2024年01月22日更新

監修記事

任意売却における売買契約書の注意ポイント!

任意売却物件とはどのような物件のことなのか?

任意売却物件は購入してもらえる?売却時のトラブル回避のために知っておきたいこととは

任意売却物件とは、ローンの返済が滞ったり、返済が不可能になったりした物件を、債権者の同意のもとで債務者が売りに出している状態の物件のことです。

ローン残債が残っている物件は、抵当権が設定されているため、売買を行うためにはローン元の金融機関や保証人の同意が必要となります。

また、任意売却は、複数の債権者が存在する場合、全ての債権者が同意しなければ物件を売却することができません。

つまり、売買契約を結んでいても、万が一、債権者からの同意を得られない場合、売買契約が白紙解除される、契約文言などに明記していない場合は大きなトラブルとなってしまいます。

債権者が1社のみの場合は同意が反故にされる可能性はほとんどありませんが、複数の債権者が存在し、かつ任意売却で債権を賄いきれないような場合には、引き渡しまでに白紙解除があり得ると考えておいた方が良いでしょう。

その他のリスクとしては、手付金支払後に売主が夜逃げしてしまい、買主が手付金の回収も物件の入手もできないということがあります。

通常の不動産取引では契約時に手付金を納めるのが一般的ですが、このようなリスクを鑑み、任意売却物件では手付金を渡さないことが多いようです。

任意売却物件の購入にはどのような利点があるのか

任意売却物件を購入する場合、どのようなメリットが考えられるのでしょうか?

競売や通常の物件との違いを見てみましょう。

比較的安価に物件を購入できる可能性がある

任意売却物件では、物件の売却益によってローン残債を処理するため、できるだけ早い段階で買い手を見つけなければなりません。

そのため、通常の物件に比べて価格が割安に設定される可能性が高く、相場よりやや安価に物件を購入できる場合があります。

内覧によって物件の状態を確かめることができる

競売にかけられている物件では、裁判所が公開している情報しか確認することができず、周辺環境については調査が可能ですが、実際に建物内部を確認する内覧を行うことができません。

任意売却物件の場合は、通常の不動産売買とほぼ同じ流れで契約を進めていくため、契約前に内覧を行うことができ、物件内部の状態をあらかじめ確認した上で購入するかどうかを判断することができます。

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任意売却物件はどのようなリスクがともなうのか

任意売却物件を購入する場合、買主にはどのようなリスクが考えられるのでしょうか?

引き渡し前に契約が解除されてしまう可能性がある

任意売却物件では、抵当権が設定されている物件を売却することになるため、売却を行うためには債権者の同意が必要です。

そのため、場合によっては債権者の同意が得られず、白紙撤回となってしまう可能性があります。

白紙撤回とならない場合でも、抵当権を解除するための交渉に時間がかかってしまい、実際の引き渡しや契約の締結まで時間がかかってしまう可能性があるのもリスクと言えるでしょう。

引っ越し費用についても、買主が支払う義務はありませんが、売主側の懐事情などの事情から、引っ越し費用を出せないかお願いされる可能性があります。

もちろん、支払う義務はありませんが、状況次第では支払った方がスムーズに取引できる可能性が高いという点については考慮しておくと良いでしょう。

売買後建物の修繕が必要となる場合がある

任意売却物件では、売主の瑕疵担保責任が免責となっている場合が多く、引き渡し後に買主が自分でリフォームやリノベーションを行わなければならないことがあります。

また、経済的に困窮した状態が続いている売主の場合、建物のメンテナンスを行う余力がない場合が多いため、通常の物件に比べて建物が傷んでいる可能性が高いのもデメリットと言えるでしょう。

任意売却物件は売却時に値引きされるのか

任意売却物件を購入する際に、交渉によって値引きを受けることはできるのでしょうか?

