目次
アスベストを使用している建物は解体すべき?
「アスベスト」についてはメディアなどで何度も取り上げられているため、その危険性を認識している方も多いでしょう。
それでは、人体に危害を及ぼすと言われているアスベストが使用された建物は、すぐに解体すべきなのでしょうか。
アスベストに対して必要以上に恐れすぎることなく、適切に対処するためには、まずはアスベストについて知ることが大切です。
そもそもアスベストとは?
「アスベスト」とは「繊維状けい酸塩鉱物」の総称であり、石綿(せきめん、いしわた)とも呼ばれる天然素材のことを言います。
繊維が非常に細かく、断熱性や防音性などに優れているため、かつてはビルなどの建築工事においてアスベストの吹き付けが日常的に行われていました。
しかし、アスベストの危険性が指摘されたことから、1975年には5重量%を超える吹付けアスベストの使用が原則禁止され、現在ではアスベストの製造自体も禁止されています。
アスベストの危険性
アスベストは危険であるという認識を持っているものの、アスベストの危険性について正しく認識している人はそれほど多くはないかもしれません。
実は、アスベストはただそこにあるだけで人体に悪影響を及ぼすというわけではありません。アスベストの細かい繊維が飛び散り、それを人が吸い込んでしまうことが問題です。
アスベストを吸引することによって、肺線維症(じん肺)、肺がん、悪性中皮腫などが引き起こされることがあり、また、これらの症状は約15年~50年という長い月日が経ってから発症することが多いと言われています。
アスベストは繊維が細かいため吸引したことに気づきにくく、また症状が発症するまでの潜伏期間が長いため健康被害に気づきにくいという点も、アスベストが危険であると言われている理由の一つです。
アスベストを使用している建物を放置していると起こりうる問題
アスベストは、アスベストが使用された建物を解体する際に飛散します。しかし、解体時にアスベストが飛散しなければ問題ないかと言うと、実はそうではありません。
アスベストを使用している建物を放置していると、建物の老朽化によってアスベストが剥離したり、建物が破損・倒壊することによってアスベストが飛散する可能性もあるのです。
アスベストは対象建物の住人だけでなく周辺地域の住民にも影響を及ぼすため、アスベストが使用された建物に対しては迅速に適切な処理をする必要があります。
アスベストを使用している可能性のある建物の特徴
アスベスト使用の有無は外観からだけでは判断できないことがあります。実際に、建物を倒壊してみて初めてアスベストの使用が発覚したというケースもあるようです。
ただし、アスベストを使用している可能性のある建物には共通する特徴があります。それは築年数の古さです。
1975年には5重量5%を超えるアスベストの吹き付け作業は禁止されていますが、その後も含有量の低いアスベストの吹き付けや、アスベストを含む建材の使用などは許可されていました。
しかし、アスベストの製造や輸入自体が禁止された2006年に至るまで、複数回に分けてアスベスト使用に関する規制が徐々に厳しくなってきたという経緯があります。
つまり、築年数が浅い建物ほどアスベストが使用されている可能性や使用量が少なく、反対に築年数が古い建物ほどアスベストが使用されている可能性や使用量が多いということができます。
また、一般に鉄骨造の古い建物の柱や梁に耐火被覆の材料として、ひろく用いられてきたことから、鉄骨造の建物については、アスベストを使用している可能性は大きいです。
解体業者が行うべき建物を解体する際のアスベスト対策
アスベストが使用されている建物を解体する場合、その業者は石綿にかかわる環境関係法規を遵守して作業を行わなければなりません。
ここからはアスベストを含む建物の解体時にどのような対策が取られるのかについて見ていきましょう。
解体する建物がアスベストを使用しているかどうかの確認
まずは解体する建物にアスベストが使用されているかどうかを確認する必要があります。
たとえば、設計図書等で建物の竣工年を確認すれば、吹き付け作業が行われた年代が特定でき、アスベスト使用の有無等予想することができます。
また、図面などを入手することができれば建材の商品名を確認することができるため、アスベスト含有建材が使用されているかどうかを判断することができるでしょう。
アスベストを使用している建物の解体時にすべき届出
