2023年12月22日更新

監修記事

【地震に強い家の工法と構造】耐震等級についても解説

住宅を建てる際に重要な耐震基準と耐震住宅とは

耐震 住宅

2011年に発生した東日本大震災以降、全国的に地震に対する防災意識が高まってきています。

住宅の建築においても地震に強い家という言葉を耳にすることがありますが、建物が地震による被害を受けにくくするための方法としては耐震、免震、制震の3つの方法があります。

その中でも「耐震」というのは壁や柱を強化し建物全体の強度を高めることによって、建物が地震の揺れに耐えることができるようにすることを言います。

耐震性が高い住宅のことを耐震住宅と呼びますが、耐震性の強さについては建築基準法で定められた基準が存在します。

建築基準法では住宅がどの程度の強さの地震に耐えうるかによって、耐震基準というものを定めています。

この耐震基準を満たした住宅だけが耐震住宅であると言うことができるのです。

耐震基準は1981年に大きな改正が行われており、改正前のものは旧耐震基準、改正後のものは新耐震基準と呼ばれています。

現在適用される基準は新耐震基準で、新築住宅だけでなく既存の住宅に対しても新耐震基準が適用されます。

新耐震基準の主な内容としては次の2点があります。

1点目は、震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないことです。

そして2点目は、震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないことが挙げられます。

旧耐震基準では震度6以上の大規模な震災についての記述はなく、基準を満たしている場合でも大地震が発生すれば倒壊・崩落の恐れがありました。

また、震度5程度の地震が発生した場合には部分的には損傷を受けるだろうという前提での基準となっていました。

しかし改正後は、新耐震基準を満たしている住宅であれば震度5程度の地震ではほとんど損傷を受けず、震度6~7の大きな震災に対しても耐えることができるよう、より厳しい基準となっています。

耐震住宅にはどのようなメリットとデメリットがあるのか?

耐震住宅は揺れに強いというメリットがある反面、デメリットも存在します。

ここでは耐震住宅のメリット・デメリットについて紹介します。

耐震住宅のメリット

1つ目のメリットは耐震住宅は地震対策として特別な費用を必要としないという点です。

現在建築される住宅は建築基準法により耐震基準を満たすことが義務付けられているため、特別な耐震工事や費用を必要とせず建物の本体価格のみで耐震住宅を建てることができます。

