目次
マンションの耐震補強工事とは
マンションの耐震補強工事とは、地震の被害を軽減するために、マンションの耐震性を向上させる工事のことをいいます。
既存のマンションにおける耐震性を計算で求め、その計算結果をもとに、どのような耐震補強工事が必要であるかを検討します。
耐震補強工事の内容を決めるのは、おもに建築士などの専門資格をもつプロです。
そのため、マンションの耐震補強工事の際には、専門資格をもつプロへの相談が必要となるでしょう。
マンションにおける耐震補強工事の工法
マンションの耐震補強工事には、外付けフレーム耐震補強などの工法があります。
ここではマンションにおける耐震補強工事の工法ごとの特徴を学び、所有するマンションでどのような工法を採用するか検討してみましょう。
【工法1】外付けフレーム耐震補強
マンションの耐震補強工事における外付けフレーム耐震補強は、建物の外壁に鉄骨などでできたフレームを設置することで、耐震性の向上をはかる工法のことをいいます。
外付けフレーム耐震補強で設置するフレームは、ロの字型でできています。
また、ロの字の内側にある斜線状の支えの有無によって大きく2種類に分かれており、斜線状の支えのあるタイプが強度も高くなるのが特徴です。
なお、外付けフレーム耐震補強は、既存の建物と外付けフレームを接合する工法であるため、入居者がマンションに住みながら工事できるのも魅力のひとつです。
【工法2】耐震スリット補強
マンションの耐震補強工事における耐震スリット補強とは、建物の壁の一部に隙間をあけることで、柱が地震の衝撃に対応できるような状態をつくる工法のことをいいます。
建物の壁につくった隙間に緩衝材を埋め込めば、建物が地震で揺れた時に、衝撃を緩衝材が吸収するといった効果も期待できます。
また、耐震スリット補強は建物の外観を大きく変えずに工事できるため、マンションの美観を損なわずに済むのも魅力です。
【工法3】連続繊維巻き補強
マンションの耐震補強工事における連続繊維巻き補強とは、アラミド繊維や炭素繊維でできたシートを、建物の柱などに巻きつけて耐震性の向上をはかる工法のことをいいます。
連続繊維巻き補強で使うシートなどは、鉄骨や鋼板よりも軽量であるため、重機を使用せずに搬入できます。
そのため、工事時の騒音が発生しないほか、重機の搬入・設置に必要なスペースを確保しなくて済むのも魅力です。
【工法4】後打ち壁増設
マンションの耐震補強工事における後打ち壁増設とは、マンションの外部・内部に壁を追加する工法のことをいいます。
マンションに増設する壁は、既存の壁と一体化させることで耐震性の向上が期待できます。
ただし既存のマンションよりも壁が多くなると、間取りや部屋の明るさが変わってしまうかもしれません。
そのため、マンションの耐震補強工事で後打ち壁増設を採用する場合は、工事後の建物における変化について、あらかじめ検証しておく必要があります。
【工法5】鉄骨枠組補強
マンションの耐震補強工事における鉄骨枠組補強とは、柱と梁で囲まれたロの字型のなかに、斜線状にブレース(筋交い)を設置する工法のことをいいます。
ブレースを設置することで、マンションの柱や梁を支える力が加わり、地震時における柱や梁が壊れてしまうリスクを軽減できるでしょう。
ただし鉄骨枠組補強でブレースを設置すると、建物の外観が変わるなどの影響もでる場合もあるため、工事後の建物における変化もあらかじめ検討しておくことが大切です。
マンションの耐震補強工事にかかる費用
マンションの耐震補強工事にかかる費用は、延べ床面積によって異なり、150平方メートルで470万円が目安です。
建物の延べ床面積 (平方メートル) | 費用相場 (3〜5階建ての場合) |
---|---|
150 | 470万円 |
200 | 530万円 |
300 | 640万円 |
500 | 820万円 |
750 | 990万円 |
1,000 | 1,130万円 |
ただしマンションの耐震補強工事にかかる費用は、建物の形状や工事の工法などによっても大きく変動する点に注意しましょう。
引用元:耐震改修の工事費の目安(国土交通大臣指定耐震改修支援センター)
マンションの耐震補強工事で活用できる補助金・助成金制度
国や地方自治体における補助金・助成金制度のなかには、マンションの耐震補強工事でも活用できる制度があります。
たとえば、千葉県千葉市では、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建設された分譲マンションにおいて、耐震診断にかかる費用の一部を補助しています。
【補助額】耐震診断費用の3分の2
