2024年12月04日更新

監修記事

ALC外壁の種類と特徴!後悔しないためのメリット・デメリットとは

ALCとは、気泡を含んだ軽量なコンクリートの外壁材です。耐震性や遮音性、断熱性に優れている特徴があります。本記事では、ALC外壁を戸建て住宅やマンションに使用するメリット・デメリットのほか、メンテナンスの注意点も解説します。

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ALC外壁とは

ALCとは、英語で「高温高圧の蒸気で養生した軽量気泡コンクリート」を意味する「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字をとったものです。外壁に使用する際は、ALCをパネル状に成型したものを張り付けます。

ALCの主成分
  • 珪石
  • セメント
  • 生石灰
  • アルミ粉末

ALCの内部には気泡が大量に入っており、コンクリートの一種でありながら水に浮くほど軽いのが特徴です。

耐久性と耐震性に優れているため、戸建て住宅の外壁だけでなく、アパートや商業施設などの建築物にも使用されています。

ALCの種類

ALCパネルは主に、薄型と厚型の2種類に分けられます。

ALCパネルの種類厚さ主な用途
薄型35mm~75mm未満戸建て住宅(木造、鉄骨造)
厚型75mm以上耐火建築物(鉄骨造、鉄筋コンクリート造)

一般的に、薄型は戸建て住宅に使用され、厚型はマンションや工場などに使用されることが多いでしょう。

なお、表面加工の有無や使用箇所によっても、種類を分けることができます。

その他の種類
  • 平パネル:表面加工なし
  • 意匠パネル:表面加工あり(模様や柄)
  • 一般パネル:平らな部分に使用
  • コーナーパネル:建物の角に使用

ALCとコンクリートの違い

ALCは工場でパネルを成型しますが、コンクリートは現場で型枠に流し込んで成型します。

ALC外壁は、現場で外壁の下地金物にパネルを張り、パネル同士の隙間をシーリング材で打設する施工方法です。また、ALCは内部の約8割を気泡が占めていることから、コンクリートと比較して軽量かつ、断熱性にも優れています。

一方、代表的なコンクリート外壁の「打ちっぱなしコンクリート」は、RC(鉄筋コンクリート造)などの建物において、コンクリートの躯体をそのまま見せる仕上げ方法です。外壁の耐水性を高めるために表面に撥水剤を塗布します。

ALC外壁の見分け方

ALCとコンクリートの見分け方は、シーリング材の目地があるかどうかです。ALCパネルの隙間を、弾力性のあるシーリング材で埋めています。見分ける際には、目地の素材に注目してみましょう。

さらに、見た目が似ている外壁材に「サイディング」があります。サイディングはバリエーションが豊富で、レンガ調や木目調、コンクリート調のものもあるのです。

ALCとサイディングは、どちらも目地にシーリング材が充填されています。見分け方として、サイディングは一般的に縦幅3030mmなので、約3mの高さに水平の目地があるでしょう。また、ALCは横幅300mm〜600mmが多く、その間隔で目地を確認できるはずです。

外壁材の見分け方
  • コンクリートはシーリングの目地がない
  • サイディングは高さ約3mの位置に水平の目地がある
  • ALCは横幅300mm〜600mmごとに目地がある

ALC外壁のメリット

ALCは非常に機能性が高い外壁材です。ここでは、具体的なメリットをご紹介します。

メリット1.強度があり耐久性に優れる

ALCには鉄筋などの補強材を用いているため、引張り強度や曲げ強度に優れています。

また、ALCの寿命は50〜60年とされており、高耐久の外壁材です。

定期的なメンテナンスをきちんと行えば、お子様やお孫様の代まで引き継ぐことができます。

メリット2.断熱性が高い

ALCはパネル全体の気泡が空気層をつくるため、熱伝導率が低く断熱性が高い素材です。

断熱性能が優れている住まいは、外気温が室内に伝わりづらいため、暖房・冷房が効きやすくなります。

ALC外壁と断熱材を併用することで、夏は涼しく冬は暖かい住宅環境を維持しやすくなるでしょう。

メリット3.遮音性が高い

ALCは駅ホームの防音壁にも採用されるほど、遮音性に優れた素材です。壁表面に当たった音を反射しやすく、ALC内部に含まれる空気層が音を吸収してくれます。

外の音が建物内に伝わりにくくなると同時に、室内の音も漏れにくいのがメリットです。

  • 道路や線路沿い
  • 密集している住宅地
  • ペットの室内飼い
  • 室内での楽器演奏

このような環境に適している外壁材だといえるでしょう。

メリット4.耐火性に優れる

ALCパネルは、過酷な耐火試験をクリアした法定不燃材料で、耐火性に優れています。

ALCは主原料がセメントなどの無機質であるため、燃えにくいのが特徴です。万一の火災でも有害物質や煙がほとんど発生しません。

さらに、ALC内部に含まれる空気層によって熱が伝わりにくくなり、木材への引火や隣地からの延焼リスクを減らすことができます。

メリット5.軽量で地震にも強い

ALCは通常のコンクリートと比べて約1/4の重量しかありません。非常に軽量なので、建物構造への負担が少なく、耐震性にも優れています。

さらに、現在使用されているALC外壁パネルの取り付け構法は、地震時にパネルが躯体に追従することで、変形による建物損傷を小さくすることが可能です。

構法特徴
縦壁ロッキング構法地震時に建物が揺れると、パネルが1枚ごとに微小回転して追従する
横壁アンカー構法地震時に建物が揺れると、上下段のパネルが水平方向へ相互にずれ合い追従する
引用:ALC協会

