アスベスト屋根の解体と処分にかかる費用
アスベストを含むスレート屋根の撤去・運搬・処分費用は、1㎡あたり3,000円~8,000円が相場です。屋根面積が50㎡の場合は15万~40万円、100㎡の場合は30万~80万円が目安になります。

| 屋根面積 | 撤去・運搬・処分費用の相場 |
|---|---|
| 50㎡ | 15万~40万円 |
| 75㎡ | 22.5万~60万円 |
| 100㎡ | 30万~80万円 |
住宅の延床面積が同じでも、階数や屋根の形状・勾配によって屋根面積は異なるため、建物の坪数だけでは正確な費用を算出できません。なお、この費用に足場代や事前調査・分析費、新しい屋根材の施工費は含まれていません。見積もりを比較するときは、アスベスト処理の追加費用だけなのか、撤去・運搬・処分まで含む総額なのかを確認しましょう。
自治体によってはアスベストの調査や除去に補助金を設けています。ただし、対象が吹付けアスベスト等に限られ、スレート屋根の撤去が対象外となる場合があるため、工事業者と契約する前に、建物所在地の自治体へ確認しましょう。

アスベスト屋根の解体・処分費用が高額になる理由
石綿含有屋根材の撤去では、事前調査の結果に基づいて作業計画を立てます。屋根材は原形のまま取り外すことを原則とし、湿潤化や呼吸用保護具・保護衣の使用など、飛散・ばく露防止対策を講じます。撤去した屋根材は「石綿含有産業廃棄物」として他の廃棄物と分別します。また、荷重で破断しないよう整然と積み重ね、シート掛けや梱包などで飛散を防いだうえで、許可を持つ収集運搬業者・処分業者へ委託します。

なお、耐水性の袋による二重梱包は、吹付け石綿などの「廃石綿等」や粉状・汚泥状の石綿含有仕上塗材では必要ですが、原形を保った石綿含有屋根材に一律で求められる方法ではありません。こうした調査・養生・保護・分別処理が必要なため、通常の屋根材より処理の手間と費用がかかります。
※ 参考:環境省「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」
アスベスト屋根の見分け方

建てた年を確認する
石綿含有製品は段階的に規制されてきたため、建築年だけでなく建物の着工日を確認しましょう。設計図書などで2006年9月1日以降に着工したことを確認できれば、法令上は石綿含有建材が使用されていないと判断できます。2006年8月31日以前に着工した住宅では、竣工年だけで石綿の有無を断定できません。設計図書や商品名・製品番号を確認し、不明な場合は専門業者へ調査を依頼しましょう。
※ 参考:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」
屋根材を確認する
アスベストが使われた可能性のある屋根材には、住宅屋根用化粧スレートやスレート波板、セメント系の屋根材、ルーフィングなどがあります。ただし、材種や見た目だけで石綿の有無を断定することはできません。設計図書や屋根材の刻印から商品名・型番・メーカー・製造時期を確認し、国土交通省・経済産業省の「石綿(アスベスト)含有建材データベース」やメーカーの公表情報と照合します。それでも判定できない場合は、資格を持つ事前調査者に依頼し、分析するか石綿含有とみなして飛散防止対策を行います。
※ 参考1:国土交通省・経済産業省「石綿(アスベスト)含有建材データベース」
※ 参考2:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続き」
屋根の状態を確認する
ひび、割れ、欠けの有無だけで、屋根材にアスベストが含まれているかを判定することはできません。劣化の現れ方は、商品や施工状況、立地環境、メンテナンス履歴などによって異なります。また、状態を確かめるために自分で屋根へ上るのは危険です。設計図書や商品名・型番、製造時期を確認し、判定できない場合は資格を持つ事前調査者へ依頼しましょう。
※ 参考:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続き」
アスベストを含むスレート屋根

