目次
建物の外から耐震補強工事はできる
「家に住んだまま耐震補強工事はできる?」と疑問に思う方もいるでしょう。
結論から言うと、住んだままでの耐震補強工事はできます。
住んだままでも家の外から耐震補強工事を実施すれば、耐震性を補強できます。
家の一部分を工事したり外から補強したりと、部分的なリフォームであれば住みながらでも施工可能です。
しかし、家全体の構造や内装までも変える大がかりな改修リフォームは、住みながらは施工できないため、仮住まいを用意しなければなりません。
あくまで住宅の外から耐震補強工事を実施すれば、住みながらでも家の耐震性を補強できます。
木造住宅に外付けでできる耐震補強工事の種類
木造住宅に金物やフレームを外付けすれば、外から耐震補強ができます。
外付けでできる耐震補強工事の種類は、大きく分類すると「外壁を撤去する」ケースと「外壁を撤去しない」ケースの2種類です。
木造住宅を外から耐震補強工事しようと検討している方は、外壁を撤去する方法としない方法の双方を確認しておきましょう。
外壁を撤去する外付け耐震補強工事
外壁を撤去する外付け耐震補強工事の種類は、以下のとおりです。
- 筋交い金物
- ホールダウン金物
外壁を撤去する工事は規模が大がかりになりますが、基礎部分から耐震性を補強できます。
そのため、家全体の耐震性を補強できる工事になるため、地震への備えとして効果的です。
各工事内容を解説するので、外付け耐震補強工事を検討している方は、ぜひ参考にしましょう。
筋交い金物
筋交い金物とは、柱と柱の間に入れることで耐震性を強化する部材です。
筋交いの上下と両端を接合金物で固定した金物で、柱と柱の間に設置することで耐力壁を構築します。
具体的な工法は、部材を1本だけ入れる「片筋交い」と、2本の筋交いを交差させて×印にする「たすき掛け」の2種類です。
片筋交いよりたすき掛けで施工した耐力壁は、強度が2倍になるため、より耐震性を補強できます。
筋交い金物を設置する際には、土台や梁と接合させて固定するために、外壁や床・天井の一部を解体しなければなりません。
なお建築基準法によって筋交いの設置が義務付けられており、厚みや幅の基準が定められています。
ホールダウン金物
ホールダウン金物とは、地震によって柱が土台から抜けないように固定する金物です。
阪神淡路大震災で倒壊・半壊した建物の多くが、ホールダウン金物を使用しておらず、甚大なる被害を受けました。
対してホールダウン金物の設置義務が設けられていた3階建て以上の建物は、ほとんど倒壊被害がなく、耐震性の高さが証明されました。
2000年も施行された「建設省告示1460号」では、ホールダウン金物の設置が義務付けらています。
参照元:○木造の継手及び仕口の構造方法を定める件(国土交通省)
なおホールダウン金物は、柱を梁や土台と固定する必要があるため、既存住宅に施工する際には外壁を一度撤去しなければなりません。
外壁を撤去せず外側から行う耐震補強工事
外壁を撤去せず外側から行う耐震補強工事は、短期間での耐震補強工事が可能です。
外壁を撤去せずに耐震補強を実現したい人は、各工法の詳細を確認しておきましょう。
【工法1】ウッドピタ
ウッドピタとは、名古屋大学と矢作建設工業が共同開発した木造住宅の耐震補強工法です。
家の外からウッドピタを外付けするだけなので、住んだまま耐震性を補強できます。
- ウッドピタブレース
-
柱・梁・土台にアンカーを取り付け、接合プレートで連結する工法。
さらに鉄筋ブレースを取り付けることで、耐震性を強化します。
- ウッドピタフレーム
-
新しく設置した基礎の上に鉄骨フレーム材を組み、既存の基礎梁に接合する工法。
建物をしっかりと固定することで、耐震性を強化。
- ウッドピタ水平ブレース
-
天井全体にブレース材を設置し、水平構面の耐力を向上させる工法。
