目次
鉄筋コンクリート造(RC造)の建物が地震に強い理由
鉄筋コンクリート造は、木造住宅などと比べて地震に強いと言われています。
これは、鉄筋とコンクリートの構造上の特性が耐震性に有利に働くためです。
ここでは、素材の性質を中心に鉄筋コンクリートの建物が地震に強い理由を解説します。
【理由1】コンクリートと鉄筋の組み合わせである
鉄筋コンクリート造は、コンクリートと鉄筋を組み合わせた構造です。
- コンクリート:圧縮力に強い
- 鉄筋:引っ張る力に強い
この2つを組み合わせることで、地震時の揺れや衝撃に対して高い耐性を発揮します。
例えば、地震の横揺れには引っ張り力に強い鉄筋が、縦揺れには圧縮力に強いコンクリートがそれぞれ対応し、建物の倒壊を防ぎます。
このように、お互いの特性をうまく使い分けることで、強固な構造を形成して耐震性を高めることが可能です。
この優れた耐震性が、鉄筋コンクリート造が地震に強いとされる理由のひとつです。
【理由2】耐用年数が高い
鉄筋コンクリート造の建物は、ほかの構造と比較して耐用年数が長い傾向にあります。
国税庁の定める法定耐用年数 では、鉄筋コンクリート造の建物における耐用年数の目安は47年とされています。
これは、木造住宅(22年)や鉄骨造住宅(34年)と比べても長いことから、鉄筋コンクリート造の建物は耐久性が高いといえるでしょう。
- 鉄筋がコンクリートに包まれており、錆びにくい
- コンクリートが劣化しにくい
- 腐食や虫害の影響を受けにくい
また、鉄筋コンクリート造の建物は、木造と異なりシロアリ被害の心配がなく、湿気や乾燥による変形も起こりにくいとされています。
これらのことから、鉄筋コンクリート造の建物が地震や風雨などの自然環境にさらされた場合でも、長期的に安定した強度を維持しやすいといえるでしょう。
【理由3】耐火性がある
鉄筋コンクリート造の建物は耐火性が高いため、火災による建物の倒壊リスクが低いと言われています。
そのため、地震後の二次災害(火災)を防ぎやすいという特徴があります。
- コンクリートは燃えにくい素材である
- 火災時の温度上昇に強く、建物の強度が維持される
コンクリートは有機物を含まないため燃えにくい特性があります。そのため、火災発生時でも炎の広がりを抑えることが可能です。
また、コンクリートの耐火温度は約1,000℃とされており、短時間の火災では大きな損傷を受けにくいので、火災後も安全性を保ちやすいでしょう。
鉄筋コンクリート造の建物における耐震基準
日本の建築基準法における耐震基準(1950年制定)は、過去の大地震を受けて何度も改正され、より厳しくなっています。
特に、1978年に発生した宮城県沖地震で鉄筋コンクリート造の建物が大きな被害に遭ったことで、1981年に「新耐震基準」に改定されました。
旧耐震基準と新耐震基準の耐震性の基準は、以下のように異なります。
- 震度5程度で倒壊、崩壊しない
- 「耐震」重視(揺れに耐える)
- 震度6強~7でも倒壊、崩壊しない
- 「制震・免震」も考慮(揺れを抑える)
なお、2000年の建築基準法改正では耐震基準が厳格化され、地盤の強さや基礎構造の基準が強化されています。
耐震基準は年々変化しているため、対象の建物にどの基準が適用されているのかも理解しておくことが重要です。
鉄筋コンクリート造の建物における過去の被災事例
ここでは、鉄筋コンクリート造の建物の耐震性について、過去の被災事例を踏まえて解説します。
【事例1】阪神・淡路大震災
1995年の阪神・淡路大震災では、神戸市を中心に多くの建物が倒壊し、特に旧耐震基準(1981年以前)の建物に甚大な被害が出ました。
神戸市灘区の構造別の被害状況では、木造が約22,000件に対して、鉄筋コンクリート造が約3,000件と被害が少なめでした。
さらに、木造の全壊率(52.4%)で、鉄筋コンクリート造の全壊率(9.3%)とのデータもあり、地震における鉄筋コンクリート造の建物における耐震性の高さがわかります。
しかし、鉄筋コンクリート造の建物の中には、耐震補強が施されていない1981年以前に建設された建物が大きな被害に遭っています。
この経験から、耐震基準の見直しや耐震補強の重要性が再認識されました。
参照:自治体の被害調査結果に基づく兵庫県南部地震の建物被害関数
【事例2】熊本地震
