2024年01月13日更新

監修記事

相続における『不動産鑑定評価』と『相続税評価』について

遺産相続の際には、正確な不動産の評価額を調べるために、不動産鑑定を実施します。この不動産鑑定とはどのようなものなのでしょうか?遺産分割における不動産鑑定について、相続税評価とあわせてご紹介していきます。

遺産相続は査定額で揉めやすい

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相続にまつわる親族間のトラブルの話はよく耳にしますが、中でも最も揉める原因になるのが不動産です。

なぜ不動産が争議のもとになるのか、まずその理由から探っていきましょう。

不動産相続で得をするのは誰?

不動産を相続する方法は、現物分割、換価分割、代償分割、共有の4種類があります。

現物分割は、土地を分筆して相続人がそれぞれ所有する方法です。

しかし建物がある土地であれば分割は困難です。

またそれほど広くない土地であれば、分割後の使い道がないために現実的な相続方法とはいえません。

換価分割は、不動産を売却して現金で分割する方法で、ほとんどトラブルになることはありません。

しかし相続人のすべてが換価分割に同意するとは限りません。

特に相続対象となる不動産を自宅としている人は売却を拒否することが多いのです。

その場合、相続人の一人が不動産を相続して、不動産の価格に相当する金額を代償金として残りの相続人に支払う方法をとることがあります。

これが代償分割です。

また相続の方法がどうしても決まらないために、不動産をすべての相続人で共有するという方法がとられることがあります。

ただし、これはあまり望ましい選択とはいえません。

なぜなら不動産を相続人の共有にすると、世代交代するごとに権利者の数か増えるために、土地の処分がますます困難になるからです。

その結果、何の土地利用もできない不動産になってしまうことがあるのです。

また、住宅ローンやアパートローンなど残債がある場合、相続する方が融資利用できる属性かどうかなども影響してくるため、さらに複雑な遺産相続となります。

不動産の査定額で代償金は変わる

代償分割を選択した場合、不動産を引き継いだ人が他の相続人に代償金を支払います。

たとえば、相続人が兄弟3人のみだとします。親と同居していた長男が引き続き自宅に住むために不動産を相続するとしましょう。

もし不動産の査定額が3千万円だとすると、長男は残りの兄弟2名に1千万円ずつ代償金を支払うことで、相続手続を完了させるのです。

このときに最も大事なことは、適正な不動産査定額を出すということです。

この査定額に相続人全員が納得をしないことには、遺産分割協議はいつまで経っても完了しません。

ところが、現実は査定額が査定方法によって違ったり、査定する不動産会社によっても異なったりすることがあります。

そのため不動産の査定額の違いによって、相続問題がトラブルに発展することがあるのです。

遺産分割における『不動産鑑定』の役割

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不動産鑑定とは

相続で不動産の分割を行う場合には、不動産鑑定を行って不動産の評価額を調査します。

不動産鑑定では、地価調査標準価格や固定資産税評価額、路線価、不動産業者による査定結果などをもとに評価額を計算し、当事者全員の合意があればこの価格が不動産の評価額として扱われます。

しかし、この方法で得られた評価額に合意が得られず、問題となった場合には、裁判所が鑑定人を選任し、この鑑定人による不動産鑑定評価を実施します。

この鑑定人は、国家資格を取得した不動産鑑定士が行いますが、鑑定評価にかかる費用についてはあらかじめ裁判所に納めておかなければなりません。

また、鑑定費用については、各当事者が法定相続分で分割して負担するのが一般的ですが、一部当事者が鑑定を希望する場合は、希望した当事者が費用を負担することが多いようです。

不動産鑑定士による不動産鑑定評価については、不動産の評価額等によって費用が変わるため、広い土地や事業用ビルなどの評価額が高い物件の場合、調査費用だけで約100万円を超える可能性もあります。

一般的な住居の場合でも、不動産鑑定評価を実施すると費用は約30万円かかるとされているため、最初に提示された評価額が市場相場に近いと判断できた場合は、無理に不動産鑑定士に依頼する必要はないでしょう。

不動産鑑定士による不動産評価の方法

不動産鑑定では、地価調査標準価格や路線価などを元に評価額が算出されますが、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼した場合、どのような方法で評価額が計算されるのでしょうか?

