2024年01月14日更新

監修記事

【不動産鑑定評価書と意見書】不動産鑑定書類について

不動産鑑定とは?

不動産 鑑定 方法

不動産鑑定について

「不動産鑑定」とは、不動産鑑定士または不動産鑑定士補が、国土交通省が定めている不動産鑑定評価基準に基づき、不動産の経済価値を専門的に判定することです。

「鑑定評価」はその時の相場価格だけではなく、経済情勢やその土地の開発動向、対象となる土地の建築規制等の法律的制限や、対象となる土地の形状、面積などを考慮して評価します。

よく知られているものには国や都道府県、市町村から依頼される「地価公示」がありますが、それ以外に「都道府県地価調査」、「相続税標準地・固定資産税標準宅地の評価」などにも用いられます。

また、裁判上の評価や競売物件の評価、不動産を証券化する際の資産評価、公共用地の取得などの場合にも行われる鑑定です。

不動産鑑定は主に下記のような場合で役立ちます。

  1. ビルやマンションの家賃評価など、不動産経営を行うとき
  2. 不動産に関する遺産や財産を公平に分配、相続するとき
  3. 不動産の売却購入や等価交換を計画しているとき
  4. 事業資金の融資申し込み時の限度額の予測を行いたいとき
  5. 資産評価を知りたいとき

不動産鑑定書とは?

不動産 鑑定 評価 書

不動産鑑定士が不動産鑑定を行った際に発行する書類

不動産鑑定評価書とは、不動産鑑定士に不動産鑑定を依頼した際に発行される書類のことで、不動産の鑑定評価額や対象となる不動産の詳細、依頼の目的や条件、評価額を決定した理由などが記載されています。

この項目については、法律で記載が義務づけられており、どの不動産鑑定士に依頼しても同じ形式で発行されるため、公的機関に証拠、証明として提出することが可能です。

不動産鑑定士とは

そもそも「不動産」についての定義とは、国際法においては、土地とその上に建てられている定着物、あるいはそれらを含む物件のことを指します。

日本における法律では不動産登記法で定められていますが、土地と建物は別のものと判断します。

そして「不動産鑑定士」とは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づいた国家試験に受かった者のことです。

不動産鑑定士の基本理念は、国土全体の均衡のとれた地価形成を保つことであるため、社会的な役割は非常に重いものとされています。

不動産の鑑定評価、土地の有効利用などを考慮したコンサルティングを行うのが不動産鑑定士の主な業務ですが、公的機関と民間企業や個人のそれぞれから依頼された業務を扱います。

公的機関から依頼される主な業務

  1. 地価公示の際の土地の鑑定評価
  2. 市街地の路線に面する宅地1平方メートルあたりの評価(路線価)鑑定
  3. 裁判所の管轄下で行う強制売却に伴う競売対象の評価

民間企業や個人等から依頼される主な業務

  1. 不動産売買の参考としての対象物件の鑑定評価
  2. 株式会社へ不動産を現物出資する際の鑑定評価
  3. 抵当権設定のための不動産鑑定評価
  4. 不動産賃料収入における運用目的の証券化に係る鑑定評価
  5. 会社合併時、または会社更生法や民事再生法の要請に伴う資産の評価

国土交通省の「不動産鑑定評価基準」とは

「不動産鑑定評価基準」とは、国土交通省が制定した不動産鑑定を行う際の規範です。

不動産の評価方法や鑑定の手順、鑑定目的別の価格の決め方などがまとめられています。

評価基準は、土壌汚染調査の義務化や、収益用物件の詳細な鑑定方法の追加など、時代の変化やニーズに沿って随時改正されており、評価基準から逸脱した鑑定は不当鑑定として認められません。

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不動産鑑定評価書と意見書はどのようなものなの?

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不動産鑑定評価書

不動産鑑定評価書とは、国家資格である不動産鑑定士によって作成される書類のことで、不動産の鑑定評価額と評価額の算定に用いた要因、理由などが詳細に記載されています。

そのため、不動産鑑定評価書は他の不動産に関連する書類に比べて情報量が多く、場合によっては数十ページを超える分量となる場合もあるのです。

記載内容は不動産の鑑定評価に関する法律に基づいた記載義務事項に則っており、裁判や税務署などの公的機関での証明、証拠として利用することができます。

また、不動産鑑定評価書に記載する内容については、不正や不備があった場合、作成した不動産鑑定士が処罰される規定も設けられているため、より信頼性、公平性さが確保されていると言えるでしょう。

