リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける佐倉市長・西田三十五市長

子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで一緒に暮らせる佐倉市

住宅やリフォームについての支援制度、移住を含めた理想の暮らしについて考え、自治体の取り組みを取材するインタビュー企画『リーダーズインタビュー』。記念すべき第1回は、豊かな自然に恵まれ歴史ある千葉県佐倉市。西田市長に、佐倉市の住まい政策について詳しく聞いた。

リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける佐倉市長・西田三十五市長

歴史・自然・文化のまち“千葉県佐倉市”西田三十五市長

―佐倉市はどんなまちですか?

佐倉市は、印旛沼をはじめとする豊かな自然環境に恵まれたまちでありながら、都市部へのアクセスがよいという特徴を持つまちです。

都心から1時間、成田空港まで30分で行ける距離ですが、やはり都市部からほど近い場所にこれだけの自然が残り、そして触れ合えるということ、自然に溶け込んで生活できるということは、他にはない佐倉の特色だと思います。

また、城下町の面影を残し、歴史や文化を感じることができることも佐倉の魅力の1つです。

―西田市長のまちづくりのビジョンを教えてください。

佐倉市では「笑顔輝き 佐倉 咲く みんなで創ろう『健康・安心・未来都市』」を将来のビジョンとして、持続可能なまちづくりを推進しています。

今や私たちの市も少子高齢化時代です。佐倉市の高齢化率は全国平均29.0%を上回る33.2%となっています。

ですが、元気な高齢者が多いのも佐倉市の大きな特徴です。高齢者はもちろん、若い世代や子どもたちも含めて、一人ひとりがいきいきと輝く未来に向けて、「オール佐倉」の精神で地域づくりに注力しています。

「多世代近居・同居支援」で地域社会の担い手不足を支える

佐倉市でも、まちの賑わいや経済活動の減退、空き家の増加など、さまざまな課題が顕在化しています。地域社会の担い手も減少傾向です。地域活動に取り組む地域コミュニティの衰退が大きな課題の1つであると認識しています。

昔のように「3世代同居」のような家族のかたちであれば、おじいちゃんおばあちゃんに子どもを預けて、お父さんやお母さんが外に働きに行くということで、地域経済と地域コミュニティが無理なく両立できました。

しかし現在の核家族化や家族構成の変化を考えると、なかなか難しいところです。

リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける佐倉市長・西田三十五市長

むしろ現実にはご家族の介護の必要性から近居・同居を検討するというケースも少なくありません。そういう時のために、「近居・同居住替支援事業」などのサポート制度を拡充させ支援体制を強化しています。

三世代近居・同居は子育て世代にも大きなメリット

―いろんな家族のかたちがありますね。

やはり高齢者の方にとっては、住み慣れた家で暮らしたいと思うのは当然で、そこにお子さんがいてお孫さん、曾孫さんが近くに暮らしたり一緒に暮らすというのは子育て世代にも大きなメリットだと思います。

佐倉であれば、そういう3世代、4世代近居・同居も決して難しくはありません。率先して近居・同居ができるような補助や助成制度を手厚くしていきたいと考えています。

今はペットも家族の立派な一員です。元より公園が多い佐倉ですが、ドッグランのように動物と一緒に楽しめる環境の整備も検討しています。

ペットと一緒に食事ができたり、買い物ができたりという動物に優しいまちづくりも進めていきたいと考えています。

ペットと一緒になって自然と戯れ、気兼ねなく家族のように暮らせる日常はなかなか都心では味わえないと思います。ペットと一緒に暮らすなら佐倉へ。これも定住や移住を促進する政策のひとつと考えています。

自然の中で遊び、自由な発想から生まれる〝気づき〟がある

―新しい家族が定住すると、子育て環境も大切ですね。

少子化による人口減を食い止めるには、子育てに適した環境の整備が重要になってきます。

佐倉市では、子どもの「やりたい!」「やってみたい!」を優先して禁止事項をなるべくなくしたプレーパークの開催を支援しています。

リフォームメディア「ハピすむ」のインタビュー取材を受ける佐倉市長・西田三十五市長

私の世代ですと、子どもの頃は毎日泥だらけになって遊んでいたものですが、今となっては危険だと敬遠されてしまい、禁止事項の多い公園が増えてしまいました。

しかし、思いっきり遊んで体験してみることで学ぶことも多いはずです。

利便性だけを追求したり、学力ばかりを気にしている中では得られない、自然の中で好きなように遊んで、その自由な発想から生まれる〝気づき〟もあるのではないでしょうか。

佐倉市では「過去も現代も多くの優秀な人材を輩出してきた実績」「市民が誇りと愛着を持てる郷土」「才能を引き出す環境」「安心してのびのび子育てできる環境」これらの特徴をひとつにまとめたブランドメッセージがあります。