2つ目のメリットとしては耐震住宅は揺れに強い構造となるため、地震だけでなく台風などの強風にも強くなるという点です。

他にも、耐震基準を満たしていれば地震保険の加入料が安くなるといったメリットも存在します。

耐震住宅のデメリット

耐震住宅にはデメリットも存在します。

耐震住宅は建物の構造上、地震の揺れをそのまま受け止めて耐えるという造りになっています。

そのため、建物の倒壊は防ぐことができても屋内の家具等は転倒する恐れがあるため対策が必要となります。

耐震住宅は揺れによる倒壊には強いのですが、建物に損傷を受ける可能性はあります。

度重なる揺れによってひび割れが発生する等、ダメージが蓄積されて住宅の劣化を早めてしまうかもしれません。

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地震に強い家づくりの目安になる耐震性と対策とは

地震 に 強い 家 工法

地震に強い家づくりを目指す場合、強さの目安となるのが耐震性能です。

耐震性能は建築基準法で定められた基準を基に、品確法によって3段階の等級が定められています。

また地震への対策は耐震性能の強化ばかりでなく、地震そのものの影響を軽減させる対策法があります。

それぞれどのような考えに基づいて、地震に強い家づくりをしているのでしょうか。

耐震性に関する法律

耐震性能については、建築基準法で細かく定められています。

RC造(鉄筋コンクリート造)や鉄骨造については、1981年に新耐震基準が施行されました。

新耐震基準においては、震度6強~7の地震が起きても倒壊しない構造基準が設定されています。

木造においても、地震の際に柱が土台から抜けないようにするホールダウン金物の設置が平成12年に義務付けられるなど、段階的に強化が図られてきました。

現在では、従前からある壁量計算に加えて、構造壁をバランスよく配置する基準も設けられています。

これらの規制によって、現在建築されているものは基本的には地震で倒壊しない家づくりがされています。

しかしどの工法を選択するかによって、耐震性能ばかりか価格にも差異が生じてきます。

このため、まずは、どのような選択肢があるのかを知ることが、納得のいく地震に強い家づくりにつながるのです。

耐震性に関する構造

耐震性を維持するためには、いくつかの方法があります。それぞれどのような考え方に基づいているのかみていきましょう。

耐震構造

耐震構造は建物自体を頑丈にすることで地震に対応しようとする考え方です。

建築基準法においては、基本的にこの耐震構造に関する基準について定められています。

建物を強固にしているので、崩壊は防げるものの、揺れを抑える効果がないために、内部の家具などが転倒してしまうことがあります。

耐震構造は耐震基準を満たす上で必須のものなので、費用が特別に付加されるものではありません。

耐震構造に関する費用は、工事費の中に含まれていると考えた方がいいでしょう。

制振構造

制振構造は梁にダンパーを取り付けることで、地震のエネルギーを吸収しようとするものです。

制振構造にするためには、耐震構造の建物に装置を取り付ける必要があるので、費用は約50万円追加されます。

免震構造

免震構造は、建物と地盤の間に積層ゴムを用いた装置を設置することで、建物自体の揺れを軽減する構造です。

地震時の揺れを3分の1から5分の1に軽減できるので、家具の転倒も少なく 室内での被害を最小限にとどめることができます。

免震装置の取り付けにかかる費用は、200万~300万円です。

また性能を維持するためには数年ごとの定期点検が必要で、1回につき3万~5万円のメンテナンス料が必要になります。

家の構造の種類

家を建てるときの構造は、木造が最も一般的ですが、この他にも鉄骨造やRC造で建てることもできます。

また構造別にいろいろな工法があるため、選択肢は実に幅広いものになります。

それぞれの構造や工法を知ることで、地震に強い家をどんな方法で建てるのかという選択が可能になるのです。

まずは家を建てる場合のそれぞれの構造の特徴からみていきましょう。

木造住宅

木造住宅は最もコストを抑えて住宅を建てることができます。

耐震性も現在の基準であれば震度6強~7までであれば倒壊を免れるので安心して住むことができます。

ただし鉄骨造やRC造に比べると耐震性能が劣るため、想定外の規模の地震がきた際の不安はあります。また地震に起因した火災に弱いというデメリットがあります。

鉄骨住宅

鉄骨住宅は、鉄骨で住宅の基本となるフレームを組み立てます。

耐震性に優れた住宅を建築することができます。

デメリットとしては、木造に比べてコストが高くなる点が挙げられます。

RC住宅

RC住宅は、鉄筋コンクリートによって構造体を作り上げる構造の住宅です。

地震や火災に強いのが大きなメリットです。

デメリットとしては、木造や鉄骨造に比べてコストが高くなる点が挙げられます。

地震に強い家づくりをするために知っておきたい木造の工法

現在家の建築で最も多く採用されているのが木造です。木造の中でもいくつかの工法に分類することができます。

それぞれどのような特徴があるのかみていきましょう。

2×4工法

2×4(ツーバイフォー)工法は、正式には「枠組壁工法」と呼ばれる木造の工法です。

2インチ×4インチの木材で作った枠組に合板を貼ったパネルで住宅を築き上げていきます。

壁、床、天井の六面を一体化させているために、地震力を分散させることができます。

これまでのいくつかの大地震においても、倒壊を免れた実績が多く報告されています。

メリットは耐震性が高いことの他に比較的経験の浅い大工でも組み立てられる点が挙げられます。

デメリットは、リフォームには不向きであることです。

木造軸組工法

木造軸組工法とは、柱、梁、土台の軸組で構成される工法です。

さらにいくつかの工法があるので、それぞれの特徴をみていきましょう。

木造軸組工法

木造軸組工法は、柱、土台、梁の軸組がほぞとほぞ穴による仕口で組み立てられる伝統的な工法です。

