目次
鉄筋コンクリートで建てられた建物の構造と種類
鉄筋コンクリートで建てられた建物は、木造などに比べて耐久性や耐震性、耐火性などに優れています。
引っ張る力に強い鉄筋を、圧縮される力に強いコンクリートに埋め込むことで、強固な構造を生み出しているためです。
しかし、鉄筋コンクリート造といっても、構造や工法にはいくつかの種類があり、それによって解体費用も異なります。
「鉄筋コンクリート造」の主な工法
鉄筋コンクリート造の建物は、鉄筋を中心に組み、外側を合板で囲って型枠を作ったうえで、コンクリートを流し込んで強固な構造を造り上げます。
このような構造を造るには、骨組みで支える「ラーメン構造」と、面で支える「壁式構造」があります。
ラーメン構造
「ラーメン」はドイツ語で額縁を意味するもので、鉄筋コンクリートの柱と梁を、「額縁」のように強固に一体化した骨組みが特徴です。
この骨組みは大きな強度を持ち、重さや揺れに対して変形せず、耐える強さを保ちます。
ラーメン構造で建てた建物は、耐久性や耐火性に優れ、間取りを設計するうえで自由度が高い反面、柱や梁が室内に露出していることが特徴です。
壁式構造
骨組みで支えるラーメン構造に対し、壁面と床面全体で建物を支える構造が「壁式構造」です。
強度の高い壁や床が、「箱」のように面全体で建物を支えています。
壁で支える「壁式構造」で建てた建物は、柱や梁の凹凸がなく、すっきりして広く感じる反面、増改築の際に、壁の強度を失わせるような変更が難しいというデメリットがあります。
ただし、高層になると、ラーメン構造に比べて強度が劣ることから、主に5階建て以下の建物に用いられる工法です。
「鉄骨鉄筋コンクリート造」の種類
大規模な建物の場合は、さらに強度を持たせるために、柱や梁の中心に鉄骨を使う「鉄骨鉄筋コンクリート」構造が用いられます。
鉄骨の柱に鉄筋を組み、コンクリートで固めて、強靭な骨組みを造ります。
鉄骨は強度が高いため、鉄筋コンクリートと併用すれば、少ない柱で建物を建てることが可能になります。
柱が減れば、屋内設計の自由度を高めることができます。
また、鉄骨は変形に対応する力が強く、地震などによる揺れのエネルギーを吸収できる粘り強さがあるため、高層建物の建築に利用されます。
ただし、建設コストが高いため、一般的に中低層の建物ではあまり使用されません。
鉄骨には重量鉄骨と軽量鉄骨の2種類あり、鉄骨の厚さ4㎜以下のものが「軽量鉄骨」で、厚さ6mm以上が「重量鉄骨」です。
重量鉄骨造は主に高層マンションやビルなど、大規模建築物をつくる際に用いられます。
建物の構造による解体費用の傾向
解体にかかる費用は、取壊し費用と廃棄物の処理費用がかなりの割合を占めているため、取り壊しに手間がかかり、廃棄物が多いほど、費用が高くなる傾向があります。
木造の建物は、主に木材を用いて作られるため軽量で、木材自体が柔らかく解体がしやすい構造です。
これに対して、「鉄筋コンクリート」や「鉄骨鉄筋コンクリート」の建物は、強度を持たせるために鉄骨や鉄筋、コンクリートを使って強固に造られます。
逆に言えば、強固で頑丈なほど、解体しにくいことになります。
また、これらの工法で造った建物は、鉄筋や鉄骨、コンクリートなど複数の材料が使われているため、木造と比べて廃棄物の種類が多く、重量が重い上に容量も大きくなります。
したがって、「鉄筋コンクリート」や「鉄骨鉄筋コンクリート」の建物は、木造に比べて解体費用が高くなる傾向にあるのです。
鉄筋コンクリート造の解体にかかる費用相場
鉄筋コンクリートの解体は、建物の種類や構造、敷地や周囲の状況などによって解体の方法や工法も異なるため、解体の費用は一件ごとに異なります。
鉄筋コンクリート造の解体費用の相場をまとめてみると、坪当たりの単価は約3万円〜約8万円程度が一般的でしょう。
ただし、延床面積が小さいほど割高になる傾向があるほか、解体方法、何階建てか、重機が使えるかどうか、地下室があるかどうかなどによっても、費用は大きく異なります。
