目次
外壁のコーキングの役割とは?
外壁コーキングは以下のように、建物の保護と防水性において重要な役割を果たしています。
- 外壁材の緩衝材としての機能
- 雨水の侵入を防ぐ防水材としての機能
また、「コーキング」と「シーリング」の違いについても解説します。
コーキングの役割その1. 外壁の緩衝材としての機能
外壁コーキングは、建物の外壁材の接合部分に使用され、緩衝材としての役割を果たします。これにより、温度変化や振動による外壁の動きを吸収し、ひび割れや破損などを防ぎます。
とくに、サイディングやモルタルといった外壁材は経年劣化や外部の衝撃に弱いため、コーキングが適切に施工されていることが重要です。
結果として、建物の耐久性を高め、長期間にわたって外壁の見た目と機能性を維持しています。
コーキングの役割その2. 雨水の侵入を防ぐ
外壁コーキングのもう一つの重要な役割は、雨水の侵入を防ぐことです。外壁の接合部分や目地にコーキングをすることで、外壁材同士の隙間やサッシまわりなどの開口部からの雨水が建物内部に入り込むのを防ぎます。
とはいえ、外壁の内側には透湿防水シートと呼ばれる防水紙が貼られているので、コーキング劣化が直接的な原因で漏水することは多くありません。
ですが、外壁など他の部材に悪影響が出るため、注意が必要です。
施工の不備によっては、漏水する可能性はあるため、コーキングの定期的なメンテナンスは必要です。
コーキングとシーリングの違いとは?
コーキングとシーリングは、意味的には同じです。
強いていえば、英語にするとコーキングが(詰める)シーリングが(密閉する)といったイメージの違いがあります。
実際に建築現場では「シーリング」といわれることが一般的で、呼び方は『コーキング剤』や『シーリング材』、『シール』、『シーラント』などさまざまです。
外壁コーキングの寿命はどのくらい?
外壁コーキングはグレードによって耐用年数が異なります。
通常品と高耐久品の違いを理解することで、メンテナンスの適切な時期を計画しやすくなります。
一般的なコーキングの寿命は7〜10年
外壁コーキングの寿命は一般的には7年〜10年程度で、環境条件により劣化速度が異なります。
期間を過ぎると、劣化が進み、ひび割れや剥離、色あせなどの問題が発生しやすくなります。
定期的な点検と、劣化の兆候が見られた際には早めの打ち替えを検討するのがおすすめです。
とくに、コーキングにひび割れや剥がれが見られる場合は、すでに赤信号です。
早急にメンテナンスを行うことで、建物全体の劣化を防止しましょう。
高耐久のコーキングの寿命は15~20年
寿命は15〜20年で、長期間にわたって効果を発揮します。
高耐久品のコーキングは、通常品よりも耐久性が高く、紫外線に対しても強い製品です。また塗料の耐用年数と合わせるため、外壁塗装と一緒に施工する場合には高耐久品がおすすめです。
初期費用はやや高くなりますが、メンテナンスの頻度が少なく済むため、長期的にコストパフォーマンスは良くなります。
外壁の美観を長く保ち、雨や紫外線などの外的要因から家を守るためにも、高耐久品の使用がおすすめです。
コーキングの劣化症状とその原因
コーキングの劣化は、建物の美観や機能に大きな影響を与えるため、早期に発見して対処することが重要です。
劣化が進むと下記のような劣化症状があらわれます。
症状 | 原因 |
剥離 | 施工不良や経年劣化、目地拡大 |
目地切れ | 経年劣化と目地拡大 |
白化(チョーキング) | 紫外線劣化と経年劣化 |
ひび割れ(クラック) | 紫外線劣化と経年劣化 |
色あせ | 紫外線劣化と経年劣化 |
風化 | 劣化の放置 |
それぞれの症状と原因を見ていきましょう。
外壁とコーキングの剥離
外壁コーキングは施工不良や劣化が原因で、外壁から剥がれることがあります。
施工不良の場合、新築から5年以内に剥離することが多く、そのほとんどの原因がプライマーの塗布ムラです。
プライマーはコーキングと外壁の接着強度を高めるための接着剤のような役割を担っています。これがないと、目地の拡大収縮に追従できず、剥がれてしまうのです。
目地の拡大収縮は、温度変化によるサイディングの膨張と収縮や地震などによる振動で発生します。
コーキングの劣化が原因の剥離は、経年でゴムが固くなってしまい、外壁の動きに追従できなくなることで発生します。
いずれにせよコーキングの剥離を放置すると、雨水が外壁の内側へ浸入し、建物にダメージを与える可能性があるため、早めの対処が必要です。
コーキングの目地切れ(コーキングそのものが破断すること)
目地切れは経年でゴム弾性が失われることで、コーキングの真ん中から目地が破断する現象です。
