目次
防音室の仕組みとは?

防音室を作るにあたって、まずはその仕組みがどのようになっているかについて解説します。
音の伝わり方について
音は、空気が振動し、その振動が鼓膜に届くことによって認識できます。
これは空気伝搬音と呼ばれており、音が空気中を伝わって耳に届きます。
音の発信源から離れれば離れるほど音のレベルは下がり、途中に壁などの遮蔽物があると、ある程度の音を遮ってくれます。
人の話し声やテレビの音は空気伝搬音に該当するので、マンションなどの場合にはコンクリートの壁の効果により、隣の家にその音が聴こえることをある程度抑えられます。
防音室の仕組みについて
防音室は、おもに吸音材と遮音材という材料により防音効果を発揮しています。
遮音材とは、音が壁や天井を通過して向こう側に届かないように遮ることを目的とした材料です。
遮音材が音を跳ね返してくれることで、音を通過させない仕組みになっています。
吸音材とは、空気中に伝わる音の振動を熱エネルギーに変換して音を減らしていく材料です。
一般的な防音室には、室内の音が完全に聴こえなくなるレベルまでの防音は、残念ながら期待できません。
あくまでも「音を減らす」という概念で防音室は作られています。
防音グレードについて
防音性とは、建物自体の遮音性能と防音室の遮音性能を足し合わせたものです。
防音室には、防音レベルに応じた様々なグレードがあり、大きく分けるとスタンダード防音とプレミアム防音の2種類があります。
スタンダード防音は、天井や壁、床、ドアなどに防音材料、あるいは防音仕様のものを用いて、部屋の中でやや大きい音を出したい時などに高度な防音性能を発揮します。
プレミアム防音は、プロのニーズに応えられるレベルの防音性能があり、本格的な大音量を出すためのグレードになります。
家に防音室を設ける工事を行う前に知っておきたいこと

この章では、防音室を設ける場合に知っておきたい基本情報をまとめます。
地域の環境基準を調べておく
防音室を設ける場合の基準にもなるのが、地域の環境基準です。
環境基準は、環境庁や都道府県が定めるもので騒音基準が含まれています。
騒音基準では、用途地域ごとに昼間と夜間の時間帯別に、守るべき音の大きさを定めています。
特に第一種住宅地域では、音に対する基準値が厳しくなります。
住居のある地域の環境基準を調べて、外に漏れる音が基準値以下になるように防音室を設けることを検討します。
騒音基準を定める音の単位は、デシベル(db)で表します。
たとえば、第一種住宅地域では昼間で55デシベル以下と定められているのが一般的です。
演奏する楽器ごとに発生する音の大きさは異なる
演奏する楽器ごとに発生する音の大きさは異なります。
音の大きさは、音の波における波の幅の大きさに比例しており、この波の幅の大きさによって音の圧力が変化し、音の大きさは音圧によって決まります。
具体的な楽器ごとの音の大きさは数値化して後述します。
遮音性能を表す遮音等級という数値がある
演奏する楽器ごとに求められる遮音性は異なり、その遮音性能を表す遮音等級という数値があります。
遮音等級とは、建物の遮音性能のレベルを表す指標です。
壁やサッシなどの遮音性能と床の遮音性能それぞれに等級があります。
具体的な遮音等級の数値は後述します。
防音室には固定遮音構造と浮遮音構造の2種類がある
音には種類があり、空気の振動が耳に伝わる音と、壁や床が振動することで伝わる音があります。
そのため防音室には、音の種類にあった遮音構造が必要になります。
固定遮音構造
固定遮音構造は、空気振動による音の遮音に効果がある構造です。
固定遮音構造では、外壁や間仕切り壁に騒音を遮断する材料を使用します。
たとえば、遮音効果のあるコンクリートの壁の室内側の仕上げに吸音材を取り付けるような方法です。
浮遮音構造
浮遮音構造は、壁や床が振動することで伝わる音を遮断する構造です。
振動による音の伝搬は、壁を厚くしても防ぐことが難しい音です。
そのため、振動による音を防ぐ浮遮音構造が利用されます。
浮遮音構造は、固定遮音構造の内側に浮いた箱があるイメージの防音室です。
内側の部屋の壁と建物の間に防振ゴムなどがはいっており、建物本体に振動が伝わらないようにしています。
音の大きさと聞こえ方の目安は?