また、近隣や交通への影響を抑えるためのコストや、人件費、廃材の処分費用などは、都市部にある建物の方が割高になる傾向にあります。
鉄筋コンクリート造の解体工事でとられる主な工法とは
海外ではビルを爆破する解体方法も見かけますが、現在の日本では、騒音や安全、環境などに配慮した解体工法が採られています。
また、解体に伴う廃材処理についても、厳しい基準や処理方法が定められています。
鉄筋コンクリート造の建物の解体方法
鉄筋コンクリートで建てられた建物を解体する方法は、大別して「階上解体」と「地上解体」に分けられます。
階上解体は、重機を大型クレーンによって屋上に上げ、上から下へと解体していく方法です。
これに対して、地上解体は、地上に大型の重機を置き、上から下へと解体していく方法です。
このほか、これらの方法を組み合わせたような、階ごとにブロックにして吊り下す「ブロック解体」、下の階からだるま落としのように崩す「だるま落とし式解体」などがあります。
このように、解体方法には様々あり、建物や周囲の状況などを含めて現地調査を行った上で、実態の建築物に最も適した解体方法が採られることになります。
主な解体工法
建物自体を解体する際の工法としては、主に「圧砕機工法」「ブレーカー工法」「転倒工法」が採られています。
以下では、こられの解体工法についてご紹介します。
圧砕機工法
解体用機械の圧砕力を利用する解体方法が「圧砕機工法」です。コンクリートの解体工事では、最も適用事例が多いとともに、汎用性が高い技術です。
「圧搾機」は、ショベルカーなどの重機の先に油圧式のアタッチメントを取り付け、ハサミのような形をした刃先で、鉄筋コンクリートを嚙み砕いて解体する機械です。
圧砕機には、巨大なハサミの形をした2枚の歯でコンクリートや鉄筋を掴んで圧砕する「大割機」、大割機で圧砕したコンクリートをさらに細かく砕く「小割機」の2種類があり、状況に合わせて使い分けます。
この工法のメリットは、騒音や振動が比較的少なく、鉄筋や鉄骨入りのコンクリートを、能率良く切断・圧砕できることにあります。
ブレーカー工法
この工法は、機械による打撃力でコンクリートを細かく破砕する技術です。「ブレーカー」には2種類あり、「ハンドブレーカー」と「大型ブレーカー」に分類されます。
どちらも先端の「ノミ」と呼ばれる杭を、コンクリートに当てて激しく動かすことで打撃を与え、破砕します。
ハンマーを、高速で繰り返しコンクリートに当てて粉砕するようなイメージです。
「ハンドブレーカー」は、全長約70cm、重量約20kgが一般的な大きさで、人が持ち運ぶことができるコンパクトなサイズの打撃用機械です。
そのため、重機が入れないような狭い場所でも、解体作業を行うことができます。
一方、「大型ブレーカー」は、ハンドブレーカーの大型タイプで、重機の先端に取り付けてコンクリートを打撃して粉砕します。
部分的な解体や、圧搾機などが使用できないような狭い場所での解体作業で使用されます。
ただし、ブレーカーを使用する際は、騒音や大量の粉塵の発生するデメリットがあり、防音や防塵設備の設置が必要なケースもあります。
転倒工法
この工法は、高い外壁や柱、煙突などを解体する技術で、解体時に粉塵の飛散を防止する上でも有効な工法です。
ただし、作業には高度な技術が必要です。
転倒工法の名称どおり、解体する部分を地面に引き倒し、引き倒した後で細かく破砕して解体する方法です。
独立させた壁や柱などの上部に数本のワイヤーを取り付け、下部のコンクリートを崩して鉄筋を切断し、ワイヤーを引っ張って倒します。
鉄骨や鉄筋の溶断が必要な場合は、ガス溶断で外壁や柱の根元を切りこんだ後、重機で引っ張って倒します。
「転倒工法」は、粉塵の飛散量が少なく、作業する敷地を最小限に抑えることができ、また、高所などでの危険な作業を減らすことができるメリットがあります。
敷地が狭い建物に有効な工法ですが、作業には熟練した高度な技術や、豊富な経験が必要です。
