目次
外壁調査は義務化されている
外壁調査は、ビルやマンションなどの特定建築物において義務化されています。
専門的な知識や技術をもつ調査員が、建物における外壁の損傷や劣化の状況を調査すること
具体的には、建築基準法第12条によって、特定建築物の調査および報告が義務付けられており、外壁調査もこの法令の一部として定められました。
第六条第一項第一号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国、都道府県及び建築主事を置く市町村が所有し、又は管理する建築物(以下この項及び第三項において「国等の建築物」という。)を除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物(同号に掲げる建築物その他政令で定める建築物をいう。以下この条において同じ。)で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物を除く。)の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第三項において同じ。)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(次項及び次条第三項において「建築物調査員」という。)にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の建築設備及び防火戸その他の政令で定める防火設備(以下「建築設備等」という。)についての第三項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
引用元:e-Gov 法令検索
また、外壁調査の時期や内容などについては、国土交通省によって以下のように示されています。
調査のタイミング | 調査内容 |
---|---|
半年〜3年以内 | 手の届く範囲の打診 |
10年に一度 | 全面的な打診 |
なお、建築基準法によって定められた調査および報告は、建物の所有者に対して義務付けられています。
外壁調査が必要な理由
外壁調査は建物の損傷を防いだり、建物の周辺環境を守ったりするために必要不可欠です。
外壁調査の必要性を理解して、建物の維持に役立てましょう。
【理由1】建物の損傷を防ぐため
外壁調査は、建物の損傷や劣化を防ぐために欠かせません。
外壁調査を怠ると、建物のひび割れや剥がれなどの損傷を見逃してしまい、いずれは構造躯体に大きなダメージを与えるおそれがあります。
もし構造躯体にダメージが及んだ場合、建物の雨漏りや倒壊などのリスクも高まります。
したがって、建物を長く維持するために、適切なタイミングで外壁調査することが必要です。
【理由2】建物の周辺環境を守るため
外壁調査は、建物の周辺環境を守るために必要不可欠です。
外壁調査を行わない場合、損傷した外壁の一部が、周辺の人や建物に危害を加えてしまうことも少なくありません。
たとえば、損傷した外壁の一部が落下し、歩行者に当たった場合、取り返しのつかない重大事故に発展してしまいます。
また、損傷した外壁の一部が周辺の建物に当たり、トラブルを招くかもしれません。
そのため、外壁調査は建物における周辺の人や環境を守る手段として、きわめて重要であるといえます。
【理由3】災害時の被害を最小限にするため
外壁調査は、建物における災害時の被害を最小限にする役割もあります。
外壁調査で建物の劣化をチェックし、適切に補修できていれば、災害時でも外壁本来の機能を発揮できるため、建物利用者の安全は確保されます。
一方、外壁調査を怠って建物の劣化が進んでいる場合、外壁本来の機能を発揮できず、災害による被害は拡大するでしょう。
したがって、災害時の被害を抑えるためにも、適切なタイミングでの外壁調査が必須です。
外壁調査の方法
外壁調査の方法は、「打診調査」と「赤外線調査」の2種類があります。
それぞれの調査方法の特徴をマスターし、建物にとって最適な方法を検討しましょう。
【方法1】打診調査
打診調査とは、ハンマーや打診棒などを使って外壁を叩き、その発生音から外壁の劣化や損傷の有無を判断する方法のことです。
正常な箇所との音を聞き分けて劣化や損傷の有無を確認するため、目視ではわからない異常を発見できます。
また、目視や触診での調査も行われるため、より専門的な目線で調べられるのも特徴のひとつです。
なお、打診調査は建物によって仮設足場やゴンドラ、ロープを利用する必要があるため、ほとんどのケースで費用や時間がかかります。
【方法2】赤外線調査
赤外線調査とは、赤外線カメラを使って外壁の表面温度を測定し、温度の差異によって外壁の劣化や損傷を判別する方法のことをいいます。
仮設足場やゴンドラなどを利用せず、外壁の撮影だけで完結するため、最小限のコストで広範囲にわたる調査が可能です。
ただし、地上から外壁を撮影するため、高層階であるほど精度が低くなります。
また、赤外線調査は外壁における表面温度の差異から異常を判別するため、季節によって精度が落ちるおそれもあるでしょう。
調査の精度を高めるために、赤外線調査によって外壁の劣化や損傷が見受けられる箇所を、打診調査でよりくわしく調べるケースがあります。
また、立地条件によって赤外線調査だけでは困難な場合、打診調査を組み合わせて調べる方法も視野に入れましょう。
外壁調査の一般的な流れ
外壁調査は、専門業者に依頼するのが一般的です。
外壁調査の一般的な流れを頭に入れて、調査依頼時のトラブルを予防しましょう。
インターネットや知人からの口コミを活用し、信頼できる業者を探しましょう。
安心して任せられる業者を探すためには、口コミと実績に注目することが重要です。
なお、納得のいく業者が見つからない場合は、各地域の行政機関に問い合わせて相談するのもひとつです。
都道府県もしくは市区町村ごとに建築指導課があるため、外壁調査に対応する業者について問い合わせてみましょう。
業者を見つけたら、見積もりを依頼しましょう。
調査にかかる費用は、調査方法や建物の状態、規模によって異なるため、業者によって変動します。
したがって、複数の業者に見積もりを依頼し、価格や調査内容を検討することが欠かせません。