不動産鑑定士の行う不動産鑑定評価は、国土交通省のガイドラインや法律によって計算方法等が規定されており、これ以外の計算方法を用いることはありません。

計算方法には、不動産を現時点の相場で再取得した場合にかかる費用から減価償却分などを引いて計算する「原価法」の他に、「取引事例比較法」や「収益還元法」というものが用いられます。

取引事例比較法は、近隣の似た条件の物件が販売された事例をもとに物件の評価額を定める方法で、収益還元法は事業用ビルなどが将来的に発生させる利益をもとに計算する方式です。

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相続した不動産の売却の準備段階で課せられる税金

相続した不動産を売却する場合、売却を準備する段階ではどのような税金が課せられるのでしょうか?

相続税

不動産に限らず、遺産を相続する際には相続税が課せられます。

これは、亡くなられた方の遺産を相続で受け取った際に、受け取った遺産の額が基礎控除額を超えた場合に課せられる税金です。

基礎控除額は、法定相続人が1人の場合で3,600万円、2人目以降はこの基礎控除額が600万円ずつ増加し、4人で相続した場合は基礎控除額が5,400万円となります。

ただし、この基礎控除額は相続人ごとに個別に適用されるわけではなく、遺産総額から基礎控除額総額で控除される仕組みのため、注意が必要です。

例えば、約5,000万円の遺産があったとして、1人で相続するなら基礎控除が3,600万円のため、約1,400万円が相続税の対象となりますが、4人で相続すれば、基礎控除が5,400万円となるため、相続税が課せられません。

登録免許税

登録免許税とは、土地の名義を変更する際に課せられる税金です。

固定資産税の評価額を元に計算され、遺産相続の場合は固定資産税評価額の0.4%、生前贈与で受け取った場合は2%の税金を納めなければなりません。

相続不動産を売却する際は、登録免許税を納付し、不動産の名義を法定相続人に登記変更しなければ手続きを行うことができませんので、遺産を相続した際にはまずこの名義変更を行うようにしましょう。

また、登記変更の手続きを司法書士に依頼する場合については、登録免許税に加えて手数料がかかります。

相続した不動産の売却後に課せられる税金

相続した不動産を売却した際には、売却によって得られた利益について譲渡所得税が課せられます。

譲渡所得税とは、所得税と住民税を合わせたもので、通常の所得とは別に確定申告を行わなければなりません。

また、故人が不動産を取得してから売却するまでの所有期間により、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つの税率のどちらかが適用される仕組みが用いられている点にも注意が必要です。

長期譲渡所得と短期譲渡所得では、税率に2倍近い差が生まれるため、課せられる税金の額も大きく変わってしまいます。

長期譲渡所得と短期譲渡所得とはどのようなものなのか、それぞれの対象となる基準と、税率について見てみましょう。

短期譲渡所得の対象と税率について

短期譲渡所得は、故人が不動産を入手し相続人が売却するまでの期間が5年以内だった場合に課せられる税金です。

税率は所得税が30%と、住民税が9%、これを売却益にかけて計算していきます。

また、2018年現在、譲渡所得税以外にも復興特別所得税が2.1%課せられますので、合計の税率は41.1%となります。

長期譲渡所得の対象と税率について

長期譲渡所得の対象となるのは、故人が不動産を入手してから相続人が売却するまでの期間が5年を超える場合です。

税率は所得税が15%、住民税が5%、これに復興特別所得税2.1%を加えた、合計22.1%が税率となります。

不動産所有期間はいつを基準にして計算される?