鉄筋コンクリート造の解体費用の項目と解体の流れ
鉄筋コンクリート造の解体には、建物本体を解体する費用だけでなく、他にも費用がかかります。
業者からもらった見積書の比較や、妥当性を判断するためには、解体費用の項目と解体の流れを把握しておくことが重要です。
見積書の内訳が理解できれば、一般的な相場と比較しながら適切な費用の目安を知ることができるとともに、各社の見積りを比較して、より適切な業者を選ぶこともできます。
解体工事費用の項目
解体工事は大きく分けて「本体工事費」「付帯工事費」「その他の費用」に加え、「追加費用」の4つの項目で構成されることが一般的です。
以下では、それぞれについて確認しましょう。
本体工事費
本体工事は、仮設工事と建物本体の解体工事をあわせたものです。
仮設工事の項目としては、仮囲いやゲート、散水設備、養生、防災シートや防音パネル、セーフティーネットの設置、床の補強、足場材や養生材の運搬費などがあります。
また、聞き慣れない費用として、地下部分の土砂水や崩壊を防ぐ山留工事や、工事用機械や車両、資材などのスペースを確保するために仮設橋梁を設置する構台工事なども、仮設工事の項目に含まれます。
一方、建物本体の解体工事に関する項目としては、主に内部造作撤去、上屋撤去、下屋撤去という表現が使われます。
付帯工事費
建物本体以外で解体処分が必要な場合は、付帯工事費がかかります。
付帯工事の項目としては、残置物の撤去工事や運搬処分、土間コンクリート撤去処分、ブロック塀や門扉、物置などの撤去処分、樹木伐採や抜根処分、杭撤去などがあります。
その他の費用
本体工事や付帯工事に含まれない項目が、「その他の費用」に記載されます。
この項目では、近隣への挨拶費や、解体工事や廃材処分などに必要な、自治体や関係官庁などへの届け出や手続き費用、重機回送費などが記載されます。
また、作業用車両の駐車代、隣家敷地使用料、車両などのリース費、交通誘導警備要員などの費用など、他に分類されない費用もあります。
追加費用
本来の解体工事とは別に、障害物などの撤去が必要となった場合は追加費用が発生します。
たとえば、建物内部にアスベストが使用されていた場合や、残置物、地中埋設物がある場合などです。
特にアスベストの場合は、別途、事前調査や法的な手続き、アスベスト除去工事を行わなければならないため、専門作業技術者や設備なども必要となります。
解体工事の流れ
解体費用の項目の次は、工事の流れについて確認しましょう。流れを把握しておくことで費用項目の内容がより理解しやすくなります。
【1】現地調査
解体業者に解体の相談を行うと、まず、現地を確認してから見積りが作成されます。
現地調査では、建物本体だけでなく、付近の道路状況、使用できる重機や車両、付帯工事の有無など、見積書の作成に必要な項目を、詳しくチェックしていきます。
調査の際は、依頼主も立ち会って、工事の範囲や近隣への影響などについて確認しながら、工事の規模や工法などを決めていきます。
【2】近隣への挨拶回り
見積り金額に納得し、本契約を結んだら、解体工事に着手する前に近隣への挨拶回りを行います。
解体工事では、騒音や粉じん、工事車両の出入りなど、近隣への影響が大きいため、事前の挨拶や説明は必要不可欠です。
工事着手後のトラブルを防止するためにも、依頼主は業者に同行し、工事内容や期間などを説明して、理解を得ておきましょう。
【3】足場設置と養生
高所での作業を伴う解体工事では、足場を設置して安全を確保します。
また、粉じんなどの飛散防止のために、養生シートを設置します。
養生シートによって、近隣への影響を最小限に抑えることができます。
【4】内部解体
建物本体を解体する前に、建物内部を解体処分しておきます。
廃材の種類や解体方法も異なるため、まとめて解体するのではなく、先に内部を片付けておく必要があるのです。
内部解体では、建物内部に使用される建材や断熱材などを基本的に手作業で撤去します。
また、アスベストが使用されている場合は、この段階で撤去工事を行います。
