

免震リフォームは戸建てでもできるのか?
既存の戸建てでも免震リフォームは可能です。ただし、住宅の構造や地盤、敷地条件などによっては施工できない場合があります。まず耐震診断と建物調査を受けたうえで、免震・耐震・制震の効果、費用、工期を比較し、自宅に適した地震対策を選びましょう。
戸建てを免震リフォームする方法と施工条件
既存住宅を免震化する方法には、基礎下や建物の中間階などに免震層を設ける「免震レトロフィット」があります。ただし、戸建て住宅への導入では、地盤や基礎の状態に加え、施工中に建物を支える方法、免震層が動くための周囲の空間、配管・配線の追従性などを個別に検討しなければなりません。スケルトンリフォームと同時に行う場合でも、免震装置を容易に導入できるとは限りません。耐震診断を受け、耐震補強や制震装置を含む複数の方法を、費用・工期・期待する性能の観点から比較しましょう。免震化を希望する場合は、免震改修の設計実績がある建築士や事業者に調査を依頼してください。

※ 参考1:日本免震構造協会「免震建築とは?」
※ 参考2:日本免震構造協会「免震で安心 ユーザーズマニュアル」

免震・耐震・制震リフォームの違い
住宅の地震対策には、主に「免震」「制震」「耐震」があり、揺れへの対処方法が異なります。既存住宅では耐震改修が基本的な選択肢となり、建物の状態や希望する性能に応じて制震装置や免震化を検討します。

| 工法 | 主な役割 | メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|---|---|
| 免震 | 免震層で地震の揺れを建物へ伝わりにくくする | 建物と室内の揺れを小さくし、構造体の損傷や家具転倒のリスクを軽減しやすい | 既存住宅では基礎、地盤、建物周囲の空間、配管などの制約が多く、費用と工期が大きくなりやすい。完成後も定期点検が必要 |
| 制震 | ダンパーなどが地震エネルギーの一部を吸収し、揺れや変形を抑える | 繰り返す揺れによる建物の変形や損傷を抑える効果が期待できる | 装置の種類・数量・配置で効果が異なる。耐震性能を確認したうえで建物全体として設計する必要がある |
| 耐震 | 壁や柱、接合部、基礎などを補強して地震の力に耐える | 木造住宅で採用しやすい工法が多く、診断結果に応じて補強箇所を選べる | 建物の揺れ自体をなくすものではないため、家具の固定も必要。劣化状況や補強バランスを考慮する |
どの工法でも被害を完全に防げるわけではありません。耐震診断で建物の状態を確認し、希望する性能、予算、工期、将来の点検費用を比較して選びましょう。
免震工事
免震工事とは、建物と地盤の間などにアイソレータやダンパーを設け、地震の揺れを建物へ伝わりにくくする工事です。建物の揺れを小さくすることで、構造体の損傷や家具の転倒リスクを軽減できます。ただし、効果は地震動の特性、地盤、設計、維持管理によって異なり、すべての被害を防げるわけではありません。既存住宅への導入では、基礎や配管、建物周囲の空間なども含めた検討が必要です。

※ 参考:日本免震構造協会「免震建築とは?」
制震工事
制震工事とは、建物内にダンパーなどの制震装置を設置し、地震エネルギーの一部を吸収することで、建物の変形や揺れを抑える工事です。装置にはオイル、粘弾性体、金属、摩擦などを利用する種類があります。必要な装置の数や配置は、建物の構造や耐震性能を確認したうえで設計します。壁を復旧する内装工事も含まれるため、製品価格だけで総費用を判断せず、補強設計と工事範囲を確認しましょう。
耐震工事
耐震工事とは、壁や柱、接合部、基礎などを補強し、地震時の倒壊や損傷のリスクを抑える工事です。筋交いや耐力壁、接合金物などを使うほか、劣化した部材の補修、屋根の軽量化、基礎補強などが必要になる場合もあります。補強方法は建物の構造と耐震診断の結果に応じて選びましょう。
※ 参考:国土交通省「耐震改修の進め方」
免震・耐震・制震リフォームの費用相場
地震対策リフォームの費用は、建物の状態と工法によって大きく変わります。建物調査を受けたうえで、免震・耐震・制震それぞれの工事内容と費用を比較しましょう。
免震リフォームにかかる費用相場と内訳
既存住宅の免震化は、地盤や基礎、建物の構造、免震層の位置、建物周囲の空間、配管・配線の改修範囲などによって工事内容が大きく変わるため、全国一律の費用相場を示すことは困難です。免震改修の実績がある複数の事業者から、設計費、仮設工事、基礎工事、免震装置、内外装の復旧、点検費用を含む見積もりを取りましょう。完成後は、維持管理要領書に従って、毎年の目視点検、竣工後5年・10年・以後10年ごとの計測を含む定期点検、地震や強風の後の応急点検を行います。点検費用は、建物と契約内容によって異なります。

