた人も多い。

石岡市への移住希望者の中でも、新規就農に関しては、市も「ゆめファームやさと」と連携した支援事業を用意している。それが「朝日里山ファーム」だ。

「朝日里山ファーム」は平成29年4月にオープンした施設で、廃校となった小学校を利用した体験型観光施設「朝日里山学校」周辺の遊休農地を再生し、新規就農者の研修農場として整備したもの。農場は約1.6ヘクタールの有機ほ場のほか、トラクターやパイプハウスなどを備え、研修生をトータルサポートする。

研修期間は2年、研修は4月から始まり、毎年1組ずつを受け入れている。応募資格は年齢45歳以下で、原則として夫婦での研修となる。研修中は市内に居住し、研修終了後は市内で就農することが条件となっている。

「関係人口」増加がまちの活性化のカギ

全国的に農業人口は減少の一途にあるが、石岡市ではその魅力的な自然環境から、県内外から多くの就農希望者がやってくる。市としては、支援事業で地域農業の担い手を育成するとともに産業の活性化も図りたい考えだ。

石岡市が重視するのは〝関係人口〟だ。移住した〝定住人口〟ではなく、観光に来た〝交流人口〟でもない。〝関係人口〟とは、地域や地域の人々と多様に継続的に関わる人々のことをいう。

〝関係人口〟を増やしていくことが、今後の地域づくりの担い手確保や地域活性化に繋がっていくという考え方だ。

たとえば、市外への情報発信や、市外の人が気楽に参加できるイベントなどへの協力を得ることにより、地域の未来づくりに対するアドバイザーや応援団になってもらおうという試みなのだ。

石岡市は筑波山系の山々を利用したスカイスポーツなどのアウトドア・アクティビティが盛んで、市内には国内最多の10のスクールがあり、国内では数少ない一年中フライトを楽しめるエリアである。

使用機材を預けたままにしておき、体一つで来訪する常連客は1000人に及ぶというが、その人々も継続的に石岡市を来訪する貴重な〝関係人口〟といえるだろう。

石岡市の移住・定住支援を解説!

移住支援金制度

石岡市への移住については、移住支援金制度の利用は増加傾向にあるという。令和5年は相談だけでも20件近くに上っている。

移住支援金は東京23区に居住または通勤していた場合、条件を満たすと単身で60万円、2人以上の世帯であれば最大100万円の支援金がもらえる。

さらに18歳未満の世帯員1人につき最大100万円が加算される。合わせて起業する場合には、200万円の支援金も受けられる。

なお、コロナ禍を経て、テレワークができるようになったことから移住したいという相談が多いという。市内の子育て世代の3/4が石岡市に縁があるそうで、一度市外に出ても、Uターンで戻ってくるということが多いようだ。

住まいに関する助成事業

石岡市への移住に伴い、自らが居住する住宅を建築する場合は、条件を満たしていれば最大40万円の補助金が受け取れる。

また、市内の工務店にて在来工法による建築などの条件が整えば、最大で60万円の補助金が受け取れる。

子育て・新婚世帯新生活支援補助事業

子育て世帯・新婚世帯への補助金としては、市内に移住・定住する際の建物の購入費やリフォーム費用、賃料、共益費などを対象に、条件を満たすことにより最大30万円の補助金が受け取れる。

また、ファミリー層以外にも、他市町村からの早期退職後の移住者も一定数いる。石岡市の住環境を気に入って移り住む人々も少なくないのだ。

※2023年取材時点の情報です

※詳しくは石岡市 移住・定住支援ポータルサイト『みっぺ』をご確認ください。

「石岡市移住定住支援ポータルサイトみっぺ」

(取材・執筆/坂茂樹 撮影/高木航平)

茨城県石岡市長
谷島 洋司やじま ようじ
昭和38年、茨城県石岡市生まれ。昭和61年に立正大学経済学部を卒業。郵政省主計課、関東郵政省勤務等を経て、平成9年から平成30年まで、茨城県石岡市瓦会郵便局長を務める。平成30年、茨城県議会議員選挙に初当選。令和2年に石岡市長選挙に立候補し初当選。
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