2024年05月08日更新

監修記事

アスベスト屋根は危険?見分け方のコツや解体費用の相場を解説

アスベストはかつて、軽く、耐熱・耐火・防音・絶縁性に優れた「夢の素材」と言われており、世界中で幅広い製品に使用されていました。
ですが現在では、アスベストの吸入が深刻な健康被害の原因となることが分かり、2012年には全面的に使用禁止となっています。
ここではアスベストが多く使用されていた屋根材について、その危険性や見分け方など、詳しく解説します。

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アスベスト屋根の見分け方を画像付きで解説

【見分け方1】建てた年を確認する

2004年に重量の1%を超えるアスベストを使用した建築建材の製造、輸入が禁止になっています。
そのため、2004年以降に建てた住宅であれば、アスベストを使用した屋根材が使用されていることはありません。
後に紹介する方法は少し手間がかかるため、まずは建てた年を確認することを最初に行うことをおすすめします。

2003年から2004年にかけて建設している場合は、建設会社に購入時期や品番を確認することが良いでしょう。

【見分け方2】屋根材を確認する

アスベストが含まれている屋根材の種類は「スレート」「セメント瓦」「粘土以外の瓦」です。
お住まいの住宅の屋根材がこれ以外であれば、アスベストが含まれている可能性はかなり低くなります。
ですが、これらを見た目だけで判断することは難しく、自己判断はおすすめできません。
可能であれば商品名の詳細や、製造番号がわかれば、国土交通省のホームページや日本石綿協会で調べることができます。

【見分け方3】屋根の状態を確認する

アスベストが含まれてない場合は、築10年程度経過すると小さなヒビが生じることが一般的です。
ですが、アスベストは夢の素材とも呼ばれていたように、健康被害があること以外はとても高性能な素材です。
そのため、築年数が経っているにも関わらず「ひび」「割れ」「欠け」などの不具合が起きていない場合、アスベストが含まれてる可能性が高くなります。

屋根の状態であれば見るだけでも確認できるため、一番簡単な方法です。

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アスベストを含むスレート屋根

【アスベスト含有屋根1】コロニアル(スレート材)

画像出典:ケイミュー-石綿に関する見解書より

コロニアルは「クボタ」で販売されていたスレート屋根です。

2024年現在、クボタは松下電工と事業継承し「ケイミュー株式会社」と会社名を変更しています。

コロニアルの主成分はセメントで、セメント同士を強固に固める素材としてアスベストが使用されていました。
製品名がいくつかありますが、1961年から2001年までに製造されていた商品にアスベストが含まれています。
当時、コロニアルは多くの住宅で採用されており、シェアも高かったためアスベスト屋根材として多くの方が思い浮かべる商品となっています。
現在では、「コロニアルグラッサ」や「コロニアルクァッド」としてノンアスベストの商品を販売しています。

【アスベスト含有屋根2】アーバニー(スレート材)

画像出典:ケイミュー-石綿に関する見解書より

こちらも「クボタ」で販売されていたスレート屋根のひとつです。
一般的なスレート屋根とは異なり、ランダムに配置されたおしゃれさと表情のある見た目が人気の屋根材でした。

1982年から2001年まで製造されていた商品にアスベストが含まれていますが、規制を受けて製造年数が新しいほど、アスベストの含有量が低くなっています。

禁止になってからの「アーバニーグラッサ」にはアスベストが含まれていませんが、一方で屋根材が割れやすくなるなどの症状が見られたため、2024年現在アーバニーシリーズは販売中止となっています。

【アスベスト含有屋根3】セキスイかわらU(セメント瓦)

セキスイかわらUとは、積水化学工業が生産・販売していた商品のことをいいます。

通常の瓦よりも軽いため、地震の際に倒壊する危険性が少ないなどの理由から多く採用されていました。

かわらUは年数によってアスベストの有無が分かれており、1975年から1990年に製造されたものには含まれており、1990年から2007年には含まれていません。
製造年数が不明な場合は、屋根の様子を見ることで判断できます。

アスベストを含まなくなったかわらUはぜい弱性が顕著に表れており、割れや欠けなどが見られます。

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アスベスト屋根を放置した場合の健康被害

アスベストはその繊維質な特徴から、肺などに長くとどまり健康被害を起こしてきました。

ですが、アスベスト屋根についてはひどい劣化症状がないかぎり、すぐに葺き替えを行わなければならないということはありません。
アスベスト屋根に含まれているアスベストは中に練りこまれており、飛散する可能性がとても低いためです。