交渉次第で値引きされる可能性もある

基本的に売れなければ債務を回収することができないため、売却益がローン残債より多くなる場合はある程度の値引きが受けられる可能性があります。

しかし、売却益が残債に満たない場合などは値引きによってさらに売主の負担が増大してしまうため、値引き交渉は難しくなるでしょう。

指値を示して交渉することはできる?

値引き交渉の際に価格を指定して交渉することは可能なのでしょうか?

債務より売却益が大きく、債権者に余裕がある場合には可能ではありますが、やはり残債が多い場合についてはいくら交渉しても難しいのが現実です。

価格交渉についてはある程度駄目で元々だという気持ちで考えておくと良いでしょう。

値引きには債権者の同意も必要となる

任意売却物件は売却価格の決定に債権者の同意が必要となるため、通常の売買に比べて値引き交渉の難易度が高くなることが多いようです。

また、任意売却には売却期限が設定されていることが多く、値引き交渉で時間をかけていると同意が得られないまま期限が過ぎてしまい、競売にかけられてしまい、購入が難しくなってしまうこともあります。

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任意売却の売買契約書とは?

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一般的な売買契約との相違

任意売却は、基本的に一般的な売却方法と同じです。

しかしながら、手続き上、一般的な売却と比べ、「売買契約」と「引渡」を同時に行う点で、大きく異なります。

一般的な住宅売買では、まず売買契約を結び、売主は手付金を受領します。

通常、契約から1か月後に引渡となりますが、契約締結後の一定期間、当事者双方から解除を行うことが可能です。

その際は手付金が違約金の機能を果たしますが、任意売却では、売買契約と引渡を同時に行うことで、手付金と契約解除を排除します。

売主の経済的事情を考慮した特約

任意売却では、金融機関など債権者が資金を回収することを目的として売却を行うため、契約後の契約解除といった状況を避ける必要があります。

任意売却の売買契約書の場合、一般の不動産売買契約書と異なり、物件所有者である売主が、債務超過状態にあることが前提になります。

債務超過状態にある売主は、トラブルが発生した場合でも補償することが困難です。

このため、購入後に突発的な問題が生じてしまった場合、買主が責任と負担を負うことになるというリスクを抱えています。

このため、任意売却の契約書においては、売主の経済状況が考慮され、金融機関や買主などの利害関係者が不利にならないような特約が盛り込まれます。

任意売却における売買契約書のポイント

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任意売却の売買契約書ならではの特約

任意売却は、通常の不動産売買とは異なります。

売主には責任を取る経済的余裕がないことに加え、利害関係者も多く、決済当日までに問題が発生しやすいというリスクを抱えています。

このため、任意売却では、利害関係者である売主、買主及び住宅ローンの債権者が、問題が発生した場合でも責任を負わないことを、売買契約書において特約として明確にすることが重要となります。

契約書に盛り込むべき特約

任意売却の売買契約書では、「一括決済を行うこと」、「違約金を負担しないこと」、「瑕疵担保責任を負わないこと」、「売買契約の白紙解約条項を設けること」、「公簿売買規定の責任を負わないこと」について、特約として盛り込むのが一般的です。

一括決済を行う

任意売却では、手付金を受け取った売主が行方不明になる場合、利害関係者の一方的な都合により契約が解除される場合など、決済までに様々なリスクが潜んでいます。

このため、売買契約の締結と同時に、売買代金をまとめて全額支払う「一括決済」の方法によることを、特約に盛り込みます。

例えば、「同日契約、同日移転・引渡の取引とする」ことや、「一括決済のため、手付、手付解除及び引渡前の滅失・毀損の各条項は適用がない」旨を特約として盛り込みます。

違約金を負担しない

支払日の直前になって、後順位の抵当権設定者から解除料の上積みを要求されたことにより売買が成立しない場合、決済日当日に差押えられ引渡が延期となる場合など、予期せず契約が解除されるリスクも想定されます。