不動産鑑定評価書は裁判や税務署に提出するなどの利用方法がありますが、その他にもさまざまな公的資料として用いられる書類です。

不動産を担保として融資を受ける際や相続で正確な評価額を知りたい場合にも用いられますし、共同所有の不動産で権利調整などを行う際にも使用されます。

意見書

意見書とは、不動産鑑定士が主に作成している不動産価値の評価を記載した書類です。

不動産鑑定評価書に比べて調査範囲が狭く、記載項目も少ないため、コストを抑えつつある程度の精度で評価額を知ることができます。

ただし、意見書は有資格者が作成しなければならないといった制限がなく、項目や記載方法についても制限がありません。

このことから、裁判や税務署などの公的機関で証明として意見書を利用することはできないので注意が必要です。

法的には意見書の作成に不動産鑑定士の資格は必要ありませんが、国土交通省のガイドラインによって価格等の調査については不動産鑑定士が行うものと定められているため、基本的には不動産管理士が作成しています。

ただ、不正等があった場合については、意見書には法的な義務などが存在しないため、罰則も設定されていないので注意が必要です。

不動産鑑定評価書に比べ、意見書は簡易的で正確性、信頼性が劣る調査ではありますが、不動産の売却価格の相場を知りたい場合や、評価額を把握しておきたい場合に向いています。

意見書は比較的安価に価格調査を実施することができるため、不動産売却時の市場調査の一環として利用したり、内部資料として利用したりする目的で作成すると良いでしょう。

不動産鑑定評価書の見方や構成について

不動産鑑定評価書の見方について

不動産鑑定評価書には、鑑定評価額や対象不動産の表示など、様々な項目が記載されています。

不動産鑑定評価書を受け取った際にこれらの項目について不動産鑑定士から説明を受けることができますが、後から見返す際に疑問点がないよう、基本的な見方を知っておきましょう。

不動産鑑定評価書の記載義務事項について

不動産鑑定評価書は、法律で記載しなければならない事項が義務づけられています。

この記載義務事項とはどのようなものなのでしょうか?

対象不動産の表示

「対象不動産の表示」はどのような不動産を鑑定したかについて記載する項目です。

住所や地番、建物がある場合には不動産登記に用いられる家屋番号、面積など、さまざまな項目が記載されています。

依頼目的と鑑定評価の条件

「依頼目的と鑑定評価の条件」の項目には、どのような目的で不動産鑑定評価を依頼したかや、鑑定で求める価格について記載します。

鑑定で求める価格には複数の種類がありますが、一般向けの不動産鑑定で用いられることが多いのは「正常価格」です。

これは、様々な要因を元に土地にどれだけの価値があるかを示すもので、イメージとしては不動産の相場とほとんど同じものにあたります。

鑑定評価額の決定及び鑑定の基準となった日付

不動産価格は時期によって変動するため、不動産鑑定評価書には実際に鑑定を行った日付と、鑑定評価額を決定した基準日が記載されています。

不動産鑑定評価額を決定した理由

一般的要因や地域的要因など、社会情勢など、鑑定額を決定した要因についての説明が記載されています。

通貨価値が上昇していることや近隣に公共交通機関があることなどは鑑定額の上昇要因になりますし、地盤の緩みなどがある場合は評価額の下落要因として扱われます。

この項目では、さまざまな要因をもとに鑑定評価額が正当なものかが説明されていますので、資料数も膨大なものとなり、数十ページを超える場合も少なくありません。

また、説明内容も専門知識が必要なものが多くあるため、後から読み返す場合には、受け取り時の説明内容を個別に記録し、わからない部分についても確認しておいた方が良いでしょう。

関与不動産鑑定士及び業者に係る利害関係等

親子や親族、業務上の関係がある場合などは不動産鑑定評価額が意図的に調整される可能性を考慮しなければなりません。

この項目では、不動産鑑定を依頼した者と、不動産鑑定を行った鑑定士、鑑定が依頼された不動産鑑定事務所との間で利害関係がどのようになっているかを記載します。

ここに関係者だと記載することによって不利益等が生じることはありませんので、正確な情報が記載されているかどうかを確認しておきましょう。

鑑定評価の基本事項

鑑定評価の基本事項の項目には、価格時点や不動産の種別、類型など、鑑定評価の基本となる事項を記載します。

鑑定評価額

不動産鑑定評価書で最も大切な項目と言えるのがこの鑑定評価額です。

さまざまな情報、条件、資料をもとに算出された評価額がここに記載されます。

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不動産鑑定評価書の基本事項について

不動産鑑定評価書によって求める価格の種類

不動産鑑定評価書に記載される価格は、適切な市場価値として表示する価格である「正常価格」と、特定の当事者間で用いられる「限定価格」、特殊な物件に対して用いられる「特別価格」とがあります。