古くから日本で用いられていることから在来工法とも呼ばれています。

このため木造軸組工法を手掛ける大工は多く、どんな地方でも比較的容易に建築を請負ってくれる施工会社を見つけ出すことができます。

また増築やリフォームも自由度が高いのが大きなメリットです。

地震に対しては、構造合板や筋交いによって耐震性が保たれます。

震度6強~7の地震でも崩壊しませんが、これ以上の想定外の大地震がきた場合には、崩壊するおそれがあります。

金物工法

在来工法は仕口箇所を木材の断面を欠いて組み立てるため、各コーナーが弱点になるとされています。

この弱点を補うのが金物工法です。

柱や梁の取り合いは、専用の金物に木材をはめ込むことで組み立てられるので、ほとんど断面欠損が生じません。

このため在来工法に比べて耐震性の高い建物に仕上がります。

デメリットはコストが在来工法に比べて高くなる点です。

工事費が高くなるのをはじめ、運搬費も金物付きの木材を運ぶために非効率になりコストアップします。

さらに、在来工法では安易な壁量計算で設計できるのに対して金物工法では構造計算が必要になるため、このコスト分も高くなります。

木造ラーメン工法

木造ラーメン工法とは、木造をラーメン構造によって組み上げる工法です。

ラーメン構造の代表的なものがRC造ですが、木造ラーメン構造においても柱と梁を金物やビスによって強固に緊結します。

在来工法のように構造合板や間柱を必要としないために、木造でありながら室内に広い空間を確保することや二階がせり出したオーバーハングの建物を実現することができます。

地震に対しては、構造計算によって構造材の仕様を決定していくことなどから、非常に耐震性の高い住宅を建築することができます。

デメリットとしては、他の木造工法と比べて費用が高くつく点と工法が特殊なため実際に施工してくれる会社が見つかりづらい点です。

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地震に強い家づくりをするために知っておきたい鉄骨の工法

地震 に 強い 家 工法

鉄骨で家を建築する場合のポイントを押さえていきましょう。

軽量鉄骨工法

厚さが6ミリメートル未満の鋼材が「軽量鉄骨」です。軽量鉄骨はハウスメーカーが工場でフレームを製作するプレハブ建物で用いるのが一般的です。

在来工法と比べて工期が短いことや地震に強い点がメリットとして挙げられます。

デメリットは、プレハブで用いられるためプランの自由度が低いことと、工事費が木造住宅よりも高くなる点です。

重量鉄骨工法

鉄骨をラーメン構造で組み上げるために、地震に強い建物になります。

三階建て以上の規模の大きい住宅を建てる場合に適しています。

自由設計も可能なため、比較的大きな空間を築くことができます。

デメリットとしては、工事費が木造に比べて高くなることと長時間の火災に遭うと鉄骨が脆弱になることです。

地震に強い家づくりをするために知っておきたいRCの工法

鉄筋コンクリート造で地震に強い家づくりをするために知っておきたいポイントを押さえていきましょう。

RC工法

RC工法は現場で鉄筋を組み上げて型枠の中にコンクリートを流し込むことで建物を建築していく工法です。

耐震性が高く、設計の自由度が高い点がメリットです。

デメリットとしては、工事費が高くなってしまうことと、工期が長くなってしまうことです。

PC工法

PC(プレキャスト)工法は、工場で形成した床や壁などのコンクリート版を現場で繋ぎ合わせていく工法です。

現場打ちのコンクリートの場合コンクリートの打設が天候に左右されることがありますが、PC工法は工場で製作するので工期がずれることがありません。

また現場で打設するコンクリートは品質管理の点でも課題がありますが、PC工法では整った管理下で製作されるため、安定した製品を製造することができます。

地震に対する強度はとても高く安心して住むことができますが、工事費が高い点がデメリットです。

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地震に強い家づくりの工法に加えて耐震等級とは

地震に対する強さを示す指標として、耐震等級があります。耐震等級とは住宅品質確保促進法(品確法)に基づき住宅の耐震性能をランク付けした等級のことです。

等級は1~3までの3段階あります。それぞれの基準は次のように定められています。

耐震等級1

耐震等級の中で最も基準の低い等級がこの耐震等級1です。

低いといっても、耐震等級1は建築基準法で定められている耐震性能を満たす水準となっており、震度6強から震度7の地震でも倒壊や崩壊しないことが求められます。

また、震度5程度の地震では住宅が損傷しないことも要件として定められています。

耐震等級2

耐震等級2は耐震等級1で想定されている地震よりも1.25倍強い地震が発生した場合でも耐えることができる程度とされています。

耐震等級2は耐震等級1よりも地震に強いと言えますが、それだけではなくローンや税制優遇を受ける際にも便利な点があります。

住宅を新築する際にはローンを組んだり税制優遇を受けることがあるでしょう。

この時、住宅が長期優良住宅であればローンの借り入れ条件が良くなったり、税制面での優遇措置を受けやすくなります。

長期優良住宅とは長期間に渡って良好な状態で建物を利用し続けることができるような措置が施された優良な住宅のことを言います。

長期優良住宅として認定されるためには、バリアフリー性や省エネルギー性といった様々な基準を満たさなければなりません。

その基準の中に耐震性についても定められており、耐震性については耐震等級2以上であることが求められています。

耐震等級3

耐震等級3は耐震等級1で想定されている地震よりも1.5倍強い地震が発生した場合でも耐えることができる程度とされています。

耐震等級の中でも最も厳しい基準をクリアした建物だけが耐震等級3と認定されます。

防災の拠点となっている消防署や警察署などの建物は耐震等級3となっています。

どうすれば住宅の耐震等級をあげられるのか?