※ 参考:日本免震構造協会「免震で安心 ユーザーズマニュアル」
耐震リフォームにかかる費用相場と内訳
耐震改修費は、耐震診断の評点、建物の規模や劣化状況、補強箇所、仕上げの復旧、足場の有無などによって変わります。現在公表されているモデルケースでは、築50年・2階建て・延べ面積約100㎡の木造住宅を改修する費用は約224万円です。基礎、内壁、外壁、屋根などの部位別費用は、必要な数量と工法が建物ごとに異なるため、耐震診断と補強設計後の見積もりで確認しましょう。
※ 参考:国土交通省「住まいの耐震化」

制震リフォームにかかる費用相場と内訳
制震リフォームでは、ダンパーなどの制震装置を建物の構造に合わせて配置し、必要に応じて壁の解体・復旧や接合部の補強を行います。総費用は装置の種類と数量、補強設計、内装の復旧範囲などで変わります。装置代だけの表示と工事総額を混同せず、耐震診断や構造確認を行ったうえで、複数社の見積もりを比較しましょう。

地震対策リフォームの費用を左右する項目
地震対策リフォームの費用は、建物の構造や規模、劣化状況、地盤、工法、使用する装置、内外装の復旧範囲などによって変わります。耐震診断と補強設計の内容をそろえて複数社へ見積もりを依頼し、工事項目と保証、点検費用まで比較しましょう。
耐震診断や耐震改修への補助制度は自治体ごとに対象住宅、補助額、申請時期が異なり、原則として契約や着工前の申請が必要です。一定の耐震改修は、要件を満たすと所得税や固定資産税の減税対象になる場合があります。2026年度の制度では、所得税の特例は2026年1月1日〜2028年12月31日、固定資産税の減額措置は2026年4月1日〜2031年3月31日が適用期間です。
耐震性能などの条件を満たす住宅は、地震保険料の割引対象になる場合があります。割引の適用条件、割引率、必要書類は契約先の保険会社へ確認しましょう。
※ 参考1:国土交通省「補助金・支援制度について」
※ 参考2:国土交通省「住宅をリフォームした場合に使える減税制度」
※ 参考3:日本損害保険協会「地震保険の保険料の割引制度」
木造住宅ではどのような地震対策が行われているのか?
木造住宅の地震対策では、耐震診断の結果に応じて、耐力壁や筋交い、接合金物、基礎の補強、屋根の軽量化などを組み合わせます。制震装置を設置する場合も、建物全体の構造バランスを確認して配置を決めます。住みながら工事できるケースはありますが、工事範囲によっては仮住まいが必要です。また、2025年4月以降、2階建ての木造戸建てなどで主要構造部の1種以上を過半にわたって改修する大規模なリフォームは、建築確認手続きの対象です。計画段階で建築士や自治体の建築指導窓口に確認しましょう。