このうち、正常価格については市場価格と同じもの、いわゆる相場とほぼ同じものです。

限定価格は、不動産市場で自由に売買を行うのではなく、当事者間で不動産取引を行う場合の価格のことで、例えば借地を買い上げる場合や隣接地を購入する場合などに用いられます。

特殊価格については、文化財等の指定を受けた建物や宗教関連の建築物、公共施設など、販売を考慮しない場合に用いられる価格です。

不動産の類型

不動産の類型とは、不動産の状態や権利関係についての区分のことです。

建物が建っていない土地なら「更地」、建物がある場合は「建付地」と表記され、権利関係については、借地、底地、借家等の区分で表記します。

不動産の価格時点

不動産の価格時点とは、不動産鑑定評価を行う際に不動産の価格判定をどの日付で行ったか、その基準を表しています。

不動産は状況によって資産価値が変動するものですので、いつの時点で判定を行ったかを明確にしておかなければなりません。

不動産の鑑定評価を実施した年月日

不動産鑑定評価では、将来時点での評価は原則として行わないため、過去時点または現在時点での評価が行われます。

そのため、価格時点と評価実施日と大幅な乖離がないかどうかを確認するため、鑑定評価を実施した日時を記載します。

不動産鑑定評価の依頼目的

どのような目的で不動産鑑定評価を依頼したかを記述する項目です。

依頼目的として記述されるものには、売買の参考、不動産交換の参考、相続財産の評価、担保評価、資産評価、共同保有物件の権利調整、借地人による借地の買い上げ、隣接地の購入などがあります。

縁故または特別の利害関係の有無

不動産鑑定士は、不動産鑑定評価に影響を及ぼす恐れのある利害関係、例えば親子や親族、業務上の関係者から鑑定依頼を引き受けてはならないというガイドラインが定められています。

しかし、この利害関係の有無については法律上禁止されているわけではないため、不動産鑑定士によっては鑑定依頼を受けることもあるのです。

不動産鑑定評価書では、このような利害関係のある依頼についても公平な評価を行うよう、利害関係の有無を記載する項目が設定されています。

不動産鑑定評価の条件

対象確定条件

対象確定条件とは、対象となる不動産の所在や範囲、所有権などについての項目です。

条件については、現状のまま鑑定を実施する、建物がある場合でも土地のみで鑑定する、建物のみを鑑定する、隣地を購入する際などに併合した状態で鑑定を実施するなど、どのような範囲で鑑定したかを記載しています。

想定される条件

将来的に土地の状況が変化することが想定される場合に記載される条件です。

例えば、セットバックで土地が狭くなる、住居地域が商業地域に変更され、容積率が大幅に変わる場合などに用いられます。

不動産鑑定評価額決定の理由

対象不動産の状況や地域の状況、試算価格の調整など、鑑定評価を行う不動産に関するさまざまな情報をもとに、評価額がどのようなプロセスで決定されたかどうかを記載する項目です。

この項目では、不動産の面積や構造、建ぺい率、容積率などの物的な情報から、市場での相場や地域性、近隣地域の状態、地盤の強度や形状など、評価額決定に用いられた要因が全て記載されています。

不動産鑑定の現地実施日

不動産鑑定では、市場価格などの変動をふまえて価格時点を設定して評価を行わなければなりません。

この時、鑑定した日付と価格時点の日付が大きくずれていると、正確な鑑定評価を行うことが難しくなってしまうため、これらの日時と鑑定日に差異がないか確認するために、現地実施についても日付が記載されます。

不動産鑑定書による評価と不動産査定の違い

不動産の価値を調べる場合、不動産鑑定士による不動産鑑定評価と、不動産業者による不動産査定のどちらかを用いるのが一般的です。

この2つの方法にはどのような違いがあるのでしょうか?