耐震 住宅

地震に対する防災意識が高まっている昨今、耐震等級を上げて安心して暮らせる住宅を建てたい考える人も少なくないでしょう。

それでは耐震等級を上げるためには一体どうすれば良いのでしょうか。

分譲住宅の場合は建築業者やハウスメーカーで予め等級が定められているケースもありますが、注文住宅の場合は耐震等級を決めるのは建築会社ではなく施工主です。

希望する等級があるのであれば建築前の打ち合わせの段階で業者へその旨を伝える必要があります。

仮に耐震等級について特に施工主からの指定がない場合、建築基準法で定められた最低限の耐震基準を満たす耐震等級1となるでしょう。

住宅建築の際に補助金を利用したり税制優遇を受けるためには長期優良住宅としての認定が必要となる場合があります。

長期優良住宅の基準を満たす必要がある場合には耐震等級2以上を指定しましょう。

しかし、耐震等級が高くなればなるほど住宅の建築費用は高額となってしまう点には注意が必要です。

耐震性能を上げるために資材のグレードを上げたり、追加の耐震工事を行う場合は工事費も余分にかかります。

まずは本当に耐震等級を上げる必要があるのかどうかについてしっかり検討し、業者に見積もりを作成してもらう前に耐震等級についても相談すると良いでしょう。

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耐震基準を満たして得られる安心の保証!

耐震基準を満たしている住宅は地震に強い家であるということができ、安心して暮らすことができるでしょう。

また、耐震基準を満たしていれば地震に対する安心感だけでなく、様々な恩恵を受けることもできます。

たとえば、耐震等級が2以上であれば長期優良住宅としての認定を受けるための基準を一つクリアしたことになります。

長期優良住宅とは、長期にわたり安心して快適に暮らすための措置が建物の構造や設備に講じられた優良な住宅のことを言います。

長期優良住宅として認定されるためには、耐震性以外にも省エネ性やバリアフリー性などの基準を満たす必要があります。

認定を受けるためには厳しい基準をクリアしなければなりませんが、認定されることによって税制上の優遇措置を受けやすくなります。

住宅ローンの控除額は、年末のローン残債に控除率である0.1を乗じた金額が限度額の範囲内で翌年の所得税から控除されます。

認定を受けていない一般住宅の場合、最初の10年間は年末時点のローン残債について最大4,000万円までの部分が控除額算定の対象となります。

一方、長期優良住宅の認定を受けている場合、最初の10年間に受けられる住宅ローン控除の算定元となる年末時点のローン残債は最大5,000万円が対象となります。

そのため、一般住宅と長期優良住宅がそれぞれ最大限住宅ローン控除を利用した場合、10年間で100万円の差が生じることとなります。

一般の住宅であっても住宅ローン控除を利用することはできますが、長期優良住宅の場合は限度額や最大控除額がより有利になるのです。

他にも耐震基準を満たすことによって受けることのできる恩恵はあります。

住宅を新築する時、稀に住宅が傾いていたり雨漏りが発生したり、また地震による被害を受けてしまうことで瑕疵が見つかることがあります。

このような欠陥が認められた場合に事業者が住宅の購入者に対して責任を負い、補償を行うという制度を性能保証制度といいます。

性能保証制度の内容は耐火性や遮音性など様々なものがありますが、耐震性については1~3の耐震等級が定められています。

国交省によって等級毎に地震に対する強さの基準が定められており、数字が大きいほど建物の構造躯体が強く、耐震性が高いことを示しています。

耐震等級が高ければ、地震保険に加入する際の保険料の割引が適用される等のメリットがあります。

建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?

ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。

注文住宅の設計プランや費用は、施工店によって大きく異なることがあります。

そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!

実際に注文住宅を建てるには時間がかかるので、この記事で大体の予想がついた方は早めに次のステップへ進みましょう!

「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」

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そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。

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一生のうちに注文住宅を建てる機会はそこまで多いものではありません。

後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】下久保彰

2級建築士。建築設計や施工業務を30年以上経験。最近は自営にて各種請負業務を行う。

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