アスベストを使用している建物の解体時に必要な届出は、アスベスト撤去工事の危険性レベルによって異なります。
まず最も危険性が高く、発塵性が非常に高いとされるレベル1の場合、施工業者は工事開始の14日前までに都道府県知事に届出をする必要があります。
必要な届出は次の4種類があります。
- 工事計画届
- 建築物解体等作業届
- 特定粉じん排出等作業届書
- 建設リサイクル法の事前届
次に危険性の高い、発塵性が高いとされるレベル2の場合、工事の施工者は工事開始の14日前までに、管轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。
必要な届出は次の3種類があります。
- 建築物解体等作業届
- 特定粉じん排出等作業届書
- 建設リサイクル法の事前届
発塵性が比較的低いとされるレベル3の場合はアスベスト除去工事に関しては特に届出は必要ありません。
アスベストが使用されていない建物の解体工事の場合と同様に、建設リサイクル法の事前届などを提出すればよいとされています。
最も危険なアスベスト含有吹付け材の処理作業で行う対策
アスベストの中でも最も危険性の高いとされているのが、壁や天井に直接アスベストが吹き付けられた、アスベスト含有吹付け材の処理作業です。
含有されているアスベストの濃度が高い場合が多く、撤去時に大量の粉塵が飛散する可能性があるため、危険性が高いとされています。
このような作業時には、薬液を使った飛散防止の封じ込め工法や、板状の材料などで密閉する囲い込み工法によってアスベストの飛散を防止する策がとられます。
また、作業場の清掃を徹底することはもちろん、前室や集塵機などを設置して、作業服等に付着したアスベストを外に持ち出さないような対策も取られます。
アスベスト含有の保温材や断熱材の処理作業で行う対策
保温材や断熱材としてアスベストが使用されている建材を撤去する際には、レベル1に準じた封じ込め対策が必要です。
アスベスト含有吹付け材の撤去よりも危険性は低いとされていますが、アスベストが飛散する可能性はゼロではありません。建材を湿らせるなどしてアスベストが飛散しにくくする湿潤化作業も行われます。
成形板などのアスベスト含有建材の処理作業で行う対策
成形板のようなアスベスト含有建材の処理作業は危険性が低いため、先に紹介した2つとは異なり事前の届出も不要です。
近隣への周知や、建材を湿潤化させて飛散しにくくする対策は必須ですが、前室設置などの封じ込め対策は不要とされています。
近隣で建物の解体工事をしている場合のアスベスト対策
近隣で建物の解体工事をしている場合、もしアスベストが使用されているのであれば健康被害が生じるのではと、不安になる方もいるでしょう。このような場合には、次のような対策を取るとよいでしょう。
解体工事の現場責任者にアスベストの有無を確認する
解体中の建物にアスベストが使用されているか否かによって必要な対策も変わってきます。
まずは解体中の建物にアスベストが使用されているかどうかを確認しましょう。
解体する建物についてアスベスト含有調査を行った場合には、その結果を公衆が見えやすい場所に掲示しなければなりません。そのため、解体現場付近の掲示物を確認することで、アスベストの有無を確認することができるでしょう。
自分が住んでいる市町村の環境課へ相談する
しっかりとした解体業者であれば、アスベスト撤去前に自治体の窓口へ届出を提出しているはずです。
近隣に解体現場があり、アスベストによる被害が心配な場合はお住まいの市町村の環境課へ相談してみるのも一つの手段です。どのような対策をとればよいかアドバイスをもらうことができるでしょう。
工事期間中は洗濯物を外に干さない・窓を開けない
アスベストが使用された建物を除去・撤去する際はアスベストが飛散しないよう、十分な封じ込め対策が取られています。
しかし、万が一アスベストが飛散してしまう可能性が心配な場合には、工事期間中は洗濯物を外に干さず、窓も開けないなどの対策を行うと良いでしょう。
アスベストを使用している建物の解体工事の流れ
アスベストを使用している建物の解体工事は以下の流れに沿って行われます。ここでは最も危険性の高いとされるレベル1の場合についてご説明します。
各種届出から養生までの準備作業
施工業者は工事が開始される14日前までに工事計画届や特定粉じん排出等作業届書といった各種届出を行わなければなりません。