不動産鑑定士による鑑定評価とは

不動産鑑定士による不動産鑑定評価とは、国家資格を持つ担当者が法律で定められたかたちで行うものです。

鑑定評価が行われると、不動産鑑定評価書という書類が発行されますが、記載事項が法律で義務化されているため、どの不動産鑑定士に依頼しても記載事項に違いはありません。

評価額についても、不動産鑑定評価基準が国土交通省によって定められているため、大きな差異はなく、信頼性の高い結果を得ることができます。

ただし、不動産鑑定評価は有資格者による専門的な調査であるため、鑑定を行う際には手数料が必要です。

手数料の額はある程度相場が設定されていますが、不動産評価額や必要とする調査の内容、発行する書類の種類などによって大幅に価格が変化するため、場合によっては約50万円以上かかる場合もあります。

不動産業者による価格査定とは

不動産業者による価格査定は、不動産業者の社員が行う査定のことで、物件の立地や築年数などを元に販売実績や相場情報を元に価格を提示する「机上査定」と、現地を訪問して行う「訪問査定」とがあります。

不動産鑑定士による鑑定評価と違い、不動産業者による査定は公的な資格は必要なく、担当者の経験則などをもとに査定が行われるため、提示された評価額はそれほど正確なものではありません。

不動産を売却する際に目安となる価格としては十分ですが、実際の売買ではこの価格からずれることも多いため、あくまで参考価格として考えるようにしましょう。

また、不動産業者による査定は、資格等がなくても行うことができるため、公的な手続き、例えば担保評価などの証明として利用することはできません。

このような目的のために不動産の価格を調査したいという場合には、不動産鑑定士による不動産鑑定評価が必要です。

不動産鑑定評価に比べると業者による査定はあまり良いものではないように思えますが、この査定は基本的に不動産売買を考える方向けのサービスとして行われているため、査定手数料がかからないというメリットがあります。

本格的な調査、例えば赤外線を用いた雨漏り調査やボーリングによる地盤調査を行う場合は別途費用がかかりますが、ある程度の不動産価値を知りたい、売却価格の目安を知りたいという場合には、こちらの方が安価です。

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不動産鑑定評価書の不動産鑑定評価額が決まるまで

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不動産鑑定評価書に記載される不動産鑑定評価額は、どのような手順で決まっていくのでしょうか?

一般的要因の分析を行う

不動産鑑定評価額を決定する際に最初に行われるのが、一般的要因の分析です。

一般的要因とは、気象条件や土壌、地盤、地質などの自然的要因、人口や生活様式などの社会的要因、物価水準や税金などの経済的要因、法律の変化や軽減税率などの政策に関連する行政的要因がこれにあたります。

地域要因の分析を行う

地域要因とは、宅地地域なら宅地地域と、農地地域なら農地地域と、商業地域なら商業地域と、というように同一の地域を比較し、道路の広さなどの有利となる要因があるかどうかを表しています。

この要因は、住宅地域なら道路の広さや行政的な条件、交通機関や商業施設などの地理的なメリットなどが考慮され、商業地域の場合は地域がどれだけ栄えているかや、交通機関の利便性などが考慮されます。

また、工業地域の場合については、輸送などにともなう利便性の他に、原料調達に有利か、関係産業までの距離なども要因として扱われます。

個別要因の分析を行う

個別要因とは、鑑定を行う不動産に対し、独自の要因となるものです。

例えば、土地の場合、道路がどのように敷地と面しているかによって評価額が変わり、角地や二方路地などの道路に面している部分が多い土地は評価額が高くなる傾向があります。

また、道路以外の条件、例えば土地の形状や隣接地の状態なども個別要因として扱われ、崖下にある土地は危険性から評価額が下がりますし、工場や線路沿いなどの音や臭いといった問題がある場所も評価額が下がります。

その他にも、建物については築年数や間取り、設備の状態、材質などが考慮されるだけでなく、建ぺい率や容積率なども要因の1つです。

個別要因とは、一般的な不動産取引で注目されやすい、物件そのものの特徴を表すものと考えておくと良いでしょう。

鑑定評価方式を適用し分析する

不動産鑑定評価には「収益還元法」「取引事例比較法」「原価法」と呼ばれる方法があります。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