2016年の熊本地震では、鉄筋コンクリート造の建物は比較的被害が少なかったと報告されています。
新耐震基準で建てられた建物が増え、大きな被害を免れたものが多かった一方で、旧耐震基準の建物は損傷が目立ちました。
また、建築年数別のデータによると、1981年以降の新耐震基準で建設された鉄筋コンクリート造の建物については、倒壊・崩壊被害がゼロとの報告もあります。
これは、2000年にさらに建築基準法改正における耐震基準の厳格化が大きな理由であるといえるでしょう。
この経験から、最新の耐震基準で建てられた鉄筋コンクリート造の建物は、地震に対して高い耐久性を持っていることがわかります。
参照:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書
鉄筋コンクリート造の建物を新築する際の注意点
鉄筋コンクリート造の建物は耐震に優れている一方で、注意すべき点もあります。
ここでは、鉄筋コンクリート造の建物を新築する際の3つの注意点を解説します。
【注意点1】地盤改良工事が必要になる
鉄筋コンクリート造の建物はコンクリートと鉄筋を使用するため、建物自体が非常に重くなるのが特徴です。
そのため、軟弱な地盤では沈下や傾斜のリスクがあります。
鉄筋コンクリート造の建物を支えるには、地盤が十分に強固であることが必須となるので、地盤改良工事を実施することが重要です。
- 埋立地・川沿い・海沿い:地盤が緩く、沈下しやすい
- 粘土質の土地:水分を多く含み、建物を支える力が弱い
- 砂質地盤:地震時に液状化のリスクがある
鉄筋コンクリート造の建物を建設する際は、事前の地盤調査をして必要に応じた地盤改良を計画することが重要です。
【注意点2】工期が長くなる
鉄筋コンクリート造の建物を建築する際は、鉄筋の組み立て・型枠の設置・コンクリートの打設といった複数の工程が必要になります。
また、鉄筋コンクリート造の建築は、コンクリートの養生期間などが必要となり、木造や鉄骨造などほかの構造に比べて工期が長くなる傾向にあります。
- 夏場(高温時):3週間
- 冬場(低温時):4週間以上
特に冬場は気温が低いためコンクリートの硬化が遅くなり、工期がさらに長引くこともあります。
そのほかにも、地盤改良や基礎工事が必要な場合や施工管理や検査の工程が多いなど、工期が長くなる要素が多く見られます。
そのため、計画段階で余裕を持ったスケジュール組みが欠かせません。
なお、天候の影響を受けやすいため、季節や天候も考慮した工期設定が求められます。
【注意点3】施工費用が高くなりやすい
鉄筋コンクリート造の建物には、コンクリート・鉄筋・型枠材といった高価な材料が必要になります。
特に、コンクリートと鉄筋は市場価格の変動が大きく、原材料費の高騰により工事費用の上昇も容易に考えられるでしょう。
さらに、地盤が弱い場合は杭打ちや地盤改良工事が発生し、施工費が高くなる傾向も見られます。
工事の種類 | 費用相場 |
---|---|
表層改良工事 | 100万~300万円 |
柱状改良工事 | 300万~600万円 |
杭基礎工事 | 500万円以上 |
ほかにも、施工管理や検査の費用がかかり、設備工事が複雑になりやすいため施工費が高くなることもあるでしょう。
鉄筋コンクリート造の建設の際は、事前にコストを把握し、予算計画をしっかり立てることが重要です。
鉄筋コンクリートの建物を耐震補強する方法
一般的に、鉄筋コンクリート造の建物は地震に強いと言われていますが、ポイントを押さえることで、さらに住宅の耐震性を高められます。
ここでは、鉄筋コンクリート造の建物における耐震性を高める方法について解説します。
【方法1】耐震壁を増設する
耐震壁とは、地震による横方向の揺れを効果的に吸収し、建物の倒壊を防ぐために設置される壁のことをいいます。
一般的に、鉄筋コンクリート造の建物にはすでに耐震壁が組み込まれているケースが多く見られます。
しかし、築年数が古い建物や耐震性が不足している建物では、追加の補強が必要になる場合もあるでしょう。
そのため、耐震壁の種類(鉄筋コンクリート造の耐震壁・ブレース付き耐震壁・パネル型耐震壁)によって、内壁・外壁・既存壁補強のどれが最適かは、建物の構造や補強の目的によって異なります。