コロニアル(スレート材)
コロニアルは、旧クボタが1961年に発売した「カラーベスト」の屋根材です。クボタと旧松下電工の住宅外装建材事業は2003年に統合され、2010年にケイミュー株式会社へ社名変更しました。石綿含有製品は商品ごとに製造時期が異なり、「コロニアル」は1961~1994年、「ニューコロニアル」は1979~2001年に製造され、いずれもアスベストを含みます。現在、ケイミューはアスベストを使用していない「コロニアルグラッサ」や「コロニアルクァッド」などを販売しています。既存屋根は、商品名と製造時期を確認して判断しましょう。
アーバニー(スレート材)
アーバニーも、旧クボタが販売していたスレート屋根のひとつです。石綿含有品の「アーバニー」は1982~1994年に製造され、含有率は1982~1989年が10~15%、1990~1994年が5~10%でした。後継の「ニューアーバニー」は1994年~2001年11月に製造され、石綿含有率は0.1~1%です。一方、「アーバニーグラッサ」は2001年12月~2005年11月に製造された石綿規制の対象外の商品です。2026年9月時点で、ケイミューの現行屋根材ラインアップにアーバニーシリーズは掲載されていません。
セキスイかわらU(セメント瓦)
セキスイかわらUは、積水化学工業が生産・販売していた住宅用屋根材です。セキスイかわらUとCITYのうち1975~1990年に製造された製品には、白石綿10~15%と茶石綿0.7%が使用されています。ただし、割れや欠けなどの劣化状態だけでは、石綿の有無を判定できません。製造年が分からない場合は、設計図書や商品情報を確認し、判定できなければ資格を持つ事前調査者へ相談しましょう。
※ 参考:積水化学工業「当社グループのアスベスト(石綿)関連の状況について」
アスベスト屋根を放置した場合の健康被害
アスベストは、軽く、耐熱性・耐火性・防音性・絶縁性に優れていたことから、かつて「夢の素材」と呼ばれ、さまざまな建材に使用されていました。しかし、アスベストの細い繊維を吸い込むと、一部が肺の組織に長くとどまり、石綿肺や肺がん、中皮腫などを引き起こすことがあります。住宅屋根用化粧スレートなどは、アスベストがセメントに固定された「石綿含有成形板」で、一般にレベル3建材と呼ばれます。通常の使用状態ですぐに飛散する可能性は低いものの、切断、穴あけ、破砕、著しい劣化などによって粉じんが発生するおそれがあります。
なお、レベル1~3は主に除去作業時の発じん性に応じた区分であり、健康被害の大きさを直接表す等級ではありません。石綿含有屋根材と判明しても、むやみに触ったり自分で補修したりせず、劣化状況を専門業者に確認してもらいましょう。
※ 参考1:環境再生保全機構「アスベストによる健康障害のメカニズム」
※ 参考2:環境省「大気環境中へのアスベスト飛散防止対策について」
アスベスト屋根の工法別リフォーム方法

カバー工法
メリット
- 費用を抑えやすい
- 工期を短縮しやすい
デメリット
- アスベスト屋根が残る
- 将来の撤去費用が高くなりやすい
カバー工法は、既存の屋根を覆うように新しい屋根材を重ねる工法です。屋根材や下地の状態が施工に適していることが条件ですが、既存屋根材を撤去しないため、葺き替えより工期を短縮しやすいのがメリットです。一方、石綿含有屋根材は残るため、将来撤去する際は重ねた屋根材も取り外さなければなりません。また、カバー工法でも既存屋根への穴あけなどを伴う場合があるため、着工前の石綿事前調査と、調査結果に応じた飛散防止対策が必要です。
※ 参考:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続き」
葺き替え
メリット
- アスベスト屋根を撤去できる
- カバー工法より屋根を軽量化できる
デメリット
- 工期が長い
- 費用が高い
葺き替えは、既存屋根材を取り除いて新しい屋根材を取り付けるため、石綿含有屋根材を撤去できる工法です。石綿含有成形板は通常の使用状態では飛散性が低いものの、撤去時に切断や破砕をすると粉じんが発生するおそれがあります。そのため、事前調査に加え、屋根材を原形のまま取り外すことを原則とし、湿潤化や適切な保護具の使用などの飛散・ばく露防止対策が必要です。葺き替えを依頼するときは、石綿含有建材の取り扱いに必要な体制を整えた業者を選びましょう。
※ 参考:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「改正石綿則のポイント」
塗装
メリット
- 費用を抑えやすい
- 工期を短縮しやすい
デメリット
- アスベスト屋根が残る
- 下地処理でアスベストが飛散するおそれがある
塗装では既存の石綿含有屋根材が残るため、アスベストの撤去にはなりません。また、塗装工事も着工前の石綿事前調査が必要です。下地処理の方法は屋根材の状態や塗料の仕様によって異なり、高圧洗浄機を使用すると石綿含有建材の表面が剥がれるおそれがあるため、周囲への飛散防止を含む適切な対策が欠かせません。塗装が適しているかは、屋根材と下地の劣化状況、今後の改修計画を踏まえ、石綿に関する知識を持つ専門業者に判断してもらいましょう。
※ 参考:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続き」
アスベスト作業は資格が必要?
アスベストを含む可能性がある屋根の解体・改修工事では、施工業者が着工前に事前調査を行う必要があります。2023年10月1日以降に着工する建築物工事の事前調査は、一般建築物石綿含有建材調査者や一戸建て等石綿含有建材調査者など、法令で認められた者が行います。石綿含有建材の除去作業では、事業者が石綿作業主任者技能講習を修了した者から作業主任者を選任し、作業者には石綿作業従事者特別教育を受けさせなければなりません。
さらに、建築物の解体部分の床面積が80㎡以上、または改修工事の請負金額が税込100万円以上の場合は、元請業者などが事前調査結果を行政へ報告する必要があります。報告基準未満でも事前調査は必要です。依頼時は、調査者の資格、作業主任者の選任、作業者の特別教育、事前調査結果の説明・掲示まで確認しましょう。

※ 参考1:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「小規模工事等の着工前に必要な手続き」
※ 参考2:環境省「石綿事前調査結果の報告について」
アスベストの相談窓口
屋根材のアスベスト含有や工事方法、補助制度については、建物所在地の自治体の建築・環境担当窓口へ相談しましょう。アスベストを吸い込んだ可能性があり健康面が心配な場合は、近隣の保健所などの健康相談窓口や専門医療機関へ相談してください。
※ 参考1:厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」
※ 参考2:環境省「私は大丈夫?」