※ 参考:国土交通省「リフォームにおける建築確認要否の解説事例集」
地震対策リフォームで気を付けたいこと
大地震に対する安全性を高めるには、耐震診断に基づいて住宅全体を耐震改修することが基本です。費用などの事情で本格的な改修が難しい場合は、寝室や主な居室に耐震シェルターを設けるなど、命を守るための部分的な対策も検討できます。ただし、部分改修では住宅全体が倒壊する危険が残り、地震発生時に別の部屋から避難できない可能性もあります。部分補強によって建物全体のバランスが悪化しないかを専門家に確認し、家具の固定や避難経路の確保もあわせて行いましょう。
家具の倒壊による被害にも対処しておく
建物そのものが地震に耐えても、家具の転倒や移動でけがをしたり、避難経路がふさがれたりするおそれがあります。タンスや棚は、壁の下地や柱にL型金具などで固定しましょう。引き出しや開き戸にはストッパーを付け、ガラスには飛散防止フィルムを貼ることで、内容物の飛び出しや破片の飛散を抑えられます。突っ張り棒を使う場合は、天井の強度と設置位置を確認してください。家具の下にストッパー式器具などを併用すると、より安定しやすくなります。
旧耐震基準の建物には早急な地震対策が必要
新耐震基準は、原則として1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されています。住宅の耐震化率は2023年時点で約90%と推計されていますが、耐震性が不十分な住宅は残っています。旧耐震基準の住宅は耐震診断を受け、結果に応じて耐震改修や建て替えを検討しましょう。また、1981年6月以降の新耐震基準で建てられた木造住宅でも、2000年5月以前のものは接合部などの仕様を確認することが推奨されています。自治体の補助制度は対象となる建築時期や工事、補助額が異なるため、契約前に確認してください。
※ 参考1:国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」
※ 参考2:国土交通省「住宅・建築物の耐震化の現状と目標」
※ 参考3:国土交通省「補助金・支援制度について」
地震対策リフォームの業者の選び方
地震対策リフォームの業者は、資格を持つ専門家が耐震診断を行っているか、自宅と構造が近い住宅の施工実績があるか、費用や工法を具体的に説明してくれるかを基準に選びましょう。近隣や知人に施工経験者がいれば、依頼した業者の対応や工事後の状況を聞くのも判断材料になります。補助金を口実に不安をあおる、相場から大きく外れた金額を示す、必要な工事を省いたプランを勧めるといった業者には注意が必要です。複数社へ同じ条件で見積もりを依頼し、費用・工事範囲・保証・点検内容を比較すると、信頼できる業者を判断しやすくなります。

【Q&A】免震リフォームに関するよくある質問
マンションの大規模修繕で免震化できる?
一般的なマンションの大規模修繕は、外壁や屋上防水、共用設備などの劣化を修繕する工事が中心です。建物を免震化する工事は、建物を支えながら免震層を設ける構造改修となるため、通常の大規模修繕とは分けて検討します。免震改修が可能かどうかは、建物の構造、基礎、地盤、敷地条件、配管などによって異なります。マンションで検討する場合は、管理組合で合意形成を行い、免震改修の実績がある設計者へ耐震診断と改修可能性の調査を依頼しましょう。
新築とリフォームではどちらが免震化しやすい?
一般的には、設計段階から基礎と建物の間に免震装置を組み込める新築の方が、免震化しやすいといえます。既存住宅のリフォームでは、建物を支えながら施工する仮設工事に加え、基礎工事や配管・配線の改修が必要です。そのため、新築に比べて費用が高くなり、工期も長くなる傾向があります。
耐震補強工事と耐震改修工事は何が違う?
耐震改修促進法では、「耐震改修」を、地震に対する安全性の向上を目的として行う増築、改築、修繕、模様替え、一部の除却、敷地の整備と定義しています。一方、「耐震補強工事」は、耐震改修のうち、耐力壁や筋交いの追加、接合部や基礎の補強など、建物の構造を強くする具体的な工事を指すことが一般的です。工事後に現行の耐震基準への適合が必要か、どの証明書が必要かは、利用する補助制度や減税制度の要件によって異なります。申請先と設計者に事前に確認しましょう。
※ 参考1:国土交通省「建築物の耐震改修の促進に関する法律」新旧対照条文
※ 参考2:国土交通省「耐震改修の進め方」
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