※以下の金額を上限とし、当該年度の予算の範囲内で補助します。
・予備診断1棟あたり3万4千円または1管理組合あたり17万円のいずれか低いほうの金額
・本診断1管理組合あたり400万円、または次のア、イ、ウの合計の3分の2
ア 補助対象床面積のうち「1,000平方メートル以内の部分の面積×3,670円/平方メートル」
イ 補助対象床面積のうち「1,000平方メートルをこえて2,000平方メートル以内の部分の面積×1,570円/平方メートル」
ウ 補助対象床面積のうち「2,000平方メートルをこえる部分の面積×1,050円/平方メートル」
ただしこのような補助金・助成金制度を活用するには、制度ごとの交付条件などを満たさなければいけません。
そのため、マンションの耐震補強工事で補助金・助成金制度を活用したい場合は、あらかじめ制度ごとの概要を確かめておくことが大切です。
マンションの耐震補強工事にかかる費用を抑えるコツ
マンションの耐震補強工事にかかる費用を抑えるには、複数の業者で相見積もりをとるなどの方法が有効です。
ここではマンションの耐震補強工事にかかる費用を抑えるコツについて学んで、高額な費用を少しでも抑えられないか検討してみましょう。
【コツ1】税制の優遇制度の活用を検討する
マンションの耐震補強工事で、固定資産税が減額されるなどの、税制の優遇制度を活用できるかもしれません。
- 昭和57年1月1日以前から存在する家屋である
- 現行の耐震基準に適合する耐震改修である
- 耐震改修工事費が、50万円(税込)をこえている
- 併用家屋の場合、床面積の2分の1以上が居住用である
- 改修工事を令和8年3月31日までに行っていること
ただし税制の優遇制度を活用するには、制度ごとの条件を満たす必要がある点に注意しましょう。
【コツ2】融資制度の活用を検討する
マンションの耐震補強工事の際には、住宅金融支援機構などにおける融資制度を活用できる場合もあります。
融資制度を活用すれば、耐震補強工事にかかる費用の負担を軽減でき、計画的に返済できます。
ただしマンションの耐震補強工事で融資制度を利用するには「都道府県や市区町村の認定を受けた耐震改修計画にしたがう」などの条件を満たさなければいけません。
そのため、融資制度を活用したい場合は、あらかじめ制度ごとの条件などを確かめておくことが大切です。
【コツ3】複数の業者で相見積もりをとる
マンションの耐震補強工事にかかる費用は、業者ごとに異なるため、複数の業者で相見積もりをとることで、より安く工事できる業者に依頼できます。
1社だけで見積もりをとると、見積金額の比較ができず、相場よりも高い費用がかかってしまうかもしれません。
お住まいの地域において、マンションの耐震補強工事が可能な業者を見つけ、相見積もりを進めてみましょう。
マンションにおける耐震補強工事の注意点
マンションの耐震補強工事の際には、重機の搬入場所の確保が必要になるなどの点に注意しなければいけません。
ここではマンションにおける耐震補強工事の注意点について理解し「仮住まいの確保で予想以上に費用がかかった」などのトラブルを回避しましょう。
【注意点1】居住者の仮住まいが必要になる場合も
マンションの耐震補強工事は、数か月〜半年の工期になる場合もあるため、入居者の仮住まいを確保する必要があるかもしれません。
たとえば、マンスリーマンションを3か月間利用した場合、約128万円も費用がかかります。
費用項目 | 費用目安 |
---|---|
マンスリーマンション賃料 | 1,008,000円 (336,000円×3か月分) |
清掃費など初期費用 | 43,000円 |
和布団セットレンタル料 | 24,600円 (8,200円×3人分) |
Wi-Fiモバイルルーター利用料 | 12,000円 (4,000円×3か月分) |
引越し費用 | 200,000円 (100,000円×2回分) |
合計 | 1,287,600円 |
そのため、マンションの耐震補強工事の際には「予想外の費用が発生した」とトラブルにならないように、仮住まいの利用にかかる費用も予算に含めておくことが大切です。
【注意点2】工事後に部屋が暗くなるおそれも
外付けフレーム耐震補強など、マンションの外側に巨大な柱などを建てる工法の場合、工事後に部屋が暗くなるおそれもあります。
そのため、マンションの耐震補強工事の工法を検討する際には、部屋の明るさが変わることはないかも検証しておかなければいけません。
もし耐震補強工事によって部屋の明るさが変わる可能性もあるなら、入居者にあらかじめ説明し、理解を得ておく必要もあります。