防音室を作る上で、どのくらいの防音対策が必要になるのかを知ることが必要です。
音の大きさと聞こえ方の目安について解説していきます。
デシベルと音の聞こえ方について
音の大きさはデシベル(db)という数値で表されます。
デシベルと音の聞こえ方について、表にまとめて解説していきます。
また、地域や時間帯によって騒音の基準が各都道府県の条例で定められていますので、若干の違いがあることをご了承ください。
デシベル(db) | 音の聞こえ方 |
---|---|
10 | 無音に近い |
20 | ささやき |
30 | 郊外の深夜 |
40 | 図書館 |
50 | 換気扇 |
60 | 乗用車の車内 |
70 | セミの鳴き声 |
80 | 電車の車内 |
90 | カラオケ店内 |
100 | 電車のガード下 |
110 | クラクション |
120 | ジェット機 |
130 | 落雷 |
楽器などを演奏した際の音の大きさについて
楽器を演奏したりする時に出る音の目安を表にまとめてご紹介します。
デシベル(db) | 音の種類 |
---|---|
10 | 無響室 |
30 | コンサートホール内部 |
80 | ピアノ |
90 | バイオリン |
100 | クラリネット |
110 | サックス |
120 | トランペット |
130 | ドラム |
遮音等級について

遮音等級について表にまとめてご紹介します。
一般的な遮音等級の目標値はD-50~D65です。
遮音等級 | ピアノ・ステレオ等の大きい音 | TV、会話等の一般発生音 |
---|---|---|
D-65 | 通常聞こえない | 聞こえない |
D-60 | ほぼ聞こえない | 聞こえない |
D-55 | 微かに聞こえる | 通常聞こえない |
D-50 | 小さく聞こえる | ほとんど聞こえない |
D-45 | かなり聞こえる | 微かに聞こえる |
D-40 | はっきり聞こえる | 小さく聞こえる |
D-35 | よく聞こえる | かなり聞こえる |
D-30 | とても良く聞こえる | 話の内容が聞き取れる |
D-25 | うるさい | はっきり聞き取れる |
D-20 | かなりうるさい | よく聞こえる |
D-15 | 非常にうるさい | 筒抜け状態 |
防音リフォームの費用
ピアノ向けの防音室の費用は、部屋の広さにもよりますが、鉄筋コンクリートの建物なら6畳で約230万円、木造住宅なら約280万円が相場です。
ドラム向けの場合はもう少し防音性能が必要となるため、鉄筋コンクリートなら約330万円、木造なら約380万円になります。
既存の防音室をリフォームして性能を向上させる場合は、基礎工事が必要無く壁などを交換するだけなら価格は約150万円、ドアを交換する場合の価格は約50万円からが相場となっています。
窓については、内窓の追加で約5万円が相場です。
防音パネルを設置する方法

防音の種類 | 費用(万円) |
---|---|
防音パネルの設置 | 2万5千円~4万円(1畳) |
防音パネルだけであれば、賃貸住宅でも設置が可能です。
部屋自体を改装して防音室にする方法
防音の種類 | 費用(万円) |
---|---|
部屋の防音リフォーム | 100万円~500万円(6畳) |
部屋そのものを改装して防音室にするには施工費用は高くなりますが、遮音等級を上げられるメリットがあります。
防音ブースを設置する方法
防音の種類 | 費用(万円) |
---|---|
防音室の設置 | 160万円~300万円(6畳) |
防音室の施工 | 230万円〜350万円(6畳) |
設置型防音ブース | 240万円〜300万円(6畳) |
防音ブースを設置する方法は、最も手軽な方法で費用もかからないことがメリットです。
中古マンションをリノベーションして防音室を作る際の注意点