収益還元法

「収益還元法」とは不動産の収益に着目し、対象となる不動産から将来得られるであろう価値を、現在の価値に換算して評価する方法です。

オフィスビルや賃貸マンションなどの収益を生む不動産が主な対象になります。

収益が見込まれる不動産の価値がその収益力に応じて決まることを前提にしているため、収益の予測ができればその不動産の価値も評価できるとみなされます。

そのため、当然ながら、収益が大きいほど不動産の価値も高いと判定されます。

ここでいう「収益」とは、主にオフィスや賃貸マンションなどの月々の賃料、共益費、月極駐車場などです。

また、ショッピングセンターやホテル等の運営収入、テナント料も収益に含まれます。

直接還元法とは

収益還元法の一種である「直接還元法」は、「DCF法」と比べると比較的簡易な計算方法だと言えるでしょう。

将来の変動予測に加えて標準的な一時期(通常は1年間)の純収益を「還元利回り」で還元して収益を求める方法です。

そのため還元利回りが評価に大きな影響を与えることになりますが、還元利回りには決まった計算式などはなく、その不動産の立地や状態からそれぞれに定められます。

「直接還元法」は「直接法」、「単年度法」と呼ばれることもあります。

DCF法とは

収益還元法の一種である「DCF法」は、Discounted Cash Flow Analysis(割引キャッシュフロー分析)の頭文字をとったもので、企業が資産価値を計算する方法として、幅広く称されている手法です。

当初は金融機関や投資家が使用していた手法ですが、近年では不動産業界でも使用されるようになりました。

過去に不動産市場の取引の成立が外資だけだった時期があり、外資の価格水準が「DCF法」を元にしたものであったため、日本の不動産市場でも使い始められたという経緯があります。

不動産業界における「DCF法」は、将来の不動産の資産価値は現在のものとは異なるという前提で評価され、将来の不動産の価値を現在価値で割り戻して評価する方法です。

取引事例比較法とは

「取引事例比較法」とは、過去に実際行われた十分な量の売買取引の実例から、対象となる不動産価値を得ようとする方法です。

そのため、取引事例比較法が適しているのは類似する事例が大量にある一般住宅だとされています。

オフィスビルや商業施設は一般住宅と比較して事例が多くないため、この方法は適していないでしょう。

しかし、取引事例比較法はデフレや急激なインフレ時には十分なサンプルが得られないため、信頼性が低下してしまう点には注意が必要です。

過去は取引事例比較法が評価方法の主流でしたが、現在はDCF法に移っています。

原価法とは

原価法とは、対象となる不動産を再築したらどれくらいの価格(再調達原価)となるのかを割り出した後、そこから不動産の築年数分の低下した価値を引いて原価修正することで導き出される不動産の価格を求める方法です。

原価法のカギは、この再調達原価を把握できるかどうか、そして原価修正を正しく行えるかどうかです。

再調達原価は不動産価格を評価する時点でその対象となる建物を建てるために必要とされる原価の総額です。

資材から工事費、発注者が負担すべき諸費用などすべてが含まれます。

一方、原価修正を行うためには、資材の耐用年数または不動産を観察することで発見される損傷や備品の機能性の劣化、環境と影響などから総合的に建物価値を判断します。

主に一戸建て住宅などの建物に用いられる方法です。

試算価格の調整と鑑定評価額の決定を行う

さまざまな要因を分析し、依頼にあわせた鑑定評価方式を用いて計算を行った後は、資産価格の調整を行います。

試算価格の調整とは、各試算結果が正しいかどうか、説得力のあるものかどうかを再吟味するものです。

この再吟味で試算結果に問題がないと判断できたら、正式な鑑定評価額として決定されます。

不動産の鑑定評価によって求める限定価格とは?

不動産 鑑定 限定 価格

不動産の鑑定評価によって求める価格の種類

一般的に用いられている不動産鑑定評価書では、基本的に正常価格が用いられていますが、不動産鑑定評価書では依頼目的や条件に合わせ、正常価格以外のものが用いられる場合もあります。

正常価格とはどのようなものなのか、それ以外の価格とあわせて見てみましょう。

正常価格とは

正常価格とは、不動産市場で売買される際に適正だと考えられる価格のことです。

対象となる不動産市場の条件には、市場参加者に制限がないこと、一定期間以上市場に物件が公開されていること、誰でも自由に市場に参加ができることがあります。

こう見ると少し難しいものだと感じてしまうかもしれませんが、この条件は通常の不動産業者が参加している不動産市場そのものです。

つまり、正常価格とは、仲介業者などを利用して不動産の売買を行う際に適正な価格のこと、いわゆる相場と言えます。

限定価格とは

限定価格とは、一般的な不動産市場とは違った目的、条件で売買される不動産に対して用いられるものです。

不動産の売買では、市場を経由する以外にも特定の当事者間だけで売買を行う場合もあります。

このような取引でも、基本的には市場価格である正常価格を用いて土地の評価額を算出しますが、土地を取得または売却することによって、市場価値以上の利益や損失が発生する場合もあるのです。

こういった市場価格とは違う視点で評価額を計算しなければならない場合に用いられるのが限定価格です。

特殊価格とは

特殊価格とは、文化財である不動産や宗教建築物、公共施設など、市場性の無い不動産に対して用いられる価格です。

不動産鑑定評価というと、不動産の売買を前提に評価額を調査するものというイメージがありますが、文化財や宗教建築物、公共施設などは通常市場で売買されることはありません。

このような不動産に対し、保存や税額の計算など、売買を前提としない状態での評価額を知りたい場合に用いられるのが特殊価格です。

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不動産の鑑定評価によって限定価格を求めることができるケース

不動産 鑑定 限定 価格

不動産鑑定評価で限定価格を用いて鑑定評価を求めたい場合、どのようなケースなら限定価格を使用することができるのでしょうか?