コーキングには多くの場合、「可塑剤(かそざい)」といわれる成分が入っており、コーキングに弾性を与える効果を持っています。
ですが、可塑剤は経年で抜け出てしまう特性があるため、経年でコーキングの弾性が失われていきます。
よって外壁の動きに追従できず、コーキングに負荷がかかることで目地切れが発生するのです。
可塑剤の配合されていない(または流失しない)『ノンブリードコーキング』や、『NB(エヌビー)』という表記のある製品を使うことです。
ノンブリードコーキングの場合、経年でも弾性が失われにくく、長期にわたって動きに追従できます。
コーキングの白化(チョーキング)
コーキングの表面が白く粉を吹いたようになる現象を、白化(チョーキング)と呼びます。
紫外線や雨風にさらされることでコーキング材が劣化し、表面の樹脂成分が分解されて発生します。
白化は、コーキングの劣化を示すサインのひとつで、美観を損ないます。
防水性能に影響はないもの放置すると劣化が進行し、目地切れや剥離につながる可能性があるため、定期的なチェックが必要です。
コーキングのひび割れ(クラック)
コーキングにひび割れが発生することをクラックと呼びます。
コーキングのひび割れは白化(チョーキング)と同様、紫外線や雨風にさらされることで発生します。
初期は微細なクラックで、コーキングを近くで観察しなければわかりませんが、劣化が進行するとひび割れが大きくなり、放置することで目地切れにつながります。
コーキングの色あせ
色あせは、コーキングの色が薄くなり、元の鮮やかさを失う現象です。主に紫外線や風雨による影響で起こり、原因は先に説明した可塑剤が抜けることです。
色あせ自体は機能に大きな影響を与えるわけではありませんが、美観を保つためには新たなコーキング材への打ち替えを検討した方がいいでしょう。また、色あせとともに弾性が失われていることも考えられるため、業者へチェックしてもらうのもいいでしょう。
コーキングの風化
風化とは、コーキングが徐々に劣化し、ボロボロと崩れていく現象です。これまで紹介した劣化を放置し続けると、風化し、コーキングがなくなってしまいます。コーキングの役割である防水性や緩衝材としての機能が完全に失われてしまうのです。
この状態に至ると、外壁の耐久性が著しく低下し、建物全体に悪影響を及ぼす可能性が高まります。
風化が見られた場合は、速やかに打ち替えを行うことが必要です。
コーキングの施工方法の種類
外壁コーキングの施工方法には、大きく「打ち替え」と「打ち増し」の2つがあります。
一般的には、打ち替えを施工しますが、どちらの方法を選ぶかは、コーキングの劣化状況や予算によって決めるといいでしょう。
主な施工方法は以下の通りです。
施工方法 | 詳細 |
打ち替え | 既存のコーキングをカッターなどで撤去し、新しいコーキング剤を充填すること |
打ち増し | 既存のコーキングの上から、新しいコーキング剤を充填すること |
では、それぞれの工事の特徴紹介します。
コーキングの打ち替え
打ち替えは、劣化した既存のコーキングを取り除き、新しいコーキング剤を充填する方法です。
この方法は古いコーキングが劣化しきっている場合や、目地全体にダメージが広がっている場合に選ばれます。
打ち替えを行うことで、外壁の防水性能が再び高まり、長期的な耐久性を確保できます。
また外壁材との密着性も再び良好になり、外壁との追従性も上がります。
コーキングの打ち増し
打ち増しは、既存のコーキングの上から新たにコーキング材を充填する方法で、既存のコーキングはまだ機能しているものの、表面に劣化が見られる場合に適しています。
打ち増しは、施工が比較的簡単で費用も抑えられるのが特徴です。
しかし、劣化の進んでいる部分が残ったままになるため、完全な耐久性の復元は期待できません。
また、コーキングを撤去する際にその周辺を傷つけてしまいがちな「サッシまわり」や「入隅部」では、打ち増しがおすすめです。
外壁コーキングの補修費用
外壁コーキングの補修費用は、使用するコーキング材のグレードや施工方法によって大きく異なります。
コーキングの劣化状況を踏まえ、どの工事が必要なのかを明確にし、業者と相談の上、施工方法を決めていきましょう。
材料と施工方法 | 費用相場(mあたり) |
一般品+打ち替え費用 | 700〜1000円 |
一般品+打ち増し費用 | 500〜700円 |
高耐久品+打ち替え費用 | 900〜1300円 |
高耐久品+打ち増し費用 | 700〜1100円 |
外壁塗装をする場合、コーキング以外に以下のような費用がかかってきます。
- 塗装費
- 洗浄費
- 足場代
- 人件費
- 運営費(交通費など)