中古マンションを購入して防音室を施工する場合、使用する楽器によっては十分な効果が得られないことがあります。
マンションの場合、どうしても部屋そのものの重さに制限があるため、ドラムなどの振動が伝わる楽器に対応した防音室は作ることができません。
ドラムは、本格的に演奏すると、音以上に振動が床に伝わる楽器ですので、十分な防音性能を確保するためにはコンクリートなどで振動対策を施す必要があります。
一戸建てなら1階部分を床からリフォームすることで対応できますが、マンションの場合は構造上このような作りにすることは難しいため、ドラムを演奏したいという方は一戸建てを選んだ方が良いでしょう。
防音室は専門家に設計や施工を依頼することが大切
防音室は使用する楽器や家屋の状態などによってリフォームに必要な工事の内容が変わってきます。
リフォーム会社によっては通常のリフォーム以外に防音室のリフォームを行っている会社もありますが、防音室を作るためには色々と専門的な知識が必要です。
そのため、施工を依頼する際には、色々な防音室の工事に慣れた専門家に依頼した方がより高性能な防音室を作成することができるでしょう。
防音室が使われる用途は?
防音室は一般的に楽器演奏や歌の練習などをする場合などによく使われます。夜でも音を気にすることなく演奏できるところも防音室の魅力です。
意外に思われるかもしれませんが、楽器演奏以外の用途でも防音室は活躍します。防音室があることで子供が自由に走り回ることができたり、ペットの足音などを気にすることなく生活したりすることも可能です。
また、防音室は音が外に漏れるのを防ぐだけでなく、外から入ってくる音を減らす効果もあります。音質にこだわったホームシアターでの映画鑑賞やゲームなども周囲の音を気にせずより深い没入感を楽しめるでしょう。
生活音が気にならなくなり、テレワークなどの際にもより集中することができます。
防音室はどこまで音漏れを防げるのか

防音室を作る際には、音源の種類や建物の状況などをもとにどの程度音を遮断するのかという遮音性能値を決めます。
外に漏れる音の大きさは、音源の大きさから遮音性能値を引くことで求めることができます。地域によっても異なりますがこの値は45dB以下が理想的です。
外に漏れる音の大きさについて、どれくらいまでなら音を出してもいいのかという基準が各都道府県の条例などで定められているので一度確認してみるといいでしょう。
専門業者による施工であれば、一般的な工事でドラムなどの振動を伴う楽器以外の音漏れは概ね防ぐことが可能です。
防音室のリフォームに必要な広さは?
防音室を新たに設置する際には、壁、床、天井に防音効果のある素材を埋め込むなどの施工をする必要があります。
素材の種類にもよりますが、リフォーム後は元の部屋よりも約1畳〜約1.5畳小さくなるでしょう。
そのため、防音室の設置を考えている部屋があまり広くない場合には、リフォーム工事自体ができない場合もあります。
防音室を作る際には使用用途を明確にし、そのために必要な部屋の広さが確保できるかもきちんと確認しておきましょう。
防音室のリフォームに必要な天井の高さ
防音室のリフォームの際には、床や壁だけでなく天井にも防音効果のある素材を入れます。
使用する楽器などによっては高さが必要なものもあるため、あらかじめどれくらいの天井高さになるのかなどを確認しておくことが大切です。
ピアノなどの楽器を防音室で演奏する場合には、天井の高さにより音の伸びなどが変わってきます。
防音室をつくる際には部屋の広さに気を取られがちですが、天井の高さにも考慮が必要です。
部屋の面積などによっても適切な高さは変わってきますが、少なくとも2.4mは天井の高さを確保できるようにするといいでしょう。
防音室のリフォームに必要な床の強度は
防音室の防音性の高さは、設置する遮音材の素材が重いほどその効果が高くなる傾向にあります。
ドラムなどの振動を伴う楽器を使用する場合には、高い防音性が必要なため重い素材を使用することになります。
しかし、防音性を高めようとしてあまりにも重い素材を使用してしまうと、床が重さに耐えきれなくなってしまうこともあります。
特に木造の2階以上の部屋やマンションの床の強度はあまり高くありません。
防音室を設置する際には、防音性の高さだけでなく床の強度も考慮する必要がある点に注意しましょう。
リフォームで防音室を作る場合の手順