【5】上屋解体
建物の基礎部分以外を「上屋」と呼びます。内部解体が終わったら上屋を解体していきます。
重機を中心として、埃が飛散しないよう散水しながら、壁や柱、梁の解体・撤去作業を進めます。
基本的に、最上階から解体作業を始め、上から下へと進めていき、最後は基礎部分だけが残ります。
【6】基礎及び地中障害物の解体
上屋の解体で現れた基礎を解体します。
鉄筋コンクリート造りの基礎には、地中深くまで杭が打ち込まれているため、山留工事などを施しながら、基礎部分と杭を解体撤去します。
また、埋設物などの地中障害物があれば、更地化したあとで問題が生じないように、解体撤去を行います。
なお、地中障害物の解体撤去費用は、本体工事の追加として、別途請求されるのが一般的です。
【7】 埋戻しと整地
地中深く打ち込まれた杭や地中障害物などを撤去するために、地面を深く掘り下げることになります。
後で利用可能な更地にするためには、この掘り下げた部分を埋め戻し、最後に整地しなければなりません。
埋戻しには、掘り下げた時の土のほか、解体工事で発生したコンクリートを粉砕し、再生利用するリサイクルが利用されることが多くなっています。
鉄筋コンクリート造の階数別解体費用例
一般的に、鉄筋コンクリート造の解体費用は、坪当たり約3万円〜約8万円程度が相場ですが、構造や地域などによって異なるほか、ビルかマンションかなどでも異なります。
階層が多く複雑で、狭い敷地に建っているケースなどは、技術的にも難しく、解体期間も長く、割高になる傾向があります。
以下では、階数別に解体費用の実例を紹介します。
ただし、あくまでも一例であって、業者や採用する工法などによって異なることに注意が必要です。
なお、業者に依頼する場合には、複数の会社に「相見積もり」を依頼して、比較することが重要です。
解体工事には、定価のような一定の価格がなく、建物の構造や面積、立地条件や解体業者によって値段が異なります。
1社の見積もりだけでは妥当な値段かどうかの判断が難しい場合でも、複数の会社から見積もりを取れば、妥当な相場を知ることができます。
また、単に金額を比較するだけでなく、それぞれの会社の対応力や専門性、さらには見積書の記載の仕方、見積内容の説明の仕方によって、専門性や丁寧さを知ることもできます。
鉄筋コンクリート造ビル解体の費用例
鉄筋コンクリート造ビルの解体費用の目安として、3階建てを2例、4階建てと5階建てを1例ずつ紹介します。
3階建て
3階建てビルの解体費用を実例で見ると、延べ床面積250坪の建物では、総額約1,160万円、坪単価は約5万円となっています。
同じ3階建てビルでも、約150坪の実例では、解体費用の総額は約470万円で、坪単価は約3万円です。
4階建て
4階建てビルの解体費用を、約110坪の実例で見ると、総額で約760万円、坪単価では約7万円となっています。
5階建て
5階建てビルについて、約110坪の実例をみると、総額で約1,300万円、坪単価では約11万円となっています。
鉄筋コンクリート造マンションの解体費用例
次は、鉄筋コンクリート造マンションの解体費用について、3階建てを2例、4階建てと5階建てを1例ずつ紹介します。
3階建て
3階建てマンション解体の実例をみると、約150坪の建物の解体にかかった費用は、税抜き合計が約830万円で、坪単価は約6万円です。
また、同じ3階建てでも、39坪のケースでは税抜き合計が約470万円、坪単価では約12万円と割高になっています。
4階建て
4階建てマンションの解体例をみると、約2,400坪の建物の解体にかかった費用は、税抜き合計で約2憶5,400万円で、坪単価は約11万円です。
5階建て
5階建てマンションの解体例をみると、約80坪の建物の解体にかかった費用は、税抜き合計が約930万円で、坪単価は約12万円となっています。
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