危険性を表すレベルも、アスベスト吹付のレベル1と異なり、アスベスト屋根はレベル3です。

また、アスベスト屋根はアスベストの特徴により、とても丈夫な材料として流通したため、劣化が起きにくいことも対策を急ぐ必要がない理由の1つとなっています。

アスベスト屋根と判明しても、焦らず対応しましょう。

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アスベスト屋根の工法別リフォーム方法

【工法1】カバー工法

メリットデメリット
・費用が抑えられる
・工期が短い
・アスベストの問題の根本解決はしない
・後々アスベスト屋根を撤去する場合に高額となる
カバー工法のメリットデメリット

カバー工法はその名の通り、アスベスト屋根を覆う様に新しい屋根材を重ねる工法です。

屋根材の下地が痛んでいないことが施工できる条件ですが、既存アスベスト屋根の処分費用がかからないため、費用を抑えることができます。

また、解体をする手間がないため、工期も短めで済むこともメリットです。
ですが、アスベスト屋根を撤去していないため、アスベスト問題の根本解決にはなっていません。

将来的にアスベスト屋根を取り除く場合は、カバー工法で重ねた屋根材も撤去する必要があるため、総合的な費用は高くなります。

【工法2】葺き替え

メリットデメリット
・アスベスト屋根が完全に撤去されるので安心
・カバー工法よりも屋根の重さが軽減される
・工期が長い
・費用が高め
葺き替えのメリットデメリット

葺き替えは、既存屋根材を取り除いて新しい屋根材を取り付けるため、アスベスト屋根を完全に撤去することができる工法です。

アスベスト屋根は破損がない限り飛散することがないため、基本的に被害は少ないですが、それでも安心したい方におすすめの工法となっています。

ただし、アスベスト屋根の撤去を行うことで、工期や費用が高くなる傾向にあります。

撤去する際は、破損などしないように慎重に工事してくれる業者に依頼することも重要です。

【工法3】塗装

メリットデメリット
・費用が抑えられる
・工期が短い
・アスベスト屋根は残ってしまう
・アスベストが飛散する可能性がある
塗装のメリットデメリット

3つの工法の中で撤去も、新しい屋根材も必要ないため、最も費用と工期を抑えることができる方法です。

ですが、塗装は下準備で高圧洗浄が必要となっており、その際に塗膜が剥がれ、アスベストが飛散する危険性があります。
そのため、あまりおすすめできる工法ではありません。

塗装はあくまでも屋根の表面を補強することしかできず、アスベストの根本解決にもならないため、他2つの工法を検討するようにしましょう。

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アスベスト屋根の解体と処分にかかる費用

坪数費用
20坪約198,000~330,000円
30坪約297,000~495,000円
40坪約396,000~660,000円
50坪約495,000~825,000円
坪数別アスベスト処分費用

アスベストを含むスレート屋根の処分には、1平方メートルあたり約3,000円~5,000円かかります。
一般的に建築建材を処分するためには、解体する手間と運搬費がかかりますが、上記の金額にはこの費用が含まれています。

実際には、撤去するために足場を設置する必要がありますが、そちらは新規屋根材を設置する際にも使用しますので、解体処分費には含んでいません。

ですが、足場費用は1,000円/㎡程度ですので、処分費と考えておけば予算に余裕を見ることができるでしょう。

アスベスト屋根の解体や処分が高額になってしまう理由は?

アスベストは撤去の際に特別な使い捨て防護器具は必要であり、その器具代は処分費に追加されています。

また、破損すると飛散してしまうため、飛散防止のために散水し、破損しないように丁寧に撤去する必要があります。
最後に処分する際も二重に梱包し、アスベスト処分のできる特定の処理場にお願いする必要があります。

そのような特別な工程をいくつか必要とするため、アスベスト屋根の処分は高額になってしまいます。

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アスベスト作業は資格が必要?

アスベストの取り扱いには、資格が必要です。

以前は一部の作業は無資格でも可能でしたが、健康被害の問題から2021年以降、大気汚染法の改正により有資格者のみがアスベストを取り扱うことになりました。

資格は、アスベスト作業の計画、現場の指揮監督が行える「石綿作業主任者」と、アスベスト作業に必ず必要な「石綿取扱作業従事者」があり、前者を持っているものは後者の資格は必要なくなっています。

また、2023年からアスベストの有無を事前調査することが義務付けられており、その調査には「石綿含有建材調査者」の資格が必要です。

解体を依頼する業者がこれらの資格を持っているか、きちんと確認することで、悪徳業者かどうか判断する手掛かりにもなります。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】久田麻里子

2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。

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