このため、売買契約書には「契約解除となった場合でも、理由の如何を問わず」、「売主買主双方が責任を負わない」旨の特約を付けておく必要があります。

瑕疵担保責任を負わない

売主は、普通の売買契約において、3か月程度の瑕疵担保責任を負うのが一般的ですが、任意売却の場合、購入後に買主が瑕疵を知った場合でも、売主が補修する責任を負うことは事実上、困難です。

無用なトラブルを避けるため、買主に対し、瑕疵担保責任を負えない旨を事前に伝えておき、売買契約書に明記しておくことが重要です。

このため、売却後に買主が、雨漏りや白蟻の被害、主要な部位の腐敗や給排水管の故障などの瑕疵担保責任を理由として契約を解除することを防ぐため、「売主の瑕疵担保責任を免責とする」旨を、特約として盛り込みます。

売買契約の白紙解約条項

債権者である金融機関が抵当権の解除に同意しない、保証人の同意が得られないなどの理由により、抵当権の抹消ができない場合に備え、契約を無条件で白紙解除できる特約を明記する必要があります。

任意売却の場合、債権者である金融機関の同意を得て抵当権を抹消する必要があります。

抵当権の抹消について同意が得られなければ、売主の債務不履行となり売買が成立しません。

この場合、売主は買主から違約金の請求を受ける危険があるため、売買契約を無条件で解約できる旨の特約を付けておきます。

例えば、「万が一債権者の同意が得られず、引渡の日までに物件に設定された抵当権を抹消できなかった場合、本契約は白紙解約とする」といった特約を盛り込みます。

公簿売買規定の責任を負わない

実測売買の場合、測量した面積と売買契約時の登記簿に記載されている面積に相違があれば、過不足を精算することになります。

一方、登記簿に記載されている面積に基づく公簿売買の場合、契約後に精算を行う必要がありません。

任意売却では、後から売買代金が変更されることを防ぐため、公募売買の取引とし「登記簿による売買であり、実測面積と相違しても、売主買主双方とも異議を申し立てない」旨を、特約として売買契約書に明記します。

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不動産投資用に任意売却物件を購入する際のポイントについて

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それでは、任意売却物件は、どのようにすれば購入できるのでしょうか。そのポイントを探る前に、まずは、任意売却物件を購入するメリットとデメリットを見てみましょう

不動産投資用に任意売却物件を購入するメリット

任意売却物件の購入については、なにより一般の物件よりも安く手に入るのがメリットです。売主側も、売り急いでいる状況にありますから、一般価格よりも安いことを承知で交渉に応じてくれるのです。

安く購入できることで、不動産投資の効果が上がることは、数字にも表れます。
不動産投資に対するリターンを表す指標として利回りというものがあります。

利回りは「満室時の一年間の家賃収入/購入価格」により算出され、数字が大きいほどリターンが大きいことになります。

つまり、任意売却物件は、購入価格を安く抑えることができるので、高利回りになるということなのです。

また任意売却では、競売物件でよく問題になる、居住者の居座りや、大量ごみの残留といったトラブルが想定される物件は出回りません。

こうしたトラブルが予測される物件は、金融機関としても、競売手続を進めて淡々と処理した方がリスクの回避ができるため、任意売却に同意しないのです。

任意売却では、事前に内覧ができることからも、そうしたリスクの予兆をチェックすることも可能です。そうした点も、任意売却のメリットといえるでしょう。

物件売却者とリースバックで賃貸契約が行える可能性がある点も、メリットといえます。リースバックとは、任意売却をした前所有者が、引き続き賃貸人として同じ家に住み続ける不動産取引です。

これにより、新たに賃貸人を探す手間が省けるうえに、長期的な居住が見込めます。さらには、前所有者に将来的に買い戻す意思があれば、収支面でプラスになる可能性が非常に高くなります。

不動産投資用に任意売却物件を購入するデメリット

いっぽうで、通常の不動産売買であれば、売主と買主が合意すれば売買が成立しますが、任意売却物件の場合は、債権者の同意が必要になります。購入金額の折衝については、売主よりもむしろ債権者の思惑が鍵を握っています。