部屋の面積が広い木造住宅に有効的です。
【工法2】耐震パネル
耐震パネルは、断熱材や合板が合わさったパネルです。
室内外から設置でき、耐震性だけでなく断熱性を強化できます。
耐震パネルは、筋交いと気密性を確保する役割を兼ね備えており、耐震性を補強しながら外気温の影響を受けにくい快適な生活を実現します。
また耐震パネルを家の外から設置すれば、筋交い金物のように外壁を撤去する必要がありません。
【工法3】外付けフレーム
外付けフレームとは、柱と梁のみで構成された鉄骨フレームです。
家の外から外付けフレームを取り付けることで、外壁の耐久性を強化できます。
外付けフレームは、家の外から設置するため外壁を撤去せずに住んだまま施工できます。
なお、外付けフレームの施工方法は、以下の2種類です。
- フレーム型(鉄骨ラーメン架構や鉄骨間柱付きラーメン架構と呼ばれるの工法)
- ブレース型(筋交いのように交差して設置する鉄骨ブレース架構と呼ばれる工法)
耐震補強工事を行うメリット
ここでは、耐震補強工事を行うメリットについて解説します。
それぞれのメリットを確認して、耐震補強工事を実施するべきか検討しましょう。
【メリット1】災害時の被害を抑制できる
耐震補強工事を実施すれば、災害時の被害を抑制できます。
耐震補強工事を実施することで、より強い地震にも耐えられる耐震性を建物に付与できます。
実際に2024年1月に発生した能登半島地震では、耐震基準を満たさない木造家屋が多数倒壊しました。
旧耐震基準で建てられた木造住宅が多数倒壊した一方で、比較的新しい木造住宅は新耐震基準を満たしていたため、軽微な被害に止まりました。
能登半島では、耐震補強の実施率が低く建物や施設の耐震性を確保できなかったため、多大なる被害を受けています。
災害時の被害を軽減するために、耐震補強工事による耐震性の確保が必要です。
【メリット2】断熱性も高まり住みやすくなる
耐震補強工事を実施するメリットは、耐震性だけでなく断熱性も高まることです。
耐震補強工事の際に、家を基礎と柱だけの状態にしてリフォームを実施する場合は、床や壁・を取り換えられます。
その際に、より断熱性の高い素材を採用することで、自宅の断熱性を向上できます。
断熱性が高い家は、夏の暑さや冬の寒さを感じにくく、最小限の冷暖房利用で快適な室温を維持することが可能です。
そのため耐震補強工事によって耐震性と断熱性を向上させれば、安全性を確保しながら年中快適な室温で生活できます。
【メリット3】資産価値が高まる
一般的に、耐震性が高い建物ほど資産価値が高くなる傾向があります。
築年数が古い建物や耐震性が低い建物は資産価値が低いため、売却益を得にくい特徴があります。
木造住宅に耐震補強工事を実施することで、家の資産価値を高められるため、売却時の価格を向上できます。
将来の売却を見据えた上で、耐震補強工事を実施するべきか検討してください。
耐震補強工事を行うデメリット
耐震補強工事を実施するべきか悩んでいる人は、メリットだけでなくデメリットも確認しておく必要があります。
なぜならデメリットを知らずに耐震補強工事を実施した場合、後ほど後悔する可能性があるからです。
各デメリットを確認した上で、耐震補強工事を実施するべきか検討しましょう。
【デメリット1】リフォーム費用が高い
耐震補強工事のデメリットは、リフォーム費用が高いことです。
一般的な改修工事に比べて、耐震補強工事は建物の基礎部分や柱・梁などをリフォームする必要があるため、大がかりな工事が求められます。
耐震補強工事は、高額なリフォーム費用が発生するため、費用相場を確認してからリフォームを検討する必要があります。
【デメリット2】工期が長い
耐震補強工事は大がかりなリフォームになりやすいため、工期が長いデメリットがあります。