工事後に「部屋が暗くなった」と入居者とトラブルにならないよう、耐震補強工事による部屋の明るさへの影響をあらかじめ検討しておきましょう。
【注意点3】重機の搬入場所の確保が必要になる
マンションの耐震補強工事の際には、重機の搬入が必要になるため、駐車場や敷地内のスペースで重機の搬入・設置する場所を確保しなければいけません。
たとえば、マンションの駐車場に重機を搬入する場合、入居者の駐車場を別の場所に確保する必要があります。
そのため、駐車場の確保にかかる費用も必要になるため、耐震補強工事の予算にあらかじめその費用を含めておくことが大切です。
【注意点4】工法によっては建物の外観が変わる
マンションの耐震補強工事によって、X・V字型の鉄骨が設置され、建物の外観が変わってしまう場合もあります。
外壁に設置した鉄骨の数や配置によっては「マンションの美観が損なわれてしまった」と、業者とトラブルになってしまうかもしれません。
そのため、マンションの外観を大きく変えたくない場合は、耐震スリット補強のように、鉄骨などを配置しない工法の採用も検討してみましょう。
マンションの耐震補強工事における業者選びのポイント
マンションの耐震補強工事における業者を選ぶ際には、耐震補強工事の実績が豊富であるかなどのポイントをチェックするのがおすすめです。
ここではマンションの耐震補強工事における業者選びのポイントについて学んで「相場よりも高い金額を請求された」などのトラブルを回避しましょう。
【ポイント1】耐震補強工事の実績が豊富であるか
マンションの耐震補強工事の実績が豊富な業者に依頼すれば、多くの物件を担当したことで得た経験や知識から、最適な工事のプランを提案してもらえるでしょう。
マンションの耐震補強工事には、外付けフレーム耐震補強などの工法が何種類かあります。
そのため、耐震補強工事をする際は、何種類かある工法から、建物の強度や構造にあわせて最適な工法を選ばなくてはいけません。
採用する工法によって費用や強度も変わるため、マンションの耐震補強工事をするなら、豊富な経験・知識から最適な工法を提案してもらえる業者に依頼しましょう。
【ポイント2】マンションや耐震補強に関する専門資格があるか
マンションや耐震補強に関する専門資格があれば、国などに「一定以上の経験や知識がある」と認められているため、専門性の高い提案が期待できます。
- 耐震診断資格者
- 耐震改修技術者
- 建築士
- マンション建替士
また、マンションの耐震補強では、建築基準法などの法律の基準を満たす必要があります。
そのため、マンションの耐震補強工事の際には、マンションや耐震補強に関する専門資格があり、法律の基準にそった工事ができる業者に依頼することも大切です。
マンションにおける耐震補強工事の流れ
マンションにおける耐震補強工事の具体的な流れは、以下のとおりです。
図面を参考にして、マンションの構造や間取りなどを調べます。
現地調査の結果などをもとに、マンションの耐震性が現行の耐震基準を満たしているか診断します。
耐震診断の結果をもとに、マンションにおいてどのような耐震補強工事が必要かについて設計します。
耐震補強の設計の内容で、工事にかかる費用を見積もります。
マンションの耐震補強工事にかかる費用を確かめたら、工事を依頼する業者と契約を締結し、具体的な工事日程を決定します。
自治体や審査機関によって、建築基準法の基準にそった工事の内容になっているかを検査します。
【Q&A】マンションの耐震補強工事に関するよくある質問
- マンションの耐震化が進まない理由は?
-
マンションの耐震化が進まないのは「工事でお金がかかること」なども理由として挙げられます。
マンションの耐震化が進まない理由- お金がかかる
- 必要性を実感できない
- 集合住宅などに住んでおり、自分だけでは必要性を判断できない
マンションの耐震補強工事は、費用が高額になりやすく、資金の確保が難しいケースも多い傾向にあります。そのため、マンションの耐震性を向上するためには、資金の確保を進める必要があると言えるでしょう。
- 耐震診断が義務化されているマンションの条件は?
-
耐震診断が義務化されているのは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた分譲マンションです。1981年5月31日以前に建築確認申請を受けた場合は「旧耐震基準」が適用されるため、現行の耐震基準を満たしていない建物もあります。大規模な地震の被害を防ぐために、マンションの耐震診断を実施し、居住者の安全を確保しましょう。
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