メリット6.デザインの種類が豊富

ALCパネルは、各メーカーからさまざまな意匠パネルが登場しています。さらに、オリジナルデザインで特有の凹凸のあるパネルを創り出すことも可能です。

動物や植物のモチーフ、会社のロゴをデザインしてもいいかもしれません。

また、現場塗装によって好みの色にカラーリングすることもできます。

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ALC外壁のデメリット

ALCはメリットの多い外壁材ですが、デメリットになる部分もあります。外壁選びで失敗しないためにも、注意点を確認しておきましょう。

デメリット1.つなぎ目(目地)が多い

ALCは、モルタルやコンクリートとは異なり、パネルを建物に張り付けていく外壁材です。なおかつ、同じくパネル状のサイディングよりも小さく設計されているので、目地の量が多くなります。

ALC外壁の目地を埋めるシーリング材は、経年劣化により隙間が生じると、雨漏りなどのリスクが高まってしまうのです。

一般的なシーリング材の耐用年数は5年〜15年ほどなので、その都度メンテナンスが必要になります。

デメリット2.防水性が低い

ALCパネル自体は水を吸収しやすい性質です。雨水が建物内部に染み込むのを防ぐため、塗装などで外壁表面に防水対策を施します。

もしALC内部の気泡に水が侵入してしまうと、膨張やひび割れが生じやすくなり、修復作業が必要になるケースもあるでしょう。

とくに寒冷地などでは、吸水した水が凍って外壁が剥がれ落ちてしまうこともあります。適切にメンテナンスを行うことが重要です。

デメリット3.施工費用が比較的高い

高いシェア率を誇る窯業系サイディングと比較すると、機能性に優れるALCの施工費用は高くなります。

しかし、耐用年数はほかの外壁材と比べてもALCが圧倒的に長いため、長期的にみるとランニングコストは抑えられるでしょう。

外壁材1平方メートルあたりの単価耐用年数
窯業系サイディング3,500円~20〜40年
金属系サイディング4,000円~20〜40年
樹脂系サイディング4,500円〜20〜40年
木質系サイディング6,000円〜15〜40年
モルタル1,500円〜20〜30年
ALC7,000円〜50〜60年
タイル7,000円〜30〜40年

ALC外壁は長持ちする外壁材ですが、初期費用や定期的なメンテナンス費用がかかります。トータルコストを考慮して、比較検討するのがおすすめです。

ALC外壁のメンテナンスに関する注意点

ALC外壁の耐久性を保つには、防水対策として塗装メンテナンスが重要です。

定期的に再塗装して防水性を保つ

外壁塗装は、一般的に10年を目安に塗り替えが推奨されています。使用する塗料の耐用年数などによってメンテナンス時期は前後するため、気になる症状があれば専門業者に相談するようにしましょう。

また、塗装工事を依頼する際、ALC外壁の塗装実績が多い業者を選ぶのもポイントになります。ALC外壁を採用している戸建て住宅はまだ少ないので、依頼する前に実績の有無を確認しておくと安心です。

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外壁の劣化は放置しない

ALCは耐久性に優れる外壁材ですが、劣化症状を放置すると建物寿命が縮んでしまいます。

外壁の劣化症状
  • ひび割れ(クラック)
  • 塗膜の剥がれ
  • シーリングの劣化

これらの症状を確認したら、早めにメンテナンスを依頼しましょう。

ひび割れ(クラック)

ひび割れが進行すると、雨水が入り込んで外壁を傷めてしまいます。なかでも幅0.3mmを超えるひび割れは「構造クラック」と呼ばれており、外壁材そのものが割れている可能性が高いです。構造クラックを見つけたら、早急に補修を依頼しましょう。

塗膜の剥がれ

経年劣化などにより、塗膜が剥がれることがあります。塗膜が剥がれた箇所はALC外壁が剥き出しになっている状態なので、そこから雨水が侵入したり、塗膜の剥がれが広がったりするかもしれません。

シーリングの劣化

ALC外壁の目地を埋めるシーリング(コーキング)は、経年劣化により剥離したりひび割れが生じるため、定期的なメンテナンスが必要です。補修が必要となった場合は、基本的に「増し打ち」か「打ち替え」を行います。

  • 増し打ち:既存のシーリングの上に新しいシーリング材を充填する方法
  • 打ち替え:既存のシーリング材を撤去し新しいシーリング材を打ち直す方法
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ALC外壁パネルを扱う国内メーカー

ALC外壁パネルの国内メーカーは現在3社あり、JIS規格(日本工業規格)の基準を満たしたALCを製造しています。

会社名製品名
旭化成建材ヘーベルパワーボード、ヘーベルライトなど
クリオンクリオンライト、クリオンエースボードなど
ケイミューシポレックスシポレックス、スーパーボードなど
引用:ALC協会

旭化成建材

ALCの中で最もシェア率が高いのが、旭化成建材の「ヘーベル」です。

とくに、旭化成のへーベルハウスに使われるへーベルパワーボードは、1980年の販売開始から40年以上の実績がある人気建材となっています。

ヘーベルパワーボードは木造住宅、ヘーベルライトは商業施設や集合住宅に用いられることが多いでしょう。

クリオン

クリオンは、とくに耐震安全性に優れるALC製品を取り扱うメーカーです。

ALCパネルの取り付けアンカー金具を、あらかじめパネル内部の補強筋(鉄筋)に溶接固定する、「工場埋設アンカーパネル」を安定的に供給しています。

ケイミューシポレックス

シポレックスは、1934年にスウェーデンで生まれ、日本で初めて1962年にケイミューシポレックスが技術導入した製品です。

欧州では既に90年以上、日本においては60年以上の実績があるため、安心して使用できます。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】久田麻里子

2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。

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