一般的な不動産売買で起こりやすい限定価格のケースをご紹介します。

借地権者が底地の併合を目的とした売買に関連するケース

借地契約を結んで土地を借りている場合、借地契約で建築条件などが定められています。

そのため、建物の建て替えなどに制限がかかり、土地としての魅力は通常の土地に比べ低くなっていると考えられるのです。

もし、借地権者が底地を購入し、完全所有権を手に入れれば、借地契約による建築制限などがなくなり、土地としての魅力、評価が通常の土地と同じ状態まで回復します。

つまり、底地の価格で底地を購入する以上のメリットが考えられるというわけです。

このような場合、買手は底地を正常価格より高い価格で購入するだけの経済的な合理性が認められるため、正常価格に完全所有権を得た場合のメリットを含めた価格が計算されます。

経済合理性に反する不動産の分割を前提とした売買に関連するケース

土地の売買では、所有する1つの土地をそのまま販売するというケースだけではありません。

用地買収などで土地の一角だけを売却したり、広い土地の一部を売却したりすることもあるでしょう。

このような分割売却を行った際に、土地の形状が変わり、残った土地が利用しにくくなることがあります。

土地の評価額は土地の所在地や路線価だけでなく、利便性などの要因も考慮して決定されるもののため、このような分割売却によって土地形状が悪化すると、残地の評価額が下がってしまうのです。

こういった売買の際には、分割によって被る評価額の低下について補償を受けることができ、限定価格を用いて補償を含めた価格を計算します。

隣接不動産の併合を目的とした売買に関連するケース

土地形状が悪い不動産に隣接する土地を購入する場合など、所有する不動産に面した土地を買い取ることで土地が使いやすくなったり、価値が上がったりすることがあります。

このような場合は、正常価格で購入する以上のメリットが購入者に認められるため、売手は限定価格を用いて、メリットを販売価格に上乗せすることができます。

ただし、この場合の価格変動は、併合した土地の評価額が2つの土地それぞれに分かれていた場合に比べて増額していることが認められなければなりません。

広い道に接したから価値が上がったはず、広くなったから値上がりしたという印象論ではなく、不動産鑑定評価で実際の値上がりが確認できる必要がありますので、注意しましょう。

不動産の簡易鑑定とは意見書のことなの?

不動産業者などで行うことができる不動産の簡易鑑定は意見書のことなのでしょうか?

簡易鑑定や机上査定など、このような不動産鑑定はさまざまな名称で呼ばれていますが、実際には「簡易鑑定」といった名称の書面はありません。

以前は簡易鑑定という書面を作成することもできましたが、平成21年9月に発行された「不動産鑑定評価制度改正に関する指針等」によって簡易鑑定という評価書は作成できなくなりました。

また、国土交通省では平成22年1月に簡易評価に対するガイドライン、「価格等調査ガイドライン」を施行しているため、不動産鑑定の書類は2種類、不動産鑑定評価基準に則ったものとそれ以外になっています。

つまり、不動産鑑定における意見書とは、上記の書類のうち後者である不動産鑑定評価基準に則らないものが対象です。

簡易査定という名称は不動産業者などで多く用いられていますが、基本的には物件の売却価格の目安を査定するものであり、不動産鑑定士が作成する意見書とは別のものだと考えておくと良いでしょう。

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不動産鑑定評価書と意見書はどこに依頼すればいいの?

不動産鑑定評価書や意見書を作成したい場合、誰に依頼すれば良いのでしょうか?