鉄筋コンクリート造 の耐震壁 | ブレース付き耐震壁 (筋交い補強) | パネル型耐震壁 (プレキャスト耐震壁) | |
---|---|---|---|
内壁補強 | 室内狭くなる | 耐震性能向上 | 追加施工可能 |
外壁補強 | 軽量で設置可能 | デザインに影響 | 適用は難しい |
既存壁補強 | 設置可能 | 施工性が高い | 適合が必要 |
建物の構造や耐震診断の結果に応じて、適切な補強方法を選択することが重要です。
【方法2】柱を補強する
柱補強の目的は地震の際に柱が持つべき耐力を向上させ、建物全体の耐震性を高めることです。
鉄筋コンクリート造の建物の柱を補強する方法は、以下のとおりです。
補強方法 | 概要 |
---|---|
ジャケット工法 | 既存の柱に鉄筋コンクリートを巻きつけ、柱の断面積を増加させることで耐震性を向上させる方法 |
鋼材による補強 | 柱に鋼材(鋼板や鋼筋)を巻きつけて補強し、強度と耐震性を高める方法 |
FRPシート補強 | 軽量で高強度なFRP(繊維強化プラスチック)シートを柱に巻きつける方法 |
カーボンファイバー補強 | 非常に強いカーボンファイバーシートを柱に巻きつけ、強度を向上させる方法 |
既存の柱に対してジャケット工法や鋼材、FRPシートなどを利用することで、柱の強度を増し、地震時の安全性を向上させることが可能です。
補強方法は、建物の設計や補強目的に応じて最適なものを選択しましょう。
【方法3】基礎を補強する
基礎の補強は地震時における建物の揺れに対する抵抗力を強化し、倒壊リスクを減少させます。
鉄筋コンクリート造の建物における基礎の補強方法は、以下のとおりです。
補強方法 | 概要 |
---|---|
コンクリートジャケット法 | 既存の基礎の周囲に鉄筋コンクリートを追加し、基礎の断面積を増加させる方法 |
鋼板補強法 | 基礎に鋼板を追加して強度を補強する方法 |
ジャッキアップ法 | 基礎をジャッキで持ち上げ、追加のコンクリート層や土台を設けて補強 |
鋼筋・FRPシート補強 | 基礎に鋼筋やFRPシートを巻きつけ、耐震性を向上させる方法 |
地盤改良併用補強 | 基礎補強と地盤改良を同時に行い、耐震性を高める方法 |
特に基礎部分は建物を支える重要な部分であり、補強することで構造全体の安定性が高まるでしょう。
なお、基礎補強で耐震性を高めることで、地震による大規模な修繕や建物の再建費用を抑えられます。
【Q&A】鉄筋コンクリートの建物における耐震性に関するよくある質問
- 鉄筋コンクリート造の建物における耐震性は築年数によって異なる?
-
鉄筋コンクリート造の建物は地震に強い建物ですが、築年数が経つとともに耐久性は低下します。
建物の築年数 耐震性の目安 築30年 ・旧耐震基準が適用
・震度6以上の地震で倒壊するリスクは高くなる築40年 ・旧耐震基準と新耐震基準のちょうど境目
・どちらの基準で建築されているかによって耐震性は大きく異なる築50年 ・1990年以降に建設されているため新耐震基準が適用
建物の耐震性は高め - 鉄筋コンクリートの建物で実施される耐震診断とは?
-
鉄筋コンクリート造の建物で実施される耐震診断は、建物の耐震性を評価し、地震による倒壊や損傷のリスクを減らすための診断を指します。耐震診断は、必要に応じて補強計画を立てる指標にもなり得ます。
IS値
(構造耐震指標)倒壊・崩壊の危険性 0.6以上 危険性は低い 0.3以上0.6未満 場合によっては危険性がある 0.3未満 危険性が高い - 同じ耐震等級なら建物の構造は関係ない?
-
耐震等級の評価方法はすべての構造で共通であるため、同じ耐震等級であれば構造による耐震性能の差はありません。なお、耐震等級とは地震に対する建物の強さ(耐震性)を表す指標のことを指します。
耐震等級 耐震性の目安 1 震度6強程度の地震において倒壊や崩壊を防ぐ 2 震度6強~7の地震に対しても安全性が高い 3 震度7の地震に対しても倒壊や崩壊を防ぐ ただし、その評価方法は、詳細な計算(構造計算)と簡易な計算(仕様規定)の2通りあります。どの評価方法で計算したかによって、建物の耐震等級3の精度に違いが生じるため、注意が必要です。
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