外壁を撤去せずに外付けで耐震補強を実施する場合は、1週間ほどと短い工期でリフォームできます。
しかし外壁を撤去したり基礎部分をリフォームしたりする場合は、3ヵ月~半年ほどの長い工期が必要です。
基礎部分をリフォームする場合は、住んだまま耐震補強を行うことが難しいため、仮住まいや引っ越し費用を用意しなければなりません。
住みながら耐震補強工事を行う際の注意点
家の外から耐震補強を行う場合は、住みながらでもリフォームが可能です。
しかし、耐震補強工事を行う際には、いくつかの注意点を遵守しましょう。
【注意点1】耐震補強工事の内容を確認しておく
耐震補強工事を実施する際には、工事内容を確認しておくことが大切です。
工事内容を把握しないままリフォームが始まると、日常生活で不便を感じる可能性があります。
工事内容や流れを確認していない場合、工事期間中の日常生活に支障が出てしまったり、あらかじめ荷物の運び出しができなかったりと、トラブルに発展します。
「どの程度の荷物を運び出す必要があるか」「暮らしがどのように変化するか」など、耐震補強工事に伴う日常生活の変化に対応するために、工事内容と流れを確認しておきましょう。
【注意点2】荷物や家財の移動先を確保しておく
耐震補強工事を行う箇所にある荷物や家財は、移動させなければなりません。
荷物がある状態ではリフォームを行えないため、事前に対象箇所の荷物や家財の移動先を確保する必要があります。
荷物の量によっては、生活スペースを確保できない可能性があるため、仮住まいの用意を検討しましょう。
【注意点3】私生活への影響を考慮しておく
耐震補強工事を行う際には、私生活への影響を考慮する必要があります。
工事内容によっては、騒音やホコリなどが発生するため、私生活に影響が生じます。
乳幼児やペットがいる家庭では、騒音やホコリによって私生活が困難になる可能性が考えられます。
そのため、必要に応じて仮住まいを検討したり、ペットの預け先を確保したりしなければなりません。
また自室が使えなくなったり、トイレや入浴に支障を来したりと、いつもどおりの私生活が送れない場合はストレスを感じてしまいます。
工事内容や流れを確認した上で、私生活への影響を考慮して「住んだままリフォームできるか」を慎重に検討しましょう。
耐震補強工事は意味がない?
「耐震補強工事は意味がない」と言われることがあります。
1981年6月1日に施行された新耐震基準で建てられた建物は、震度6強~7程度の強い地震でも倒壊しないため、耐震補強が不要だと考えている方もいます。
新耐震基準で建てられた家は、耐震等級1を担保しており、並大抵の地震では倒壊しません。
しかし築年数が経過するごとに基礎部分が劣化し、耐震性が低下するため新耐震基準で建てられた住宅でも、地震によって半壊・倒壊する可能性があります。
築年数が経過したりより強い耐震性を求める場合は、耐震補強が必要です。
外壁耐震補強工事における費用相場の目安
外壁耐震補強工事における費用相場は、50万~170万円が目安です。
耐震補強の内容 | 費用相場 |
---|---|
外壁を撤去して耐力壁の設置および筋交いの追加 | 170万円 (延床面積100平方メートル) |
外壁を撤去せずに耐力壁や金具を追加 | 50万円 (延床面積100平方メートル) |
基礎部分のリフォーム | 150~500万円 |
外壁耐震補強工事にかかる費用を抑える方法
リフォームの際は、できるだけ工事費用を予算内に抑えたいものです。
外壁耐震補強工事を検討する際も同様に、工事費用を予算内に抑えるために以下の方法を実践しましょう。
【方法1】予算を重視してリフォームの優先順位を決める
外壁耐震補強工事を行う際には、予算を重視してリフォームの優先順位を決めることが大切です。