不動産鑑定評価書については、法律で不動産鑑定士が作成しなければならないと定められているため、不動産鑑定士事務所に依頼する必要があります。

意見書については、不動産鑑定士の資格は不要とされていますが、価格等調査ガイドラインでは価格等調査について不動産鑑定士の独占業務だと記載されているため、こちらも不動産鑑定士に依頼しなければなりません。

どちらの場合についても、基本的に不動産鑑定士に依頼して作成してもらう必要がありますが、法律等で記載事項などが定められていても、どのように評価額を算出するかは不動産鑑定士によって変わります。

不動産の鑑定評価を依頼する際には、対応や評価内容などについて信頼できる不動産鑑定士を探すことが何より重要です。

不動産鑑定士を探す際には、日本各地の不動産鑑定士協会が設置している不動産鑑定相談所を利用したり、各不動産鑑定士事務所が行っている無料相談を利用したりすると良いでしょう。

相談の際には、依頼内容について分かりやすく説明してくれるか、不動産鑑定の委託契約を急がないかなどを確認し、手数料についても相場に比べて割高ではないか、費用の内訳をきちんと提示してくれるかなどを重視します。

不動産鑑定評価書と意見書の費用相場はどれくらい?

依頼から不動産鑑定評価書を受け取るまでの流れ

不動産の正確な適正価格を知りたいと思ったら、不動産鑑定士に依頼することになりますが、依頼した後にはどんなことが待っているのでしょうか。

不動産鑑定の流れを順を追って見ていきましょう。

①不動産鑑定士に鑑定を依頼

まずは数いる不動産鑑定士の中から自分の不動産の鑑定に適任である不動産鑑定士を選び、鑑定を依頼します。

不動産鑑定で作成される不動産鑑定評価書は、その不動産に関心のあるいろいろな人が目を通すことになる大切な書類です。

その出来具合によって不動産所有者の仕事上の信頼度も変わってきますから、不動産鑑定を依頼するなら不動産鑑定士なら誰でもいいというわけではありません。

失敗しない不動産鑑定士の選び方

鑑定士選びのポイントは、鑑定士または鑑定事務所にお客様の問題を解決るする能力があることです。

不動産の鑑定は年々複雑化しているので、高い分析能力が必要です。

そこで信頼のおける不動産鑑定士の選び方の目安としては、民間の不動産評価の実務経験が100件以上で5年以上のキャリアがある鑑定士を選ぶようにするといいでしょう。

また不動産鑑定を依頼する対象の地域の事情をよくわかっていることも重要です。

複数の不動産鑑定士に相談

事前相談は無料としている不動産鑑定士や鑑定業者もあるので、複数社に相談をしてみるのもいいでしょう。

その際に、依頼主の問題をしっかりと話を聞いて依頼内容を理解してくれるかどうか、顧客の立場で相談に乗ってもらえるかどうかを確かめて、信頼できる不動産鑑定士や業者を選ぶようにしましょう。

②対象不動産の確認と資料収集

不動産鑑定士または不動産鑑定業社が決まり契約を終えたら、鑑定する対象不動産の基本情報を確認し、その後、現地調査になります。

法務局や官公庁での調査、資料としては登記簿謄本や位置略図、その対象不動産のある地域資料、さらには取引事例等々、あらゆる観点から対象不動産についての資料が集められます。

③鑑定評価

集められた資料を基に分析され鑑定評価を行います。

すでにご紹介した不動産鑑定の手法などを使いながら、鑑定が行われていきます。

④不動産鑑定評価書の作成

鑑定評価額が決まると、不動産鑑定評価書が作成されます。

不動産鑑定評価書には鑑定評価額が記されているのはもちろんのこと、通常数十ページにもなる分析結果をまとめた結果報告書のような体裁になりますが、法律上で掲載内容も決められている公式文書です。

不動産鑑定評価書は誰の目で見ても納得がいき、説得力のある書類であることが大切です。

鑑定評価額が決められた行程を詳細に記し、論理的で説得性のある文書になっているかどうかを確認してください。

不動産鑑定評価書

不動産鑑定評価書の作成費用は、鑑定を行う目的や不動産の評価額などによって変わりますが、更地の不動産評価額を証明するだけの目的なら、約15万円からが相場の目安です。