長期譲渡所得と短期譲渡所得を比べると、税率に大きな違いがあることがわかります。

そのため、相続した不動産を売却する際には、できるだけ長期譲渡所得の対象となってから手続きを開始するのが望ましいのですが、不動産の所有期間については購入日が基準となるわけではありません。

不動産の所有期間については、毎年1月1日を基準として考えます。

つまり、不動産の購入日が4月1日だったとして、5年後の4月2日に売却したとしても、長期譲渡所得の対象とはなりません。

この場合、長期譲渡所得の対象となるのは、翌年の1月1日以降です。

購入日から6年経過している不動産ならあまり気にする必要はありませんが、ちょうど5年前後の場合は、1月1日基準での所有日数で5年を超えているかどうかを確認しておきましょう。

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相続した不動産に課せられる税金に関する特例制度とは?

相続した不動産を売却する際にはさまざまな税金が課せられますが、これらの税金にはさまざまな特例が用意されており、上手に活用することで税金額を大幅に抑えることができます。

取得費加算の特例

通常、不動産の売却益の計算は売却額から購入時の取得費を差し引いたものを元に計算されます。

しかし、遺産相続の場合については、この取得費に一定額を加算し、売却益を小さくすることができるのです。

取得費に加算できる金額は、

相続税×(相続した不動産の額÷相続税の課税額+債務控除額)

で計算できます。

4,000万円の不動産を1人で相続したとして考えた場合、基礎控除額が3,600万円あるので課税対象額は400万円となり、1,000万円以下の相続の場合の税率が10%ですので、相続税は40万円です。

相続人の債務控除も計算に含みますが、今回は債務控除が無いものとします。

これらの数字を式に当てはめた場合、

40万円×(400万円÷400万円+0円)

となり、取得費加算特例として、40万円を取得費に追加して計算することができます。

居住用不動産の3,000万円特別控除

被相続人と同居していた不動産を相続し、売却した場合には、譲渡所得から3,000万円が控除されます。

控除の対象となるためには、一戸建てであること、昭和56年5月31日以降に建築されたこと、相続直前まで被相続人が居住していること、2013年1月2日以降に相続したこと、相続後から売却までに空き家となっていることです。さらに、相続開始から3年以内に売却が完了しており、売却価格が1億円以下であることも条件です。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続人が居住していない不動産を相続し、売却した場合についても特別控除を受けることが可能です。

この特例を適用する条件は、居住用不動産の3,000万円特別控除とほぼ同じですが、被相続人が一人暮らしをしていたこと、相続から売却まで空き家のままにしておくことといった条件が加えられています。

また、居住用不動産の3,000万円特別控除と違い、相続空き家の3,000万円特別控除は取得費加算特例制度と併用することができません。

相続不動産を売却する際には、相続空き家の3,000万円特別控除と取得費加算のどちらの特例を利用したほうが税金の納付額を抑えることができるかをよく考慮して選ぶようにしましょう。

相続税申告は『相続税評価額』で計算される

相続税評価額とは?

相続税評価額とは、相続税や贈与税の税額を計算する際に基準として用いられる価格のことです。

土地の場合は原則として相続開始時点で換金した場合の価値が相続税評価額として扱われます。

相続税評価額の算出には、路線価をもとに計算する「路線価方式」と、固定資産税に一定の倍率をかけて計算する「倍率方式」が用いられており、どちらかの方式を用いて相続税評価額を計算しなければなりません。

路線価方式とは、国税庁が定める道路に面する宅地の1平方メートルあたりの評価額である路線価を用いる方式で、相続する土地の面積にこの路線価をかけて計算します。

倍率方式は、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率をかけて相続税評価額を計算するもので、宅地の場合は1.1倍に設定されていることが多いようです。