コーキング代を含め、1棟で60〜100万円の費用がかかります。
コーキングのグレードごとの相場
コーキング材には、通常品と高耐久品の2つのグレードがあります。
通常品は比較的安価で、材料のみの相場は1mあたり100~200円程度です。
一方、高耐久品は耐久性が高く、相場は1mあたり300~500円とやや高めです。
たとえば、目地が300mの戸建て物件の材料費と耐用年数の例
グレード | 費用(材料) | 寿命 |
通常品 | 3〜6万円 | 7〜10年 |
高耐久品 | 9〜15万円 | 15〜20年 |
使用するグレードによって、施工後の耐用年数が変わります。
高耐久品を使うと初期費用はかさみますが、メンテナンスサイクルを伸ばせるため、20〜30年の長期的な目線で見ると、コストを抑えられます。
外壁塗装と一緒にコーキング打ち替えをすべき3つの理由
外壁塗装を行う際には、コーキングの打ち替えも一緒に行うといいでしょう。
なぜなら、塗装と同時にコーキングを打ち替えることで、施工費用の節約ができるからです。
ここから、外壁塗装と一緒にコーキングを打ち替えるべき3つの理由を紹介します。
理由①足場や養生費用などが二重でかかるため
外壁塗装とコーキング打ち替えを別々に行うと、それぞれの作業で足場や養生の設置費用が発生します。
これらの費用は通常、作業全体の約20~30%を占めるため、二重にかかることで無駄な出費が増えることになります。
一度に両方の作業を行えば、足場の設置や撤去が一度で済み、全体の工事費用を大幅に抑えることが可能です。
また、塗料とコーキングのグレードを合わせることで、次回の補修時期を合わせやすくなります。
理由②色を合わせて施工できるため
外壁塗装と同時にコーキングの打ち替えをすることで、それぞれの色を合わせた施工が可能です。
コーキングの色は、外壁の塗装と合わせることで、コーキング上の塗料がひび割れても目立ちにくくできます。
また、色を合わせることで、コーキング上の塗料の割れを避ける工法である「後打ち工法」を施工できます。
理由③塗料とコーキングの寿命を揃えられるため
外壁塗装とコーキング材の寿命は、コーキングの方が短い傾向にあります。
たとえば、塗料の期待寿命が15年、コーキングの期待寿命が10年だった場合、将来的にコーキングを先に打ち替える必要が出てきます。
そうなると、コーキングと塗装の工事時期がずれてしまうので、2回施工することになってしまい、二重に費用がかかってしまいます。
ですが塗料の期待寿命が15年、コーキングの期待寿命が15年の材料で施工すれば、次回の工事時期を同じタイミングで行えるため、1度の工事で両方を施工できます。
結果的に工事費用を抑えることができるのです。
外壁のコーキングの打ち替えに火災保険は適用できる?
外壁のコーキング打ち替えに火災保険が適用されるかどうかは、多くの方が気になるポイントです。
一般的には、火災保険は火災や自然災害による損害に対する補償を目的としているため、コーキングの打ち替えに火災保険を適用できるケースは少ないといえます。
とはいえ、下記のようなケースでは、適用できる場合もあるので、相談してみましょう。
自然災害による外壁材の張り替える場合
たとえば、台風による飛来物でサイディングが損傷したとしましょう。
自然災害による被害なので、サイディングの張り替えには火災保険が適用になります。よってそれに伴うコーキングに関しても火災保険の適用となることでしょう。
結果的に、火災保険を利用してコーキングの打ち替えをしてもらえますが、全体の修繕というわけでなく、自然災害によって損傷を受けた一部のみの修繕となります。
外壁のコーキング工事で把握しておくべき注意点
外壁のコーキング工事を行う際には、以下5つの注意点を把握しておきましょう。
- 塗料に悪影響が出ないコーキングを使う
- 塗料とコーキングとの密着性
- コーキング上の塗料の割れリスク
- 冬場の工事は時間がかかる
- コーキングが剥がれたときは補償してもらえるのか
適切なコーキング材を使用し、塗料との接着相性を確認することはもちろん、施工時期や保証内容についても把握しておくことが必要です。
それではそれぞれを詳しく見てみましょう。
①塗料に悪影響の出ないコーキングが使われているか確認
コーキング材によっては、使用する塗料に悪影響を与える場合があります。これは、冒頭で解説しました、「可塑剤」が大きく影響してきます。
可塑剤の特徴として、経年で抜け出すことを解説しました。厄介なのが、可塑剤が抜け出すと、それに密着している塗料へ移行してしまう性質もあるのです。
コーキング上の塗料へ可塑剤が移行すると、表面がベタつき、汚れが付着します。