また、アスベストの撤去工事を行う際は周知の徹底も必要です。近隣住民から見えやすい位置に看板等を設置し、工事の概要や立ち入り禁止の旨やアスベストの有害性などについて掲示する必要があります。
届け出などの事前準備が済んだら、次は工事に向けての足場の設置や養生を行います。
アスベストの撤去工事においては通常の工事で使用する防音壁ではなく、アスベストの細かい繊維を隔離するための養生シートを使用します。養生シートによって外部から解体現場を隔離し、密閉空間においてアスベストの撤去作業を行うことができます。
アスベストの除去工事
作業場の隔離・養生ができたらいよいよアスベストの除去工事を行います。除去作業をする際、作業員は使い捨ての防護服や防塵マスクの着用が義務付けられています。
アスベストが吹き付けられている部分は掻き落とし、アスベスト含有建材は切断や破砕することで除去していきます。
除去したアスベストは後ほど産業廃棄物として処分するため、真空圧縮することで体積を小さくし、できるだけ処分しやすい状態にします。
この時使用する防護服や工具などにも有害物質が付着してしまうため、付着したまま外部へ持ち出してしまうことのないよう、丁寧な除去作業が求められます。
また、工事期間中の現場は毎日清掃して清潔に保たなければなりません。
仮設物などの処理から最終処分場への運搬
解体工事が完了したら作業員の休憩所やトイレ、うがい設備などの仮設物を撤去します。これらの仮設物や養生シートを撤去する際にアスベストが飛散してしまわないよう、丁寧な清掃が求められます。
仮設物の撤去が完了したらアスベストを最終処分場へ運搬します。解体業者が廃棄物処理業者へアスベストの廃棄を依頼する場合、廃棄物処理法により定められている手続きを取る必要があります。
アスベストを野焼きや不法投棄してしまうと有害物質が大気中に広がってしまうため、必ず適切な方法で処分しなければなりません。
アスベストの除去にかかる費用
アスベストの除去にかかる費用についてご説明します。
吹付けアスベスト処理費用の相場
アスベスト除去工事の中でも最も危険性の高いとされる吹き付けアスベストの除去費用については、国土交通省が費用の目安を公表しています。
アスベスト処理面積 | 費用の目安 |
300平方メートル以下 | 2.0万円/平方メートル ~ 8.5万円/平方メートル |
300~1,000平方メートル | 1.5万円/平方メートル ~ 4.5万円/平方メートル |
1,000平方メートル以上 | 1.0万円/平方メートル ~ 3.0万円/平方メートル |
アスベストの処理費用は施工条件などにより大幅な違いがある
アスベストの処理費用は施工条件などにより大幅な違いがあります。
費用を左右する要因として、部屋の広さや天井の高さ、固定器具の有無などが挙げられます。これらの条件によって、撤去作業だけではなく事前準備に要するコストも大きく異なるため、処分費用が違ってくるのです。
アスベストの除去費用に利用できる補助金制度
アスベストの除去工事を行う際、補助金制度を利用できる場合があります。
民間建築物のアスベスト除去などの工事費用には国の補助金制度が利用できる
建築物の吹付けアスベスト等のアスベスト除去、囲い込み、封じ込めについては、国が実施している補助金制度を利用することが可能です。
対象となる建物は吹付けアスベスト等が使用されている建物で、アスベストの除去と建物の解体を同時に行う場合、アスベストの除去に要する費用相当額の補助が受けられます。
補助率はアスベスト除去に要する費用の3分の2以内の額であり、地方公共団体の補助額が設定されている場合はそれを超えない範囲とされています。
リノベーション・フルリフォームの業者選びで後悔しないために
必ず相見積もりを複数取って比較しましょう!
なぜならリフォームの費用・工事方法は、業者によって大きく異なるからです。
とはいえ「信頼できる業者が分からない」「何度も同じ説明をするのが面倒」と踏み出せない方もいらっしゃると思います。
そのような方こそハピすむの一括見積もり比較を活用しましょう!
大手ハウスメーカーから地場の工務店まで、審査を通過した1000社以上の中から、まとめて見積もりを依頼できます。
また、ハピすむでリフォームされた方には最大10万円分の「ハピすむ補助金」もご用意しています。
詳細はこちら>>>ハピすむ補助金プレゼントキャンペーンの流れ