このように、売主以外に交渉相手が存在する点が任意売却のデメリットだといえるでしょう。しかも債権者の立場上、債権額よりも安くする値引きは基本的に不可能です。

さらに、任意売却には、瑕疵担保責任がありません。購入後に重大な欠陥が見つかったとしても、それは自己責任で修繕をすることになるのです。そのリスクを含めて購入しないといけない点もデメリットです。

また債務者は、これまでよりも規模の小さい住居に住むことが多く、置き場のない家具や電気製品などの残留物が、住居内に放置されたままの状態の物件もあります。

これらの残留物は「残留物の処分は買主に一任します」と売買契約書の中に盛り込んだうえで、自費で処分することになるのが一般的です。

通常の売却物件よりも懸念点が多い点がデメリットであるといえます。そのデメリットを上回る安さかどうかを気にしながら慎重に任意売却の物件は購入する必要があります。

任意売却物件の購入希望者はどうやって見つけるのか?

任意売却物件は購入してもらえる?売却時のトラブル回避のために知っておきたいこととは

任意売却物件を売却する場合、どのようにして仲介業者は購入希望者を探しているのでしょうか?

任意売却物件を狙って探すことは難しい

競売の場合は新聞や公報などで競売情報が公示されるため、物件の情報は比較的簡単に手に入ります。

しかし、任意売却物件は一般的な物件と同様に不動産取引ネットワーク(レインズ)に登録されるため、買主からは判断が付かないことが多いのです。

物件について問い合わせた際にはじめて任意売却物件だと判明することも多いため、最初から任意売却物件を狙って探すことは難しいと言えます。

不動産会社に任意売却物件を探してもらうことはできる?

任意売却物件の特徴は、通常の不動産取引と同様に売買が行われることです。

そのため、重要事項説明でも任意売却物件かどうかは記載されていません。

もちろん、瑕疵担保責任がなく、相場に比べて比較的安価な物件であるなどの特徴から任意売却物件かもしれないと想定することは可能ですが、確実とは言えないのです。

ただし、不動産会社が任意売却の代行を行っている場合などは、自社で任意売却物件に関する情報を保有しているため、任意売却物件を狙って購入することができる場合もあります。

任意売却専門の不動産屋から購入できる?

任意売却の一番のメリットは、競売よりも高い値段で売却できる可能性があるという点です。

資金難が理由で任意売却にて売却活動をしていることを知られたくない場合は注意が必要です。

任意売却を専門で行っている不動産会社でも、インターネットや広告などでは通常の物件と同じように掲載してすることがほとんどです。

そのため、周囲の方々に知られたくない場合、不動産業者による物件買取の選択肢もありますが、若干売却価格が下がります。残債状況を鑑みて、その後の生活に無理のない選択肢をとることをおすすめします。

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不動産売却に対応する優良な不動産会社を見つけるには?

ここまで説明してきた不動産売却は、あくまで一例となっています。

正確な売却金額を知るためには、売却前に「売却査定」を受ける必要があります。

そのとき大事なのが、複数社に査定依頼して必ず「比較検討」をするということ!

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一生のうちに不動産売却をする機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない売却をするためにも、不動産会社選びは慎重に行いましょう!

この記事の監修者プロフィール

【監修者】株式会社worth style home 濵田昭平

株式会社worth style home

濵田昭平

2005年より東京急行電鉄株式会社財務戦略室主計部にて都市開発における多様な事業セグメントの業務を経験。2012年1月より都心部で高級マンション賃貸仲介業を展開する株式会社ModernStandardへ転職し、賃貸仲介営業職での最短トップ記録樹立。2014年1月より「株式会社worth style home」での総合不動産業をスタート。1,000万円~10億のマンション・土地等の売買仲介業務を行う。

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