地震対策としてすべての部分をリフォームすると、高額な工事費用が発生します。
そのため「家の中でどの部分が危険なのか」「どこを重点的に補強するべきか」を考え、リフォームの優先順位を決めなければなりません。
優先順位を決めておけば、まずリフォームするべき箇所を明確化できます。
予算で実現できる範囲のリフォームを行って、資金に余裕ができてから優先順位の低い箇所をリフォームしましょう。
【方法2】補助金制度・減税制度を利用する
外壁耐震補強工事の費用を抑えたい場合は、補助金制度・減税制度を利用しましょう。
自治体が実施している補助金制度を利用すれば、工事費用の一部を助成してもらえます。
さらに国が設けた減税制度を利用すれば、所得税や固定資産税を減税できるため、リフォーム後の出費を抑えられます。
【方法3】複数の業者から相見積もりをとる
複数の業者から相見積もりをとることで、耐震補強工事の費用を安く抑えられます。
1社のみの見積もりで判断した場合、提示された価格が適正かを判断できません。
一方で、複数の業者から相見積もりをとった場合は、工事費用が安い業者を見極められます。
見積もり価格と合わせて業者の実績や評判、担当者の対応を比較検討して、信頼できる業者を選びましょう。
耐震補強工事で使用できる補助金や減税制度
耐震補強工事で補助金や減税制度を利用すれば、耐震補強による出費を軽減できます。
各自治体の補助金制度と所得税・固定資産税の減税措置を確認して、耐震補強工事の際に利用しましょう。
各自治体の補助金制度例
各自治体によって、設けられている補助金制度が異なるため、対象の自治体ホームページを確認することが大切です。
- 対象:耐震補強が必要な木造住宅
- 助成金額:耐震改修費用の半額
- 限度額:高齢者等以外の木造住宅:100万円/高齢者等の木造住宅:150万円
- 対象:耐震補強が必要な2000年5月31日以前に建てられた居住用住宅
- 助成金額:耐震改修費用の半額
- 限度額:100万円(1戸あたり)
- 対象:耐震補強が必要な木造住宅
- 助成金額:耐震改修費用の半額
- 限度額:50万円(1戸あたり)
- 対象:耐震補強が必要な1981年5月31日以前に建てられた木造住宅
- 助成金額:耐震改修費用の8割
- 限度額:120万円(1戸あたり)
所得税の減税措置
耐震補強工事で利用できる所得税の減税措置として、以下の2種類があります。
- 控除期間:1年
- 工事限度額:250万円
- 控除率:10%
- 控除限度額:25万円(条件によっては、最大62.5万円)
- 控除期間:10年
- リフォーム費用相当分の年末ローン残高の0.7%を控除
固定資産税の減税措置
耐震補強工事の費用が50万円を超えた場合、固定資産税の減税措置を利用できます。
家屋の固定資産税が1年間、2分の1に減税されるため、リフォーム後の出費を軽減できます。
また固定資産税の減税措置を受けるには、耐震補強工事が完工してから3ヵ月以内に管轄の自治体に届出なければなりません。
他にも自治体が独自に固定資産税の減税措置を設けている可能性があるため、管轄の自治体に確認しておきましょう。
耐震リフォームの業者選びで後悔しないために
必ず相見積もりを複数取って比較しましょう!
なぜならリフォームの費用・工事方法は、業者によって大きく異なるからです。
とはいえ「信頼できる業者が分からない」「何度も同じ説明をするのが面倒」と踏み出せない方もいらっしゃると思います。
そのような方こそハピすむの一括見積もり比較を活用しましょう!
大手ハウスメーカーから地場の工務店まで、審査を通過した1000社以上の中から、まとめて見積もりを依頼できます。
また、ハピすむでリフォームされた方には最大10万円分の「ハピすむ補助金」もご用意しています。
詳細はこちら>>>ハピすむ補助金プレゼントキャンペーンの流れ