リフォームによって防音室を作成する場合には、まず壁面や床に防音機能のある建材を取り付け、建材の隙間に防音素材のコーキング剤を用いて隙間を埋めるという流れになります。
また、換気ダクトや換気扇、ドア、窓についても防音に配慮した製品を使用し、開口部及び構造から音が外部に伝わってしまうことをできる限り予防しなければいけません。
一口に防音と言っても2つの要素があります。1つは遮音、これは空気中を伝わる音を遮断して外に音が漏れないようにする事で、普通これが防音と思っている人が多いでしょう。
もう1つ大事なのは吸音で、床・壁・天井で音の反射を防ぎ音が振動として室外に漏れることを防ぐ対策が必要です。
ピアノなどの楽器演奏用の防音室の構造と注意点
ピアノなどの楽器を演奏するための防音室を作る場合には、基本的な防音工事に加えて、室内の反響を抑えるための吸音材を効果的に配置することも重要となります。
吸音材の配置については、少し位置が変わるだけで音の響きが変わってしまい、楽器の演奏に影響が出てしまうため、専門家による設計が不可欠です。
防音室には、簡易的な組み立て式のものがありますが、ドラムなどの低音や振動が強いものについてはあまり効果的では無いとされています。
ドラムを演奏したい場合には、部屋そのものを防音室にリフォームした方が良いでしょう。
歌を歌ったり、ギターなどの比較的音が小さく響きにくいもの演奏したりする場合には、簡易的な組み立て式防音室でも十分な効果が得られるため、リフォーム費用や手間を抑えたいという方は、こちらの方式を採っても良いでしょう。
既存の防音室の性能をアップさせるリフォーム
現在お使いの防音室の防音性が低かったり、新しく楽器をはじめる際に防音室の性能が不足していたりする場合には、壁材や窓、ドアなどを遮音性能が高いものに交換することで性能を向上させることができます。
元となる防音室の遮音性能がある程度高ければ、部分的に遮音性能が劣る部分をリフォームするだけで十分な性能を得ることができますが、全体的に遮音性能が劣っている場合は全面的なリフォームが必要です。
少し部屋が手狭になってしまうのが難点ですが、防音室の中に組み立て式の防音室を設置することで、二重構造とし、安価に防音室の性能を向上させるという方法もあります。
和室を防音化する方法について
琴などの和室で演奏することが多い楽器向けには、和室を防音室にする方法もあります。
和室タイプの防音室でも基本的な工事方法は通常の防音室とそれほど変わりません。
壁材や窓、床、出入り口などを防音機能のあるものに交換し、隙間をコーキング剤で埋めれば十分な性能を得ることが出来ます。
マンションに防音室を作る方法
マンションに防音室を作る場合は共用部分などの問題で、壁や天井、床を作り替えることができない場合があります。
そのような場合には、ワンタッチで壁面などに取り付けられる防音壁がおすすめです。
防音壁は、遮音シートをグラスウールなどの吸音材で挟んで作られた製品で、ネジや接着剤などを用いて壁に貼り付けるだけで遮音することができます。
接着剤を用いれば壁を傷めずにすみますし、施工の際の騒音や施工にかかる時間を抑えることができますので、マンションにお住まいの方はこのようなタイプの防音壁を使って防音室を作ると良いでしょう。
賃貸の場合でも、転居時の現況復帰などを条件に可能な場合がありますので、大家さんに相談してみましょう。
防音室のリフォームはDIYでは難しい?
防音室のリフォームを効果的に行うためには、正しい知識が必要です。
部屋に防音素材などを貼ることで外から入る音を低減させるなどの防音効果を得ることはできますが、楽器や歌の練習などのための防音効果の高い防音室を作るのはDIYでは難しいでしょう。
また、防音のためにDIYでグラスウールのような吸音材を貼る際には注意が必要です。吸音材には吸音する効果はありますが、外に音を伝えにくくする効果はなく、静かになったと感じるのは部屋の中にいる人のみであることです。
防音効果の高い防音室を作るためには、部屋や建物の状況に合わせて、壁の質量をあげる、気密性をあげる、防振するなどの工事が行われます。
また、それと同時に部屋の断熱性が高まるため換気のためのダクト工事も必要になってくるのです。
防音効果の高い防音室にしたい場合、DIYでは限界があるという点を覚えておきましょう。
防音リフォームの業者選びで後悔しないために
必ず相見積もりを複数取って比較しましょう!
なぜならリフォームの費用・工事方法は、業者によって大きく異なるからです。
とはいえ「信頼できる業者が分からない」「何度も同じ説明をするのが面倒」と踏み出せない方もいらっしゃると思います。
そのような方こそハピすむの一括見積もり比較を活用しましょう!
大手ハウスメーカーから地場の工務店まで、審査を通過した1000社以上の中から、まとめて見積もりを依頼できます。
また、ハピすむでリフォームされた方には最大10万円分の「ハピすむ補助金」もご用意しています。
詳細はこちら>>>ハピすむ補助金プレゼントキャンペーンの流れ