2024年04月24日更新

監修記事

アスベスト対策問題 – 法改正のポイントと発注者にもとめられること

アスベスト(石綿)問題とは

天然に産する鉱物繊維で大きく分けると蛇紋石族と角閃石族の2種類になり、その特性として、不燃・耐熱・断熱性に優れており、耐火材・保温材・断熱材として広く建築建材として使用させてきました。

しかし、空気中に浮遊する石綿を吸入することで肺がんなどを発症する例が多発しました。

それにより1975年以降、段階的に使用に関する法改正が行われ、最終的には平成18年の労働安全衛生法施行令改正により、0.1重量%を超えるアスベスト含有製品の製造や使用などが禁止されました。

しかし、アスベスト含有が考えられる建築物等の解体・改造・補修工事に伴うアスベストの飛散防止が徹底されておらず、大気汚染防止法(大防法)の一部を改正する法律が令和2年6月5日に公布され、令和3年4月1日に施行されました。

また、石綿障害予防規則(石綿則)も合わせて 令和2年7月に改正され、同日の施行となりました。

規制対象についても、石綿含有成形板等を含む全ての石綿含有建材に拡大しました。

また、令和3年5月17日の最高裁判決において、建設アスベスト訴訟に国が敗訴しました。

建設業務に従事していた元労働者等とその遺族が、石綿による健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとし、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟を受け、さらに規制が強化されました。

アスベストは住宅のどこに使われている可能性があるか

内装材として、スレートボード、スラグせっこう板、パルプセメント板、けい酸カルシウム板、ロックウール吸音天井板、せっこうボード、パーライト板、壁紙、ビニル床タイル、窯業系サイディング、宅屋根用化粧用スレート、ルーフィングなどが石綿含有の可能性があります。
(平成18年9月1日以前に施工したもの)

不燃材料等として内装材としては壁材、天井材等に使用されています。

フレキシブル板は湿度による変化が少ないことから、浴室の壁・天井、台所の壁などにも使用されています。

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改正のポイント

2つの法令改正

前述のとおり2つの法令の改正となりましたが、大気汚染防止法(大防法)は環境省管轄となっており、石綿障害予防規則(石綿則)は厚生労働省管轄となっています。

それぞれの省庁から改正についての周知が行われましたが、2つの改正がイコールではないため、関係事業者にとっては、かなりわかりづらいものとなっています。

「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル」が令和3年3月に改訂されたが370ページという膨大なマニュアルのため、相変わらず関係事業者には理解できていない者も多いです。

令和3年4月1日から義務化されたこと

工事開始前の石綿の有無の調査(方法の明確化)

  • 工事対象となる全ての部材について事前調査が必要
  • 事前調査は、設計図書などの文書および目視による必要
  • 事前調査で石綿の使用の有無が明らかにならなかった場合には、分析による調査の実施が義務 ただし石綿が使用されているものとみなして、ばく露防止措置を講ずれば、分析は不要
  • 発注者へ調査結果を書面で説明が必要
  • 調査結果の記録は、3年間保存する必要
  • 調査結果の写しを工事現場に備え付け、概要を見やすい箇所に掲示することも義務

リフォームをするにあたっては、基本的にすべてのリフォームで上記6項目を行わなければなりません。

平成18年9月1日以降に施工された建物であっても、書面、目視で調査を行い、アスベストがないことを確認し、発注者へ説明しなければなりません。

ただし以下に該当する場合は、石綿の飛散リスクはないと判断できるので調査は不要となります。

  • 木材、金属、石、ガラス、畳、電球などの石綿が含まれていないことが明らかなものの工事で、切断等、除去または取り外し時に周囲の材料を損傷させるおそれのない作業
  • 工事対象に極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業
  • 現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業
  • 石綿が使用されていないことが確認されている特定の工作物の解体・改修の作業

調査結果の記録項目は以下の通り。

  • 事業者の名称・住所・電話番号、現場の住所、工事の名称・概要・事前調査の終了年月日・工事対象の建築物・工作物・船舶の着工日、構造・事前調査の実施部分、調査方法、調査結果(石綿の使用の有無とその判断根拠)

一方で、発注者は設計図書、過去の調査記録等、特定建築材料の使用状況等に係る情報を有する場合は、当該解体等工事の元請業者に対してこれを提供するなど協力するほか、事前調査費用を適正に負担しなければなりません。

とあります。

令和4年4月1日から義務化されたこと

工事開始前に石綿事前調査結果報告システムにて報告

本来、各都道府県と管轄の労働基準監督署の2か所に報告することになりますが、専用のシステムを活用して一括電子報告ができるようになっています。

報告が必要な工事は以下の通りです。

  • 建築物の解体工事 :解体部分の床面積が80㎡以上
  • 建築物の改修工事 :請負金額が100万円以上(税込み)
  • 工作物の解体工事・改修工事 :請負金額が100万円以上(税込み)

※特定の工作物のみ:ボイラー、焼却設備、発電設備等

報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、大気汚染防止法(大防法)により、30万円以下の罰金となります。

電子システムで報告が必要な内容は以下の通りです。

  • 事業者の名称・住所・電話番号・労働保険番号、現場の住所、工事の名称・概要・工事期間
  • 事前調査の終了年月日、事前調査を実施した者の氏名等
  • 工事対象の建築物・工作物の着工日、構造の概要
  • 床面積(建築物の解体工事)または請負金額(その他の工事)
  • 石綿作業主任者の氏名
  • 事前調査結果の概要(材料ごとの石綿使用の有無、判断根拠)
  • 作業の種類・切断等の作業の有無・作業時の措置

令和5年10月1日から義務化されること

事前調査や分析調査は、要件を満たす者が実施しなければなりません。

令和5年10月1日以降、事前調査を実施することができる者は以下の通りです。

  • 特定建築物石綿含有建材調査者
  • 一般建築物石綿含有建材調査者
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者

※一戸建て住宅・共同住宅の住戸の内部に限定

令和5年9月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者 事前調査は基本的にすべての工事で行う必要があるため、事業者は上記資格を保有しなければ、調査を外注しなければなりません。

またアスベスト除去作業を行う場合は石綿作業主任者が立ち会わなければなりません。

発注者に求められること

すでに調査・報告が義務付けられている中ですが、法令改正の内容を理解していない事業者も多くいます。

制度の浸透を図るためにも、リフォーム工事発注の際には、事業者に石綿作業主任者をはじめ、上記資格保有者がおり、遵法の意識がある事業者かどうか、確認をしてください。

国土交通省では平成26年に「国土交通大臣リフォーム事業者登録団体」を創設しました。

現在登録している団体は16団体あり、その構成員(リフォーム事業者)は約8000社あります。

アスベスト対策の研修を重ねているため、登録団体構成員の事業者に工事の発注を勧めていますが、アスベスト問題については改正間もないこともあり、いまだ多くで混乱をきたしているため、発注者と請負者が協力して調査・報告に臨んでいただくことを勧めています。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】相馬康男

一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会(ジェルコ)

相馬康男

一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会(ジェルコ)本部事務局長。1999年 建設業に特化したコンサルタントとして独立し、ジェルコに入会。ジェルコ総合補償制度の構築や増改築相談員研修の推進に尽力。2012年 ジェルコ関東甲信越事務局長に就任。2016年 本部事務局長に就任。現在に至る

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