この価格は建物のみを鑑定評価した場合もほぼ同じ水準ですが、土地建物を合わせて鑑定評価した場合は、合計費用ではなく約20万円からが相場の目安とされています。

また、マンションやアパートの査定については、鑑定を行う範囲が大きく、査定結果も高額となるため、相場は約20万円からが目安です。

その他の事例、山林や農地などの広い土地の鑑定についても、費用は約20万円からが相場とされています。

不動産鑑定評価書の作成日数については、調査目的や鑑定対象の広さにもよりますが、約10営業日が目安です。

1:鑑定評価額が1,000万円以下の場合

更地ならば約20万円前後、土地と建物は約25万円前後、マンションなどの集合住宅は約30万円前後が相場です。

2:鑑定評価額が5,000万円以下の場合

更地は約20万円から30万円前後、土地と建物は約25万円から50万円前後、マンションなどの集合住宅は約35万円から70万円前後が相場です。

3:鑑定評価額が1億円以下の場合

更地は約30万円から40万円前後、土地と建物は約40万円から60万円前後、マンションなどの集合住宅は約60万円から80万円前後が相場です。

しかし依頼する不動産鑑定士により費用は多少前後するでしょう。

意見書

意見書の場合は調査範囲が不動産鑑定評価書に比べて狭く、調査期間も短くすむため、費用の相場は約3万円からが目安です。

作成にかかる日数についても、調査を行う物件の状態にもよりますが、約3営業日が目安とされています。

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不動産鑑定評価書と意見書意外に不動産鑑定士が発行する書類はある?

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調査報告書

不動産鑑定評価書と意見書の他に、不動産鑑定士は調査報告書というものを作成することができます。

この調査報告書とは、意見書と同じく簡易的な調査を行って査定価格を提示するもので、法的な扱いも意見書と同様、不正等があった場合についても罰則の定めはありません。

しかし、不動産鑑定士が作成する書類のため、公的な証明能力がないにもかかわらず影響力が発揮されてしまうことから、国土交通省などのガイドラインにより、内部資料などの限定的な利用向けにのみ発行が制限されています。

調査の内容については、原則として国土交通省が定めた価格調査ガイドラインをもとに行われるため、意見書に比べて評価額の正確性は高いとされていますが、不動産鑑定評価書ほどではありません。

不動産調査報告書の作成にかかる費用は、不動産の規模にもよりますが、約10万円からが相場です。

不動産鑑定や売却を依頼する際の業者の選び方

不動産 鑑定 評価
不動産鑑定や売却を依頼する時は、見積もりや査定を取って、複数の業者を比較して業者を決めることが大切です。

不動産鑑定士と不動産会社それぞれの、選び方とポイントを知っておきましょう。

不動産鑑定を依頼する不動産鑑定士の選び方

不動産鑑定士は、あらゆる不動産や個別の事情に対応できる柔軟さが求められます。

雰囲気やコミュニケーションスキルだけでなく、実績や知識の豊富さなどもよく確認して選びましょう。

鑑定依頼者の目線でアドバイスをくれる

相続や離婚、早期売却など、繊細な事情を抱えていたり期限が迫っていたりするケースでは、依頼主目線のアドバイスもくれる不動産鑑定士が心強い存在となります。

鑑定前の打ち合わせでは、不動産鑑定士に鑑定の目的をしっかり伝え、必要書類の集め方や鑑定書の完成予定日などを教えてくれるかよくチェックしましょう。

鑑定評価の実績と種類が豊富

不動産鑑定は、売却以外にも節税や相続、証券化、賃貸物件化など様々な目的で行われます。

従って、不動産鑑定評価額は、適切な資料を元に各ケースに応じた金額で算出されなければなりません。

依頼したい鑑定目的の実績を持つ不動産鑑定士であれば、的確な評価額を導き出してもらえるだけでなく、鑑定後も、より具体的なアドバイスをもらえる可能性が高くなります。

不動産売却を依頼する不動産会社の選び方

不動産売却では、査定後の売却まで見据えて不動産会社を選ぶことが重要です。

複数の不動産会社に査定を取って比較する

不動産の査定は不動産鑑定以上に、依頼した不動産会社ごとの違いが顕著に表れます。

不動産会社を選ぶ時は、必ず複数の業者に査定を依頼して結果を比較しましょう。

査定結果をもらったら、査定の根拠まで不動産会社に尋ね、根拠もなく高額な査定を付けて契約へ誘導しようとしていないか確認することもポイントです。

売却時まで想定して査定してくれる

不動産会社に査定を依頼する際は、担当者が売却時も想定しているかチェックしましょう。

不動産の売却では、価格を下げたり不動産に手を加えたりするなどの販促活動も必要になります。

売却時も想定して査定してくれる不動産会社であれば、除草やリフォームといった販促に必要な活動も売却前に予測でき、査定時から売却価格が一気に下がるようなリスクも防ぐことができるでしょう。

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不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?

ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。

正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。

そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!

「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」

「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」

そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。

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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!

この記事の監修者プロフィール

【監修者】株式会社worth style home 濵田昭平

株式会社worth style home

濵田昭平

2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。

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