それが「佐倉で才能が開花する」です。

これからも佐倉の将来を担う子どもたちが、わがまちからどんどん出てきて欲しいと思います。

子どもからおじいちゃん・おばあちゃんまで一緒に暮らせる佐倉に

―若い世代の方たちの移住が増えているそうですね。

全国的にも増加傾向にある空き家の問題は深刻ですが、このところ増えているのが農業を志す若者たちの移住です。

もちろん市でも新規就農者支援事業を進めていますが、専門的に農業を学んだ20~30代の若い世代が、空き家バンクと住宅関連補助で新たに居住していただき、現在では19組の若い農家が無農薬の野菜づくりに励んでいます。

皆さんと力を合わせて、子どもから、おじいちゃん・おばあちゃんまで一緒に暮らせる佐倉に、それが私の願いです。

住むなら佐倉、そう私は自負しています。

佐倉市は豊かな自然に恵まれた歴史あるまち

千葉県北部、古くから〝下総〟と呼ばれた茨城県・埼玉県にまたがるエリアのちょうど中央部に位置する佐倉市。

印旛沼をはじめとする緑豊かな自然環境はこの地域に暮らす人々の生活に潤いを与え、利根川を介して東京湾につながる水運がこの地に人材と物流が集中する一大拠点を作り上げた。

江戸時代になると佐倉藩11万石の城下町がにぎわった。慶長16(1611)年に完成した佐倉城は建造物こそ残っていないが、天然の地形を利用した城全体の形状がよく分かる形で保存されているため、日本100名城のひとつに千葉県で唯一選ばれている。

城跡は佐倉城址公園として美しく整備されており、その一角には〝れきはく〟の呼び名で親しまれる国立歴史民俗博物館が開館。

武家屋敷などの歴史的建造物が残る城下町の雰囲気と合わせて歴史の重みを今に伝えている。

佐倉市は住環境と都心からのアクセスが良好

都心から40キロ、電車は京成本線とJR総武線の2路線があり、いずれも都内まで1時間ほど。東関道自動車道を利用すれば約40分と都内へのアクセスも良好だ

成田空港へ行くにも電車で20分、車なら30分程度と交通環境にも恵まれている。

人気のアウトレットやアミューズメントも車で1時間圏内のエリアにあり、市内にはオランダ風車と四季折々の花々が楽しめる〝佐倉ふるさと広場〟や、アスレチックや陶芸体験ができる〝佐倉草ぶえの丘〟などの自然を取り入れた公園も充実している。

市民一人当たりの公園面積は8.7平方メートルと千葉県の平均値を大きく上回り、データ上からも佐倉市の豊かな自然環境がうかがえる。

人口は17万508人(令和5年9月末現在)。持ち家率は85.8%(千葉県内第3位)延べ床面積99平方メートル(同第2位)と、住環境にも恵まれている

佐倉の歴史や自然は魅力的な観光資源となっており、年間を通じて200万人を超える観光客が訪れる。

高齢化でも人口が増えるベッドタウン

東京都市圏のベッドタウンとして発展してきた佐倉市。その特色のひとつに、市西部の志津地区(北部)に広がる大規模なニュータウン「ユーカリが丘」がある。

自然と都市機能が調和する「いつまでも住み続けられる街」をコンセプトに昭和46(1971)年に開発が始まり、約2.5平方キロメートル(計画を含む)に7905世帯1万8808人が暮らしている(令和5年9月末現在)。

東京都内では〝限界ニュータウン〟として居住者の高齢化やニュータウンそのものの老朽化が問題視されはじめているが、分譲投げ売りではなく、バブル期も新規分譲戸数を抑えて成長管理型に特化した街づくりを行ったことが奏功して現在も堅調に人口増を続けている

高齢者用施設を核とした福祉サービスの拡充や、自然と暮らしを共存させた環境共生型街区ビオトピアを整備するなど、ニーズを先読みした都市計画は大規模ベッドタウンのモデルケースともなっている。

佐倉市全体でみれば、日本全体がそうであるように、少子高齢化と人口減少は喫緊の問題だ。ユーカリが丘における先駆的な都市計画も、居住者の高齢化は避けては通れないという現実を示している。

佐倉市の人口は2011年をピークに減少し続けており、高齢化率(65歳以上)は33%を超えている。

しかし、要介護(要支援)認定率は15.3%で、全国平均19.0%、千葉県平均17.4%を共に大きく下回っており、千葉県内でも元気な高齢者が多い傾向がある。

佐倉市の住宅・リフォームなどの住まい支援を解説!