相場よりも極端に安い、あるいは高い見積もりは、詐欺やトラブルなどのリスクがあるため、慎重に見極めましょう。
納得のいく業者を見つけたら、外壁調査を行うための契約手続きに進みます。
契約する前に、今後の流れや支払い方法など、気になる点をすべて聞いておくと安心です。
契約後に「このようなことは聞いていなかった」などのトラブルがないよう、不安材料はすべて解決しておきましょう。
契約の締結後、外壁調査を実施します。
調査期間は、打診調査で数日から1週間、赤外線調査で1日が目安となります。
外壁調査を終えたら、業者の作成した調査報告書を確認し、今後の外壁メンテナンスを検討しましょう。
正しく調査結果が記載されているかを確認し、業者との認識に差異がないことをチェックすることが重要です。
調査報告書を確認したら、各地域の特定行政庁に報告書を提出しましょう。
調査報告書の提出は、建物の所有者が行わなければなりません。
外壁調査の費用相場
外壁調査の費用相場は、1平方メートルあたり100円〜が目安となります。
外壁調査の費用相場を把握して、予算組みの参考にしましょう。
方法 | 費用相場 (1平方メートルあたり) |
---|---|
打診調査 | 250〜700円 |
赤外線調査 | 100〜350円 |
上記のとおり、費用相場は高所作業が必要となる「打診調査」のほうが高い傾向です。
たとえば、打診調査で仮設足場を利用する場合、足場の設置・解体費用や人件費がかかるので、トータルコストが高くなります。
一方、赤外線調査はカメラの機器代が費用の多くを占めており、ほとんどの場合そのほかの追加料金はかかりません。
このように、調査方法ごとに費用が異なるため、必要性や精度もふまえたうえで、どちらの方法が適しているのかをきちんと見極めましょう。
外壁調査の対象か確認する方法
外壁調査は、すべての建物で義務化されているわけではありません。
外壁調査の対象となる建物は、政令によって一律に指定されているほか、地域ごとの特定行政庁によって指定されています。
なお、政令によって外壁調査が義務付けられている建物と条件は、以下のとおりです。
建物の用途 | 条件 (いずれかに該当するもの) |
---|---|
劇場 映画館 | ・3階以上の階にあるもの ・客席の床面積が200平方メートル以上のもの ・主階が1階にないもの ・地階にあるもの |
公会堂 集会場 | ・3階以上の階にあるもの ・客席の床面積が200平方メートル以上のもの ・地階にあるもの |
病院 ホテル 就寝用福祉施設 | ・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が300平方メートル以上のもの ・地階にあるもの |
体育館 博物館 | ・3階以上の階にあるもの ・床面積が2,000平方メートル以上のもの |
百貨店 飲食店 | ・3階以上の階にあるもの ・2階の床面積が500平方メートル以上のもの ・床面積が3,000平方メートル以上のもの ・地階にあるもの |
外壁調査の対象かどうかを確認する際は、政令で指定されている条件と、特定行政庁で指定されている条件の両方をチェックしましょう。
なお、特定行政庁で指定されている条件は、都道府県もしくは市区町村ごとに異なるため、各特定行政庁のホームページで確認するのがおすすめです。
一般的な住宅は、建築基準法によって定められた外壁調査の対象ではないケースがほとんどです。
ただし、住宅も専門業者による定期的な点検と適切なメンテナンスが必要となります。
10年以内に外壁調査を実施しなかった際の罰則
外壁調査の対象であるにもかかわらず、適切な調査を怠った場合、建築基準法により罰金を課せられるケースがあります。
外壁調査を怠った場合のリスクを理解して、10年以内の外壁調査を徹底しましょう。
【ケース1】罰金
第12条で定められた特定建築物の調査および報告をしなかった場合は、建築基準法第101条によって100万円以下の罰金が課せられます。
また、虚偽の報告をした場合も同様の罰金が課せられます。
- 第五条の六第一項から第三項まで又は第五項の規定に違反した場合における当該建築物の工事施工者
- 第十二条第一項若しくは第三項(これらの規定を第八十八条第一項又は第三項において準用する場合を含む。)又は第五項(第二号に係る部分に限り、第八十八条第一項から第三項までにおいて準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
引用元:e-Gov 法令検索
【ケース2】賠償責任
外壁の落下や倒壊などが原因で他人に損害が生じた際、民法第717条によって建物の所有者が賠償責任を問われるケースがあります。
- 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
- 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
- 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
引用元:e-Gov 法令検索
たとえば損傷した外壁が落下し、歩行者に危害を加えてしまった場合、建物の所有者が損害賠償の責任を負わなければなりません。
【Q&A】外壁調査に関するよくある質問
- 外壁打診調査の対象外となる条件は?
-
外壁打診調査の対象外となる条件は、以下のとおりです。
外壁打診調査の対象外となる条件- 壁面直下に強固な屋根や庇が設置されている箇所
- 植え込みによって災害の危険がないと判断される箇所
なお、判断が難しい場合は各地域の特定行政庁に確認しましょう。
- 建物の外壁が劣化しているサインは?
-
建物の外壁が劣化しているサインとして、外壁のひび割れや塗装の剥がれなどが挙げられます。
外壁の劣化を放置すると、外壁材の損傷や落下を招くほか、建物の躯体に大きなダメージを与えてしまいます。
大きな損傷を防ぐためにも、適切なタイミングで外壁調査を実施することが重要です。
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