そうなると、目地上だけ汚れてしますので、美観を大きく損なってしまうのです。
外壁塗装を行う場合は、ノンブリードタイプのコーキングを使いたいことを、業者へ伝えてもよいでしょう。
②塗料とコーキングの接着相性を確認
コーキングと塗料の接着相性は、施工後の仕上がりに大きく影響します。
相性が悪いと、塗料が剥がれやすくなり、見た目に大きな問題が生じる可能性があります。
外壁塗装とコーキング工事を同時に行う場合は、塗料とコーキングの相性を事前に確認しておくことが重要です。相性確認は施工前に業者に確認し、適切な組み合わせを選びましょう。
③コーキング上の塗料の割れリスクを確認
コーキング上に塗装を施す際、コーキング剤との柔軟性が異なるため塗料が割れるリスクが考えられます。
たとえば、気温の変化や外的要因によって、目地幅が拡大収縮され、塗料が割れてしまいます。
このようなリスクを防ぐためには、全体を塗装した後にコーキングを塗料と同じ色で充填する『後打ち工法』をするといいでしょう。
後打ち工法は、通常の工法と比べ、養生や施工に手間がかかるため施工費用も高額になることが考えられます。
④冬場の工事は時間がかかることを確認
冬場にコーキング工事を行う場合、通常よりも時間がかかることがあります。住宅に使われるコーキングは1成分系コーキングと呼ばれる種類で、空気中の水分と反応して硬化していきます。
寒冷な気候で低湿度だとコーキング材が硬化しにくく、次の作業工程に進められません。
コーキングが硬化していないと、コーキング上の塗料にしわがよったり、割れたりすることが考えられるのです。
とくに急を要さない工事の場合は、温暖な季節に施工を検討するといいでしょう。
⑤コーキングが剥がれた場合の保証内容・保証期間を確認
工事の保証内容・保証期間は業者によってさまざまです。
施工業者と元請けの連名で、コーキングの剥離まで保証することもあれば、メーカーの物性保証のみを出す場合もあります。
結果的に、保証については業者によって異なるため、契約時にしっかりと保証内容の範囲や、保証期間を明確にしておく必要があります。
近年、リフォーム会社ごとにオリジナルの保証を出しているところも少なくないため、いろいろな業者へ相談したり、HPを調べるといいでしょう。
コーキングに意図しない不具合が出た場合に備えて、施工業者は、施工後何年まで責任をもって補修してくれるのかなど確認しておくと良いでしょう。
外壁コーキングの劣化を放置した場合のリスク
外壁コーキングが劣化した場合、適切に補修しないと、以下のような深刻な問題が発生します。
- 剥離箇所からの雨水侵入による雨漏り
- 白化やひび割れで美観を損なう
- サイディングの反りや浮き
では、一つずつ見てみましょう。
リスク①剥離箇所からの雨水侵入による雨漏り
コーキングが劣化すると外壁との接着が弱まり、剥離箇所が生じます。
最悪の場合、雨水が建物内部へ侵入し、雨漏りが発生するリスクが高まります。
雨漏りは、建物の構造部分にダメージを与えるだけでなく、カビや腐食を引き起こし、健康被害や修理費用の増加につながるため、剥離が見られたら早急にコーキングの補修を行うことが重要です。
リスク②白化やひび割れで美観を損なう
コーキングの劣化により、表面が白化(チョーキング)したり、ひび割れが生じると、外壁の美観を著しく損ないます。
住宅の外観が重要視される場合、美観の低下は資産価値にも影響を与える可能性があります。外壁の美観を維持するためにも、劣化が見られたら早めに対策をとりましょう。
リスク③サイディングの反りや浮き
劣化したコーキングを放置すると、外壁材であるサイディングが反ったり、浮いたりする現象が発生するかもしれません。
なぜなら、コーキングの劣化を放置すると、サイディング内側に雨水が入るため、このような悪影響が出てしまいます。
こうした問題が進行すると、修復が難しくなり、費用も高額になるため早めの対応が必要です。
Q&A 外壁のコーキングの施工でよくある質問
外壁コーキングに関するよくある質問について、以下で詳しく解説します。
- 外壁コーキングはDIYでできる?
-
コーキングの打ち替えには適切な材料と工具、そして一定の技術が必要です。
防水性能にも関わることなので、初心者の方にはおすすめできません。
- 雨の日のコーキング施工はいいの?
-
目地が濡れていると接着が阻害されることがあるため、雨の日の施工はNGです。施工後に雨が降るのは問題ありません。
※雨が降って工事が延期されたとしても、追加費用は発生しません。
外壁リフォームの業者選びで後悔しないために
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