近居・同居住替支援事業

高齢化と人口減少によって、生活そのものの見直しが必要になってくる中で、住まい支援施策の見直しも急務になっている。そんな中で佐倉市が力を入れているのが、親世帯と子世帯のどちらにも配慮した「近居・同居住替支援事業」だ。

近年、経済的事情や介護の問題、そして働き方の変化に伴って、離れて生活していた親世帯と子世帯が互いに生活を見直す傾向が出てきている。

数ある佐倉市の定住支援補助の中でももっとも利用が多いということが、その傾向をはっきりと示している。

制度の内容は、親世帯と子世帯が同居、または近くに住宅を購入する際にかかる住宅取得費用を最大40万円補助するというもの。運用開始の平成28年度は14件の利用にとどまっていたが、令和4年度には144件の申請があり、本年度(令和5年度)予算では170件分の予算を確保しているという。

他市町村では親・子・孫の3世代を対象にしたものが多いが、佐倉市では2世代でも支援の対象としているのは心強い。利用者の中には市外からのUターン世帯も半数近くあり、ふるさと佐倉の魅力は若い世代にも評価されている。

戸建賃貸住宅家賃補助事業

移住・定住促進のための支援策としては、佐倉市独自の「戸建賃貸住宅家賃補助事業」がある。

これは、子育て世帯や若年世帯が新たに戸建ての住宅を借りる際に、その家賃の3分の1、最大月額2万円を2年間補助する制度。市外から佐倉市に新たに転入する世帯だけでなく、市内で住み替えを検討している世帯も対象になる。

こちらも、とくに若い子育て世帯には見逃せない補助制度で、中古住宅の需要を促進するという狙いもある。

中古住宅リフォーム支援事業

中古住宅リフォーム支援事業」は、市内で中古住宅を購入しリフォームを行う場合に、リフォーム費用の一部を最大40万円補助する制度。居住者の経済的な負担を軽減する一方、中古住宅や空き家の流通の促進を図る。令和4年度には97件の申請があり、こちらも人気の制度となっている。

中古住宅解体新築支援事業

また、新たに空き家付きの土地を購入し、解体後して戸建て住宅を新築する場合には「中古住宅解体新築支援事業」が利用できる。解体費用の一部を最大30万円まで補助するもので、令和2年に制度開始して以来、相談件数は大きく増加しているという。

空き家バンク

空き家問題も全国共通だが、佐倉市では売り手と買い手をマッチングさせる「空き家バンク」の制度がある。支援事業としては、売買契約が成立した際に、成約奨励金として登記や仲介手数料の費用を5万円補助し、さらにリフォーム費用や家財道具の処分に最大30万円を補助する制度もある。こちらも移住・定住の際には上手に利用したい。

佐倉市が進める主な3つの高齢者福祉対策とは

【その1】住み慣れた地域での医療と介護体制を整備

高齢化社会に備える佐倉市の政策は、持続可能な地域共生社会の実現をコンセプトに掲げている。主な3つの高齢者福祉対策のうちの1つが、「住み慣れた地域での包括的な支援体制の整備」だ。

佐倉市の場合、人口10万人当たりの一般診療所は61.6(全国平均69.9)。市の健康管理センター内には小児初期急病診療所や休日夜間急病診療所があり、万が一の場合にも安心できる医療環境が整っている。

そのため、医療や介護を必要とする状態になっても、可能な限り住み慣れた地域でそのまま暮らせるよう、福祉・生活支援サービスのネットワーク体制を強化するという試みだ。

【その2】高齢者の生きがいづくりを支援

2つめは「高齢者の生きがいづくりへの支援の推進」。健康維持のための事業やボランティアを含めた働き先の確保、ネットワークづくりを念頭に置いた社会参加の促進などを通じて、高齢者が社会の中で役割を持っていきいきと生活できるようにする。

具体的には、高齢者向けのスマホ教室の開催や、学び直しの場の創出など、労働や社会参加だけでなく、個々に合わせた細やかな支援を行っている。

【その3】介護予防や認知症への理解促進

3つ目は「介護予防や認知症施策の推進」。指導員の養成研修などにより、介護予防に関する知識の普及を行いながら、地域で支え合う体制づくりを進めようというもの。

たとえば地域住民の趣味活動の場〝通いの場〟では、介護予防リーダーによる体操会なども実施されている。

また同時に、認知症に関する正しい知識の啓発と、早期発見・早期対応のためのネットワークも強化。

認知症の患者を持つ家族には、医療・介護・福祉の情報を一元化させた連携ツール〝さくらパス〟をはじめ、家族同士や地域住民、専門職が自由に交流できる認知症カフェを設置するなど、支援体制の拡充を進めている。

※2023年取材時点の情報です

※くわしくは佐倉市 移住・定住公式サイト『さくらでくらす』をご確認ください。
佐倉市 移住・定住公式サイト「さくらでくらす」公式ページ

(取材・執筆/坂茂樹 撮影/高木航平)

千葉県佐倉市長
西田 三十五にした さんご
昭和39年、千葉県佐倉市生まれ。昭和63年に拓殖大学政経学部卒業。平成3年、佐倉市議会議員に初当選。市議を3期務めた後、平成15年に千葉県議会議員に初当選。文教常任委員会委員長、千葉県議会予算委員会委員長などを歴任し、4期当選。平成31年に佐倉市長選挙に出馬し初当選。現在、2期目。
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