一般的に、路線価方式は都市部などの道路に面した宅地などに用いられ、倍率方式は地方などの路線価では計算が難しい場所に用いられています。

不動産鑑定士による鑑定評価額との違い

路線価方式や倍率方式で相続税評価額を計算すると、不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書に記載されている評価額より少ない評価額となっていることがほとんどです。

相続税の評価額は、原則として時価を用いることとされていますが、土地の価格は時期などによって大きく変わるため、不動産鑑定士による鑑定評価ではばらつきが生まれてしまいます。

このようなばらつきは税の公平性の観点から望ましくないため、国税庁では路線価や固定資産税評価額といった変化の少ない基準、つまり財産評価基本通達に則って計算するよう指導しているのです。

つまり、不動産鑑定士による不動産鑑定評価額は、鑑定した時期に不動産市場で売却したと想定した場合の評価額で、相続税評価額は国が一律の基準で評価した額だと言えます。

このことから、相続税評価額は不動産鑑定評価書に比べて安価となる傾向があり、基本的に変動する可能性のある不動産鑑定評価額は相続税評価額に用いることができません。

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相続税申告が『鑑定評価額』で計算されるケース

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相続税の申告に用いられる相続税評価額に、不動産鑑定評価額を利用することは基本的に不可能です。

しかし、一定の条件を満たす不動産については、財産評価基本通達ではなく鑑定評価額で計算することができます。

これは、土地の汚染や不整形地のため、路線価が時価より高くなってしまうなど、財産評価基本通達では対応しきれない場合が対象です。

このような場合には、不動産鑑定士に依頼して作成した鑑定評価額を用いて相続税の申告を行うことができます。

財産評価基本通達による税額に疑問がある場合

相続税は納税者が申告してから納税が行われる税金ですが、申告された税額が正しいものかどうかについては、申告後税務署による調査が行われます。

この時、申請額と調査額に差異があれば修正申告を行うよう勧奨が行われ、調査額の方が多ければ追加納付を行わなければなりません。

税務署の調査では財産評価基本通達をもとにして税額を計算するため、不動産の時価によっては本来の価格ではない相続税評価額が用いられてしまう場合があるのです。

このような場合に行うのが不服申し立てで、財産評価基本通達より時価が低いことを証明するために、不動産鑑定士が作成した不動産鑑定評価書が用いられます。

不服申し立ての場合、あくまで不動産鑑定評価書は不動産価格の参考として用いられるのですが、不動産鑑定評価書は公的な証明として用いることができる書類です。

そのため、不動産鑑定評価書に記載されている評価額がそのまま適正な相続税評価額の目安として利用されることも多くあります。

相続した不動産を売却した際の税金の納付方法

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不動産を相続し、売却して利益を得た場合、どうやって税金を納めるのでしょうか?

売却益については、所得税として扱われるため、まずは売却した翌年の確定申告を行い、同時に、確定申告書で計算して算出した税金を納付書を用いて金融機関から納めます。

また、税金の納付については、あらかじめ申請しておくことで金融機関から口座引落しを行うこともできますし、インターネットバンキングで納めることも可能です。

その他にも、クレジットカードの利用も可能となっていますので、手持ちの現金や支払額、スケジュール等に合わせて納付方法を選ぶと良いでしょう。

所得税の納付については、原則として確定申告の受付期間中に納めなければなりません。

しかし、財政上の都合で期間内に納められなかった場合、納めるのが難しいという場合には、納付期限を延長することもできます。

この制度は「延納」といい、納付しなければならない税額の半額を納めることで5月31日まで納付期限を延長可能です。

ただ、延納を行う場合については、未納付分の税金に対して年1.6%の利子税が課せられてしまいます。

相続によって多額の税金を納付する場合、1.6%の利子でも大きな金額となってしまいますので、できる限り早めに税金を納めるようにしましょう。

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不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?

ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。

正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。

そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!

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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!

この記事の監修者プロフィール

【監修者】株式会社worth style home 濵田昭平

株式会社worth style home

濵田昭平

2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。

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